★カワサキ Ninja H2 SX試乗レビュー

カワサキが新たに発表したスーパーチャージャー搭載のNinja H2 SXのレビューをお届けします。アウトバーンで最速のスポーツツアラーとなるために生まれたバイクというだけあって、やはりとてつもない速さを誇るようです。

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名前が示しているように、H2 SXはH2にパニアを付けたバイクでも、ベストセラーであるZ1000SXにH2の197馬力のエンジンを搭載したものでもない。H2 SXはそれ以上の存在だ。H2 SXのチューブラースチールフレームはH2のそれと似ているが、エンジンは2インチ前に搭載され、ヘッドストックは浅く、ホイールベースは25mm安定性の為に延長されている。フレーム自体も細いチューブとなっており、サブフレームは2名乗車と荷物を搭載することを考えて強化されている。

H2 SXはH2と同様に998ccの排気量がありクランクケースも同じものだ。しかしそれ以外は完全に新しいエンジンだ。カワサキはH2 SXはカワサキのスーパーチャージャーエンジンとしては第2世代のモデルだという。これはカワサキがH2/H2Rの後に、”バランスド・スーパーチャージャーエンジン”と呼んで開発をしていたものだ。

別の言い方をすると、H2の究極の目的はトータルパフォーマンス、そしてH2 SXでカワサキはパフォーマンスと燃費のバランスを取ろうと努めたということだ。結果として新しいエンジンはより豊かな低中速トルクを持ち、ヴェルシス1000と同様の燃費を実現している。

もちろんパワーというのはコントロール出来なければ意味がない。H2 SXはH2同様に優れたエレクトロニクスが搭載される。パワーモードはフル、ミディアム、ローの切り替えが可能だ。ミディアムはパワーを75%、ローは50%にそれぞれ制限するものだ。トラクションコントロールシステムもまた3段階で調節が可能で、コーナリングABSと統合されている。

クイックシフターとオートブリッパーが搭載されており、シフトチェンジの最中にクラッチの操作は必要ない、さらにはローンチコントロールも装備されているのだ。サスペンションはセミアクティブや電動調整式ではない。前後ともにフルアジャスタブルとなっており、リアにはプリロードのリモートアジャスターが付いている。

ボディーワークはH2と同様にボディ左側に巨大な吸気用ダクトが見える。大きなスクリーンは完全にアジャスタブルだ。H2 SXの性格を考えると、カワサキはエアロダイナミクスを適切なもので安定性があり、強さもあるものにする必要があった。

H2 SXに搭載されるコーナリングヘッドライトもまた、カワサキとして初めての装備だ。Boschのマネジメントシステムがリーンアングルに応じてライトを点灯させる。時計、スイッチギアなども専用品でTFTフルカラー液晶の周囲にこうしたものが配置される。メーターのバックグラウンドカラーやレイアウトの変更が可能で、ヒートグリップ、クルーズコントロールも搭載される。

フロントエンドのフェアリング幅は狭く、SEの重量は260kg、これはZZR1400よりも9kg軽い。またシート高はZ1000SXよりさらに高くなっている。しかし幅の狭いシートによって足をつきやすさは良い。

低速では重い塊という感触を受けるがそれでも扱いやすい。エンジンは反応が良く豊かな低速域があり、トップエンドはH2の片鱗を覗かせる。しかしスピードが上がると燃料供給が少々断続的になった。テストでは市街地走行と高速での通勤という形だったが、これが問題を大きくしてしまうようだ。開け始めは悪くないのだが、スロットルを閉じると燃料ラインをいきなり塞がれたような症状が出る(※恐らくガス欠症状が出るということかと)H2と比較すると実にスムーズに感じるのだが、ZZR1400と比較すると、H2 SXは少しがさつな印象を受ける。

クイックシフターは思っていたほどスムーズではない。シフトダウンの際にはショックが大きく、私が想定していたようなクイックシフターではなかった。エンジン回転が上がると、この問題はそこまで気にならなくなった。約160km/h付近では回転数は6,000程度であるが、レッドラインは12,000なのだ。クルーズコントロールは加速、もしくは少し速度を落としたい場合は、左のハンドルバーにある+/-ボタンで速度の微調整が可能だ。

そしてこうした速度域においては、H2 SXのポジションはZZR1400とZ1000SXの中間のようなものだと感じるだろう。Z1000ほどアップライトではなく、ZZRほど前かがみにはならない。巨大なスクリーンは背の高いライダーにも十分なものだし、ヒートクリップは嬉しい装備だ。

