★MotoGPはバレエなのか、それともバトルなのか?

COTAのレースではザルコ選手がロッシ選手に仕掛けたオーバーテイク、そしてロッシ選手がランオフしてトラックに復帰した際にアドバンテージを受けたということで議論が巻き起こっていました。マット・オクスレイさんが、こうしたペナルティーの裁定に関して面白い記事を書いていますのでご紹介します。


ロッシのCOTAでのペナルティーは、未だに増え続けるMotoGPのルールブックによるものだ。こうしたマイクロマネジメントがMotoGPを駄目にする可能性があるのだろうか?そしてヘレスでは、2005年4月10日の午後2時45分に、MotoGPの現代における剣闘士達のような戦いが始まったのだ。

ぶつかったり、強引に相手のインに入ったりというのは、人々がモーターサイクルレーシングを始めた頃から行われてきた。しかし、ヴァレンティーノ・ロッシが2005年のヘレスの最終コーナーでセテ・ジベルナウに対して行った攻撃が、我々が現在良く知る”戦略”の始まりだろう。

もしあなたが覚えていない場合のために説明すると、ロッシはレースを通してジベルナウの背後に張り付き、最終ヘアピンでジベルナウのインに飛び込んでジベルナウに接触。ライバルがグラベルトラップからなんとか脱出する中、ロッシはそのままゴールラインを通過。ペナルティーは与えられなかった。

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マルク・マルケスがホルへ・ロレンソに同じ事をしたこともあったし、ホルへ・ロレンソも何年も前に同じ事をライバルにしたこともあった。この種のライディングに問題は無いと思う人もいれば、そう思わない人もいる。しかしモーターサイクルレーシングは荒っぽいスポーツで、それはずっと変わっていない。これはバトルでありバレエなのだ。(言葉遊びと同様だ)そして間違いなく、これこそがモーターサイクルレーシングの最大の魅力なのだ。

3度500ccで世界タイトルを獲得したウェイン・レイニーは、「レースは戦いにいくようなもの」と話しており、2008年の250ccチャンピオンのマルコ・シモンチェリは「レースの中では他のライダーを殺したくなる」と話していた。もちろん彼はレーシングバイクに関わる激しい感情について比喩的な話をしていたわけだが。実際、感情というの実に野蛮なものだ。MotoGPの美しいカラーリング、いけてる髪型に騙されてはいけない。モーターサイクルレーシングというのは悪意に満ちたビジネスなのだ。

MotoGPのグリッドに相手ライダーを酷い抜き方で抜いた事が無いライダーなど存在しない。テキサスではロッシに急降下爆撃を食らわせ、アスファルト上でのランオフを余儀なくさせたのはルーキーのスター選手であるヨハン・ザルコだった。かつてのロッシであればトラックに戻る事は出来なかっただろう。彼はそのままグラベルトラップに運ばれていたかもしれないし、恐らくひどいクラッシュをしていただろう。だからこそ(大抵の場合)より安全なアスファルトのランオフがあるのだ。

アスファルトのランオフでレース中の骨折は免れるかもしれないが、そのせいで物事はより複雑になる。ロッシはランオフをその意図通りに使用したが、マルケスとの10台分のバイクの差を2台分に詰めるためにフルスロットルでトラックに戻った。そのため、FIM委員会は0.3秒のペナルティーを与えたのだ。

この制裁が間違っていると思う人間もいれば、妥当だと考える人間もる。ロッシですら「確かにアドバンテージを得ましたから、0.3秒くらいOKでしょう。」と話している。しかし、もしロッシがマルケスを0.2秒の差で破っていたとしたらどうだろう?ヤマハは恐らくこのペナルティーに対して抗議をするだろう。そうなっていれば、今頃我々はバイクレーシングなど何も知らない様々な弁護士、スポーツ仲裁裁判所からの返答を待っていることだろう。スポーツが茶番へと変わった2015年の11月に戻ることになる。

いくつかの人達にとってこれは心配の種で、MotoGPはライダー達に完全にプログラムされたロボットのように振る舞うようマイクロマネジメントされているという。さらに悪いことに、ペナルティーに対して訴えること、そしてそれに対して反論をするという仕組みによって、弁護士の数がメカニックの数をいずれ上回るだろう。一方MotoGPは巨大なスポーツで多額の金が動き、大いなる評判がそれにかかっている。であるから、全ての出来事が記録されており、とりわけ最新のカメラ映像と撮影時間によって、全てが詳細に分析出来るようになっている。

これら全ての責任を負っている幸運な男は、その人生の大半でレースに関わっているレースディレクターのマイク・ウェッブだ。彼は新しいMotoGPのルール、レギュレーションの変更は、最新技術の責めに帰すると考えている。

「誰もが完全に監視下にあるんです。実際、誰でもいつでも全てを見る事が出来るんです。また別の要素もあります。何年か前、私は1970年の500cc世界チャンピオンシップでジャコモ・アゴスティーニに続いて2位だったジンジャー・モロイのために働いていました。彼はほとんどのレースでアゴから2分遅れで完走していました。でも今や誰もが毎周数インチという差で戦っています。ですから1/10秒、1/100秒が重要になってくるんです。」

