★MotoGP2017 いかにイアンノーネのような選手の状況を解決するのか?

Mat Oxleyさんのイアンノーネ選手、そしてスズキのシーズン前半戦に関する考察記事をご紹介します。イアンノーネ選手がイビサ島でいかがわしいバカンスを送っているのかどうかは定かではありませんが、スズキファンにとって今年のシーズン前半は非常に歯がゆい状況です。本質的にはスピードのある選手ですから、なんとか良い方向に行ってくれたらと願うばかりです。

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既に言及したことがあるがもう一度言おう。私はアンドレア・イアンノーネが好きだ。ほとんどの理由は彼は面白いからだ。MotoGPは今非常に恵まれている。グリッドは多彩なキャラクターに彩られている。天使のような暗殺者から豆粒のようなボクサー、恐ろしい老人からギャングスターまで。

イアンノーネがギャングスターになりたがっている人間だとしたのは私ではない。最近あるジャーナリストがイアンノーネに、もしバイクでレースをしていなければ何で生計を立てているだろうかという質問をした際に、彼は即座にギャングスターと答えている。


とはいえ、イアンノーネは未だにバイクでレースをしており、問題を抱えている。彼のスズキでのパフォーマンスは、昨年11月にGSX-RRに彼が乗り始めた時から下り坂で、静かな期待は大いなる失望に変わっている。これはスズキにとっては努力が足りなかったというわけではない。スズキはイアンノーネと契約した時、彼がクルーチーフをDucatiから連れてくることを許可したが、クルー全員を連れて来ることに関しては拒否している。

チームはイアンノーネにホームのような雰囲気を感じてもらうために懸命に働いた。誰もが知っているように、ハッピーなライダーは速いライダーなのだ。”このスポーツは80%がライダーが考えていること、20%がバイクなんです。”とは最高のクルーチーフであるジェレミー・バージェスが教えてくれたことだ。”だからライダーが黄金のハンドルバーを欲しがったら、それを与えてやる必要があるんだ”とも彼は言っている。これについては考えさせられるものがある。イアンノーネは成金趣味があるため、彼とうまくやっていくためにはそういった理解が必要だ。

イアンノーネは現在多くの批判を受けている。彼は自分に合うようにスズキを機能させることが出来ておらず、彼は転倒するのに疲れてしまった。そこで彼はクルーズコントロールボタンを押したわけだ。別の見方をすればある程度理解は出来る。バイクがしっかりとしていないのに、なぜ自分が怪我をするリスクを取るだろうか?しかしまた別の見方をすれば、怪我をするリスクを冒さなければ、バイクはけしてしっかりしたものにはならない。そして彼はそれをするのに十分過ぎるほどの報酬を得ている。

シーズン前半に彼が苦戦しているのを見るのに大きな驚きはなかった。デスモセディチとGSX-RRは正反対のバイクだからだ。Ducatiはリアエンド型のバイクで、スズキはフロントエンド型のバイクなのだ。

シーズン前半にイアンノーネは自信があるように見えた。「スズキには強みがあります。素晴らしいエッジグリップ、高いコーナリングスピード、自由度の高いハンドリングなどです。」彼は5月にル・マンでこう語っている。「ただ、バイクを起こすとスピンが多すぎ、ウイリーもしてしまいます。スピンの問題はいろいろな問題の組み合わせです。電子制御をさらに使うことも出来ますが、これでは問題をコントロールしているだけで問題の解決にはなりません。」

6月のバルセロナまでには、彼は明らかに下り調子だった。

「明らかにより良い電子制御が必要です。ただ、一番の問題はハードにブレーキンをしてリーンしてコーナーに進入しようとすると、いつもフロントを失ってしまうんです。転倒はしたくありません。レースを終えたいんです。ですから自分の能力よりも0.5秒遅く走っているんです。

イアンノーネは今月始めのドイツGPでも再びフロントを失っている。その時彼は12位ポジションでリーダーから18秒遅れ、ペースとしては0.76秒遅れだった。実際イアンノーネはそこまで転倒していない。彼は昨年と同程度の転倒数で、今年前半に関してはグリッドの選手の3分の1が彼よりも転倒している。

イアンノーネは現在休暇中だが、これは良いことにも悪いことにもなる。彼は現在リラックスして怒れるファンから距離を置いてトレーニングに励んでいるのかもしれないし、仲間とイビサ島でいかがわしいことをしているのかもしれない。しかし、彼の選択は今シーズン残りを決定するだけでなく、彼の今後のキャリアを決定するものになるだろう。