シートも非常に快適で、パッセンジャー用シートも快適だ。足元には十分なスペースがあり、ZZRほどバックステップになっていない。フルカラーの液晶は必要な情報を全て表示しており、ブーストゲージ、リーンアングルの表示なども可能で、ライディングの後に最大リーンアングルが何度だったのかなどを確認出来る。

カワサキによるとH2 SXはH2よりも25%燃費が良いという。そして19Lのタンクを満タンにした状態では約321kmを走行出来るという。プロジェクトリーダーの渡辺氏はMCNに「ニンジャH2 SXはアウトバーンで最速のスポーツツアラーとなるために開発しました」と語る。私も彼の言葉は正しいと思う。スーパーチャージャー搭載のエンジンは、いかなるギアにおいても背骨がおいていかれるような加速をする。しかし、スポーツツアラーとしては他の要素も必要であり、H2 SXはその部分が少し足りない。

路面が冷たかったせいか、ブリヂストンのS21のせいか、バイクのジオメトリーのせいか、私はフロントエンドから十分な安心感を感じることが出来なかった。スポーツバイクとしてということではなく、個人的にはもう少しフィードバックが欲しかったということだ。H2 SXは明らかにスポーツバイクというよりはツアラーだが、このバイクがイギリスでどのような走りを披露するのか楽しみだ。

サーキットとなると話は別だ。今回はポルトガルのエストリル・サーキットで2日目にテストを行った。スロットルを全開でローンチコントロールを効かせ、エンジン回転数は6,000回転。エレクトロニクスを完全に信じ切って加速すると、恐ろしいほどの加速が待っている。ゼロ加速から約284km/hに加速するまでに要するのは距離にして僅か1kmほどだ。

実際H2 SXの加速はキチガイじみていて、例え経験豊富なライダーであっても目が丸くなる。トラクションコントロールをオフにした場合、フロントホイールを接地させておくのは難しいだろう。

メインストレートでさらにスロットルを開けてみたが、バイクは291km/hの状態からさらに加速をしようとした。非常に風が強い日だったが、ストレートエンドにおける挙動は実に安定していた。

ストリートで問題となったハンドリングの問題は発生せず、タイヤにしっかりと熱が入ったこと、そしてサスペンションをしっかりと機能させられたことから、フロントエンドのフィーリングの不足という問題はあまり感じなかった。長いコーナーにおいてもH2 SXは安定していて予測しやすい挙動を示した。リアエンドのグリップも良かった。エレクトロニクスは素晴らしい働きをし、これだけの馬力をしっかりと使えるようにしていた。H2 SXはスポーツバイクというよりツアラーである。Z1000SXのようなハンドリングの自在さはない。しかしサーキットに持ち込んでも、特に不足を感じることはない。

H2 SXのスーパーチャージャーは、H2のものと見た目も音も似ているかもしれないが、実際には全く違うものだ。カワサキによると新しいエンジンは25%燃費が良いという。まずスーパーチャージャーのインペラーと吸気システムが新しくなっている。インペラーのサイズは同じだが、形状とブレードの角度が異なる。吸気チャンバーは改良されており、インテークファンネルの長さも異なっている。スロットルバルブは50mmから40mmへと小型化され、カムプロファイルは吸排気間隔が短いものとなった。同様に吸気、排気ポートも改良されている。圧縮比は僅かにアップし、ピストンも新しい。圧縮比が上がったことによって燃費が改善しているわけだ。

エキゾーストも新しくなっており、小径のヘッダーパイプとよりコンパクトになったサイレンサーが搭載される。これによってH2よりもシステムとして2kg軽量になっている。結果としてエンジンはラム圧がかかった状態で207馬力を発生する。中低速のパワーが向上しており、燃費は25%アップしているわけだ。

使いやすいスーパーチャージャーのパワーと快適性の組み合わせは見事だ。ヨーロッパをこれ以上快適に速くツーリング出来るバイクは存在しないだろう。非現実的なH2に続いて、H2 SXはアウトバーンの王者と言えるだろう。ヒートグリップ、クルーズコントロール、コーナリングABS、フルカラー液晶など実用的な装備があり、とてつもないパワーを秘めているのだ。間違いなく万人を驚かせるバイクと言える。

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