ウェッブはFIM MotoGP審査委員の座に、FIM常任委員のBill Cumbow、レース毎に代わるもう1人のFIM委員と収まっていた。2015年の大騒ぎの後、ドルナが自身をペナルティーのプロセスから排除したのは興味深い出来事だ。思うに、ドルナスタッフは火線上に立ちたくなかったのだろう。それに委員会が議論をしている中に、何が起きたのかを大きな声で指摘したがらないというわけでもなかろう。

「本当に些細な事が重要なんです。ですから我々はフェアであるように外から見られなければなりません。ヤマハがレース中にメッセージを送ってきており、ヴァレンティーノ・ロッシはコースアウトを余儀なくされたためにペナルティーに抗議をしたいということでした。ただホンダにとってはどうでしょうか?彼らは”ヴァレンティーノはマルクとの10分の何秒かのアドバンテージを得た”と言ったかもしれません。ヴァレンティーノがトラックをランオフしたのは明らかに彼のせいではありません。ただ、彼はトラックに戻る際にマルクとの差をかなり縮めるというアドバンテージを得ていました。0.3秒というのはペナルティーではなく調整なんです。」

「これは長年進化してきたと言えることなんです。2014年のルールブックはライダーが何をしようとも順位の変更こそが唯一のペナルティーとしていました。これは明らかにフェアではありません。ですからそこから内容が変化したんです。その他にどのようなペナルティーを提案出来るでしょうか?昨年に委員会と私は、”ライダーが得たタイムを評価し、それに値するタイム上のペナルティーを課す”というのが最も良いと結論付けたんです。」

「昨年シルバーストーンではアレイシ・エスパルガロが1秒のペナルティーを受け、ティト・ラバトが0.5秒のペナルティーを、ランオフしてタイムを稼いだとして受けました。ミサノではスコット・レディングが0.5秒をショートカットで、マーヴェリック・ビニャーレスが同様に順位変更のペナルティーを受けました。これは全て彼らがそこで何秒得たかによるんです。」

いくつかのライダーはこうした状況でペナルティーを回避する方法を知っている。昨年はマルケスがシルバーストーンでロッシとの接触を避けるためにアスファルトのランオフを走った。マルケスはランオフを走る中で前にいるライダーに対して特にタイムを稼ぐ事なくトラックに復帰した。


「マルクは何が起こるかわかっていたんです。ですから彼は”自分がした事はわかってる”と手を上げたんです。明らかに彼は自分がアドバンテージを得ていないのはわかっていました。ただ次のセーフティーコミッションで、ランオフをした選手は必ずペナルティーを受けるべきだと主張したライダー達がいたのは面白かったですね。彼らの議論はこんな感じでした。”もしこれがグラベルだったら、転倒していたか30秒ロスしていた。だからペナルティーを課すべきだ。”とね。ケーシー・ストーナーも昔同じような事を言っていました。彼らの言うことにも一理あります。ただ、私はこういう考え方は好きではありません。我々は今自分達が置かれている環境でレースをしているわけで、その環境というのはアスファルトのランオフなんです。もしそこにグラベルがあったならという形で、人工的なペナルティーを作る事はしません。」

より一般的なのは、コーナー出口でトラック幅を超えて走ったことに対するペナルティーだろう。

「トラックリミットに関するペナルティーはまさに悪夢です。以前は縁石をランオフしても芝の上でしたから、そこで得るアドバンテージは無かったんです。今や2人か3人が、ライダーがトラックリミットを超えていないか全てのセッションで目を光らせています。国際的なTV映像ではない様々なカメラからのいろいろな映像があるんです。」

我々はこうした目がどこで光っているのかわかっているし、それ以外の数百万の目も、熱心に今週のヘレスのヘアピン、ホルへ・ロレンソコーナーと呼ばれるコーナーに注目するだろう。というのも、いかなるサーキットデザイナーであっても、ヘアピンをサーキットの最終コーナーにするというのは、ライダーに最後の見事なオーバーテイクのチャンスを与えることと同じなのだ。そうでなければ、そのコーナーは事故多発地帯として知られることになる。

では、もしマイク・ウェッブが2005年のヘレスでレースディレクターだった場合どうしただろう?

「現在の状況であればペナルティーを課すでしょう。その考えを貫けるかどうかは定かではありませんが。ただ、ペナルティーの適用が必要な状況だとは思うでしょう。」

ウェッブはマルケスが2013年にロレンソから2位を奪った場面でレースディレクターをしていた。しかしロッシの事例につづ浮いてペナルティーは適応されなかった。だからと言って、物事が同じままであるというわけではない。

「年月を経て物事は変化します。何がOKで、何がOKではないかもね。」と彼は結論付ける。

しかしこれは、外部からの圧力が、モーターサイクルレーシングからその狂気を絞り出してしまう事になるのではないかと私を心配にさせる。危険なライディングは悪いことだ。しかし接戦のレース良いことだ。もしライダーの肘と膝があちこちで接触しようとも。私はバレエと同様にバトルが見たい。

ただ何よりも、私は自分が審査委員の席に座っていないということを心底嬉しく思う。というにも、もしペナルティーを課せば審査委員は酷評され、もしペナルティーを課さなくても酷評されるからだ。

(Photo courtesy of michelin)

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