★MotoGP2018 なぜヨハン・ザルコは2017年型シャーシを乗りこなせているのか?

マット・オクスレイ氏による、ヨハン・ザルコ選手の考察記事をご紹介します。2017年シーズンはファクトリーライダー達にとっては”目の上のたんこぶ”的な存在であったザルコ選手ですが、2018年は2017年型シャーシというさらなる武器を手に入れたことで今シーズン以上に大暴れし、数勝する姿が期待されます。考えかたによっては現在のファクトリーライダー達よりもヤマハを上手く乗りこなしているザルコ選手を、ヤマハがキープ出来るのか、それとも他のメーカーに奪われてしまうのかというのは気になるポイントでしょう。ロッシ選手の引退か否かで他のメーカーに奪われるという意味ではポル・エスパルガロ選手を思い出しますね。

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カタールで最高峰クラスデビューを飾った際、ヨハン・ザルコは26歳だった。対して、最高峰クラスの驚くべきルーキーであったマルク・マルケス、マーべリック・ビニャーレスは20歳でこのクラスにデビューしている。フランスはスペインほどにモータースポーツに熱い国ではないため、ザルコがレースに真剣に打ち込み始めたのは10代の頃だった。16歳の時にザルコは50ccのスクーターに乗り、150マイルを旅して、現在も彼のメンターであり、マネージャーであるLaurent Fellonの家族と住むために引っ越しをした。ザルコがGPデビューを果たしたのは、ほぼ19歳の時で、マルク・マルケスはその年で既に世界チャンピオンになっていた。

昨シーズン、ザルコはMotoGPで素晴らしいスピードとアグレッシブさを披露。これについて古株のライダー達は、自分の若かりし頃の事は棚に上げて、彼のことを危険だと語った。これは実に滑稽なことであり、まるでキース・リチャーズが自分がコカインを辞めた後に、同じくストーンズのメンバーであるロニー・ウッドがコカインをやりだした事に関して「ヤツはバンドの存在を脅かしている」というようなものだ。

しかしザルコのアグレッシブなライディングに関する能力だけが素晴らしいわけではない。彼はその恐ろしくスムーズなライディングテクニックによってMoto2で2冠を達成しており、彼はそのスムーズなライディングによって最終ラップまでタイヤをセーブすることが出来るという大きなアドバンテージを持っている。

彼は同じテクニックをMotoGPでも披露しているが、ドルナがエレクトロニクスの共通化、ミシュランタイヤの使用を始めた今となっては、これが以前のMotoGPよりも活きるようになっている。現在は、ライダー達はよりトラクション、ホイールスピン、タイヤライフに関して気を使う必要が出ているのだ。

現在のMotoGPのトラクションコントロールは、以前の湯水のように金がかかっていたファクトリー製のものと比較すると洗練されていない。つまり、ライダー達は自分の手首でホイールスピンをコントロールする必要がある。これはファクトリー製のブラックボックスに仕事をさせることに慣れていたライダー達にとっては難しいことだろう。それに加えて、ミシュランのリアタイヤは、ブリジストンのそれと比較すると、バイクを前に進めるグリップが弱い。であるからして、ライダー達は2倍ハードにライディングをする必要がある。あまりにも多いスピンはラップタイムを犠牲にするだけでなく、タイヤの無駄遣いにも繋がるため、ライダー達は最高のドライブを探すだけでなく、リアタイヤをセーブすることも考える必要があるのだ。

アルゼンチンでザルコはリアタイヤからスモークを発生させていたが、彼はしっかりとタイヤを維持することが出来た。彼の秘密はスロットルコントロールのテクニックだけでなく、タイヤを感じることにある。そうして彼は自分のライディングテクニックを上手く利用し、タイヤのパフォーマンスや摩耗具合に合わせて、コーナーごと、ラップごとにライディングを変えているのだ。

そのため、ザルコはいわば中古の、1年落ちのテック3ヤマハで、ヤマハのファクトリーライダーであるビニャーレス、バレンティーノ・ロッシに幾度となく恥をかかせたのだ。昨シーズンにファクトリーチームは4つの異なるシャーシでレースを行い、最終的に全てに対して不平を述べていた。しかしザルコがバレンシアの冬季テストで2017年型シャーシを利用した際、彼はこれを大いに気にいったのだ。

ヨハン・ザルコ

「まったくネガティブさは感じません。このシャーシであれば、バイクの上でさらに自由にライディング出来るので嬉しいですね。前のバイクでも速く走る事は出来ましたが、時にエネルギーを使いすぎてしまうこともあったんです。2017年型であれば、30%少ないエネルギーでライディング出来ます。これはレースの中では本当に重要になるんです。2017年型はブレーキングでさらに良い感触がありますから、バイクはより安定しています。このお陰で、コーナーにより良い形で備える事が出来ますし、バイクの上でさらにリラックス出来るんです。」

