今シーズン開幕前に2018年シーズンのMotoGPの見どころをご紹介しています。その3としては、2018年末でヤマハとの契約が終了となるロッシ選手の去就に関する話題です。

2018年の開幕段階では大きな話題にはならないでしょうが、開幕から数戦で間違いなく大きな話題になるのが、ロッシ選手の去就に関する話です。ほとんどのファクトリーチームの選手と同様に、ロッシ選手のモビスターヤマハとの契約も2018年末で終了しますが、本人は昨シーズン中に「現役を辞めるのが怖い」と語っていますが、現役を引退した後は「10年ほど車のレースをしたい、ル・マン24時間耐久に出たい」とも話しています。

ロッシ選手にとってレースを続けることのモチベーションとなっているのは、「レースで優勝した後の12時間のフィーリング」という話も昨シーズン中にしていましたが、優勝回数、記録は重要ではないとしながらも、本人は10度目のタイトル獲得を達成したいという話もしています。

実際問題として、2018年以降も現役を続けるかどうかという判断については、「開幕から数戦で決めたい」としていますが、現役を続行するとなった場合は、カタール、アルゼンチン、アメリカとヨーロッパの外で開催されるサーキットが終わって、ヨーロッパラウンドが開始となる第4戦のヘレスあたりでの発表、もし万が一現役を引退するというようなことになれば、母国GPとなる第6戦ムジェロでの発表が予想されます。

優勝争いが出来るだけの戦闘力がある限り、ロッシ選手は現役を続けるだろうということを考えると、2018年にファクトリーヤマハの戦闘力が高ければ、ロッシ選手も現役を続行しようと考える可能性が非常に高いと言えます。昨年タイトル争いから早々に脱落してしまったヤマハにとって、タイトル争いが出来るバイクを作るということが今年の至上命題なわけですが、これは同時にロッシ選手の去就を左右するのもバイクの戦闘力次第ということになるわけで、この冬にエンジニアに伸し掛かる重圧は想像を絶するものになるでしょう。

ロッシ選手が今年引退を決断するかどうかは定かではありませんが、ロッシ選手の現役続行、引退の判断に関連して、モビスターヤマハチーム以外でも多くの物事が影響を受けます。

まず一番大きな影響を受けるのは、2017年に大活躍したフランス人ライダーであるヨハン・ザルコ選手です。ロッシ選手が今年末で引退をする場合、自然に行けばザルコ選手がそのファクトリーシートに収まる事が予想されていますが、もし仮にロッシ選手が引退するにしても、その発表のタイミングが遅くなればなるほど、ヤマハでファクトリーシートを獲得出来るか不確定な状態のザルコ選手が、既にオファーをしているとされるKTMへの移籍を決める可能性は高まります。ただ、ロッシ選手が現役続行を早いタイミングで発表した場合も、2019年はファクトリーシートを希望しているザルコ選手がKTMに移籍する可能性は非常に高いでしょう。

また、ロッシ選手が結論を先延ばしにして結果的に引退、ザルコ選手は既にKTMに移籍を決めたとなると、モビスターヤマハはロッシ選手の後釜となる選手を確保する必要があります。しかし、2017年はザルコ選手に比べて輝けなかったフォルガー選手にオファーが行くとも思えず、かと言ってまだまだ若手のビニャーレス選手とMoto2やMoto3からのルーキーをいきなり組ませるとも思えません。

マシン開発がしっかり出来るベテランライダーとなると、MotoGPパドックを見渡してもペドロサ選手くらいしか思い浮かびませんが、MotoGPでのデビュー以来ホンダでしか走った事が無いペドロサ選手が2018年末でホンダを離れるというのも、ちょっと想像出来ません。そうなると、チームラインナップをしっかり考えたいファクトリーヤマハのほうから、ロッシ選手に「このあたりまでに決断して欲しい」という形で依頼をしている可能性も十分に考えられます。

ロッシ選手は現在スカイ・レーシング・チーム・VR46を所有しており、Moto3とMoto2に参戦していますが、現役引退後はMotoGPにもチームを持つことが予想されています。ドルナCEOのカルメロ・エスペレーターもロッシ選手が引退した後は、「是非MotoGPにチームを持って欲しい、そのためなら参戦チーム枠を増やす事も考える」といった話を数年前にしていました。

しかし、そうなると割りを食うのがテック3です。テック3ヤマハは長らくヤマハのジュニアチーム的な位置づけとなっており、ヤマハとの関係も深いわけですが、仮にヤマハがファクトリー2台、サテライトで2台という体制を変えないとなると、サテライトで2台のバイクを走らせるのがVR46になった後、テック3はヤマハ以外のメーカーのサテライトチームになることになります。ヤマハ側が大きく体勢を変更してファクトリー2台、サテライトで4台という形にならない限り、テック3はテック3ホンダ、テック3スズキ、テック3Ducati、テック3KTM、テック3アプリリアという見慣れない名称のチームに変わる可能性があります。

2018年以降も恐らく現役続行を続けるであろうロッシ選手ですが、長らくMotoGPの人気を牽引してきた唯一無二の存在であるため、その去就が大きな注目を集めるのも仕方ありません。


(Photo courtesy of michelin)