プロフェッショナルレーサーというものは簡単に道を踏み外すものだ。彼らは基本的にはバイクを乗ることに関して並外れた能力を持っている人間であり、突然自分の口座に数億(※原文a few millionのため億と訳しています。)が入金され、モデルのガールフレンドと楽しい一時を過ごし、プライベートジェットであちこちを旅し、ランボルギーニを転がしているわけだ。まさしく”‘la dolce vita’”夢の生活を送っているわけだ。どうして354km/hで走るバイクでリスクを冒そうとするだろうか。

多くの才能あるライダーがキャリアの中でこうした十字路に差し掛かる。”この仕事を続けている間に出来るだけ楽しもう”と思うか、”真剣に取り組もう”と思うかのどちらかだ。

カル・クラッチローはBSB時代に楽しもうという方向に流されたことがあったが、最終的に真剣にやろうと思うようになったと認めている。彼はイアンノーネがそちらの方向に行ってしまうのではないかと危惧している。

アンドレアは才能を無駄遣いしてますね。自分は彼のライディングがどのようなものかを理解しています。Ducatiにいた時に彼のデータを見ましたが、彼は最高のライダーでした。彼はとんでもないことをやってましたよ。ブレーキングとスロットル操作を同時にするようなことをね。」

イアンノーネは問題を抱えているが、スズキはより大きな問題を抱えている。怪我をしまくるルーキーと、進むべき方向を見失った才能あるライダーだ。

され、これをいかに修復するのか?

まず、スズキはイアンノーネに新しいクルーチーフを与える事が出来るだろう。マルコ・リガモンティは世界最高のクルーチーフかもしれないが、ライダーがバイクを理解しておらず、クルーチーフ自身もバイクを理解しておらず結果が出ていない時は、クルーチーフを変えるというのが最も簡単な方法だろう。

そして、スズキには完璧な人物がいる。トム・オケインはMotoGPで1980年台から働いており、チームロバーツ、ヤマハ、スズキと仕事をしてきた。直近ではダブリン出身の彼はアレイシ・エスパルガロのクルーチーフを務めていたが、リガモンティのためにその場を明け渡したのだ。彼は未だにスズキで働いており、バイクレースの最初のデータロギングキットを作り出した人間でもある。またウェイン・レイニーからエスパルガロまで共に働いてきている。彼はライダーの信頼を得る方法を心得ているし、優しく彼を正しい方向に導いてくれるだろう。そして、これこそがイアンノーネが求めていることだ。

そして長期的には、スズキはグリッド上に2人以上のライダーが必要だ。これは2人では十分ではないというのがその理由だ。KTMは通常は2人のライダーを走らせているが、ドイツではミカ・カリオも走らせていた。これによる改善というのは計り知れない。

「2人よりも3人のライダーがいることの重大さというのは信じられないほどだと思います。」とKTMのブラッドリー・スミスが語っている。「FP1の終わりには全てのタイヤのデータが揃いました。これは自分達にとってはとても重要なことです。データに関しては、全てをまとめて前に進むのに役立つんです。」

スズキは1987年にRGV500で走り始めた頃から2人のライダーのみで戦っているが、これが過去30年で2度しかタイトル獲得がないということを説明していると言えるかもしれない。

スズキの1993年の世界チャンピオンであるケヴィン・シュワンツは、時折イアンノーネと同様の状況に陥った。シュワンツはスズキにおいて唯一速く走行出来たライダーであったため、スズキのエンジニアの中で彼の意見に批判的な見解を述べる事が出来るものはいなかった。

もちろんシュワンツはイアンノーネとは全く異なる。彼は”自分の身を犠牲にして”(※彼の言葉だ)レースに勝利することを全く厭わなかった。

スズキのMotoGPチームマネージャーであるダヴィデ・ブリビオは、スズキにグリッド上の台数を増やすよう要請を続けているが、彼はこの10年間同じリクエストをしている。

スズキはこの陰鬱とした状況に、MotoGPディレクターであった寺田 覚氏を元レースチーフであった佐原 伸一と交代するという事で応えた。しかしこれにどんな意味があるのか?GSX-RRは突然最悪のバイクになったわけではない。問題は1シーズンパフォーマンスが上がらない、もしくは経験不足、コミットメント不足のライダーなのだ。

シュワンツは寺田氏を佐原氏と交代したことは間違っていると考えている。これは単純に、イアンノーネに間違ったメッセージを与えるだけだからだ。「この判断は、今までの問題はイアンノーネ自身では無かったと彼に言い訳をするチャンスを与えただけだね。」

スズキの最優先事項はイアンノーネにまっとうな道を歩かせるということだ。新たなクルーチーフが彼を正道に引き戻す手になるかもしれないし、イビサに向かっている彼の関心をレーストラックに引き戻すことになるかもしれない。

(Photo courtesy of michelin)

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