ヤマハは異なるライダー達から異なるフィードバックが帰ってくるというトリッキーな状態にある。エレクトロニクスとタイヤの変更によって、ファクトリーチームの勝率は50%悪化し、最悪の事態だ。ヤマハのエンジニア達はこの状況から脱出するために良いフィードバックが必要だが、ビニャーレスとロッシは2017年型のシャーシは最悪だと語り、ザルコは最高と語っているのだ。

ザルコは色んな意味で新しいライダーだ。彼はMotoGPのスターライダー達とやりあうことをはばからないだけでなく、MotoGPにおける戦士だというようにも振る舞わない。彼はタトゥーも入れていないし、奇抜なヘアスタイルもしない。また彼はTwitterもやらないし、ジャーナリストとも何かやりあうことも無い。彼のメディア対応は実に気軽で面白いものだ。

バレンシアテストにおけるジャーナリスト達の話題は、ファクトリーライダー達にダメ出しをされたシャーシでの彼のペースだった。ジャーナリスト達が彼にペースについて驚いたかと尋ねた時、彼は「驚いてはいません。単純に嬉しいですね。」と語っている。別のジャーナリストがしつこく「本当にタイムに驚いてはいませんか?」と聞いたが、彼は「いいえ。驚きはありません。自分はメディアの皆さんが考えているより、あまりこのシャーシに関しては意識していませんでしたから。」という回答だった。

また3人目のジャーナリストが、彼のスピードはヤマハにとって、ファクトリーとサテライトという上下関係を破壊するとして問題になると思うかと尋ねた際、彼は無表情で「速いライダーが自分のブランドのバイクに乗っていることが問題になるなんて、聞いたことありませんね。」と語った。

ザルコは実にシンプルに物事を考えている。彼は何がレースにおいて助けになるかだけに集中している。そのため、彼はジャーナリストの言うこと、奇抜なヘアーカットをすることなどには興味が無いのだ。

ヨハン・ザルコ

「Moto2の時と同じようにやろうとしています。物事をあまり複雑にし過ぎないことです。自分の仕事をシンプルにこなすこと。より良い情報を得て、より良いフィードバックを得ること。それだけです。」

バレンシアテストにおいては、どの2017年型シャーシを使用していたのかという問いに(ファクトリーライダー達は3種類の2017年型シャーシをシーズン中に使用していた。)彼は「わかりません。それに自分が使用したシャーシがどのタイプなのか、ファクトリーライダー達が使用していたのはどのタイプだったのかも知ろうとは思いません。もしそれを知ってしまうと余計な情報になりますし、自分の作業がより複雑になってしまいますからね。」と答えている。

彼の働き方は、クルーチーフのガイ・クーロンと同じだ。クーロンは「ザルコは絶対に文句を言わない」と言う。「ザルコはどのシャーシであるかなんて気にしないと言うんです。彼はそれを言い訳にしたくないと言うんですよ。」

2019年にザルコがロッシに変わってヤマハのファクトリーライダーになると言う人がいる。これは9度の世界チャンピオンが、来シーズンの終わりで引退を決断した場合だ。しかし、疑いようもなく、既に他のファクトリーが彼を狙っている。そのために、ヤマハは彼を手元においておくという努力が必要だ。

恐らくヤマハは2018年に、ファクトリーによる完全なバックアップを行うという甘い囁きをする事が出来るだろう。これはHRCやDucatiがカル・クラッチローやダニロ・ペトルッチにファクトリーキットを与えているのと同じだ。しかし恐らくこれは実現しない。

ザルコは2018年に2つのシャーシを使用する。1つは彼が昨シーズンも使用した2016年のもの。そしてもう1つは、ロッシとビニャーレスが6月から使用していた2017.2ファクトリーフレームだ。

モビスターとヤマハの契約事項に何が含まれているのかはわからないが、恐らくファクトリーはテック3に最新のファクトリーキットを与えることが出来ないだろう。過去にマルボロがヤマハの500ccのGPチームに融資した際、タバコの巨大企業とヤマハの契約には、他のチームには最新スペックのバイクを与えないというものが含まれていた。

恐らくはザルコはどちらにしても気にしないだろう。彼が来年する必要があることは、2019年に彼が獲得するであろういずれかのファクトリーシートへの下準備をしつつ、昨シーズンと同じ仕事をするだけなのだ。

(Photo courtesy of michelin)

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