先週金曜にチーム代表のプレスカンファレンスが行われました。その中からトピックごとに抜粋してご紹介しています。エアロダイナミクス開発に関しては、今年のウイングレット内蔵フェアリングの開発コストはどの程度なのか、ウイングレットの禁止は誤った判断だったと思うか?などの質問が出ていました。「ウイングレット=突起物のため危険」と語るメーカー、「ウイングレットはマシンの高速走行時の安定性を高める」と主張するDucatiの対比が面白いですね。

 

Q

「明らかにウイングレットの禁止はエアロダイナミクスの開発を止めることには繋がりませんでした。昨年と比較した場合、コスト面ではどちらのほうがかかっているのでしょうか?

アプリリア ロマーノ・アルベシアーノ

「技術的には今年のほうがより複雑になっています。昨年はバイクのフェアリングの鼻先にウイングを付けるだけで良かったんです。これで簡単にダンフォースを得ることが出来ました。今年に関してはどのようにすれば同じような効果が得られるのかを、かなり考える必要性が出てきました。ですから、理屈でいうと今年のほうが開発コストはかかるわけですが、新しいルールによってフェアリングの数には制限があります。とは言え、今年のほうが高額になっていると思います。

Ducati ジジ・ダッリーニャ

「Ducatiは今年明らかに多くの資金を開発に使用しています。最初に登場させたカウルに関しては冬季のテストなど多くの時間を使い、テクニカルオフィスも完全に異なるフェアリングに関する計算を行ってきました。2つ目のカウルに関してもほとんど同様の資金を使っていると思います。これも冬季にかけた時間はほぼ同様でしたから。」

HRC 国分 信一

「ホンダに関しては昨年よりも少ない予算ですね(笑)」(※ジジのほうを見る)

Ducati ジジ・ダッリーニャ

「それは良かったですね。(笑)」

ヤマハ 津谷 晃司

「ヤマハはコストという面では昨年とほとんど同じです。」

スズキ 佐原 伸一

「スズキの場合はファクトリーで行っている作業はほぼ変わりません。エアロダイナミクスの開発に関する禁止があって、年に1回だけ?(※隣の津谷さんに確認する)の変更という状況でも作業は同じです。良い結果が得られた時に、年に1回の変更を行うということです。」

KTM セバスチャン・リッセ

「KTMは参戦初年度ですので比較対象がないのですし、今年はニューカマーということでルールも特殊です。ですから、今年と来年を比べるしかないのだと思いますが、来年関しては費用は同じでしょう。実際に開発に必要な内容は減るわけですが、現状はエアロダイナミクスに関するパーツが5つあって、それぞれにコストがかかります。あとはこの方向で行こうということを確認するためにトラック上のテストがより重要になるでしょう。さらにシミュレーションが必要でそうし、最終的にはこれがその分余計な資金を必要とするわけです。あまり大きな差が生まれるとは思いませんね。


 

Q

「開発コストは昨年とあまり変わらないという話ですし、ウイングレットなしに多くのバイクがサーキットへの適合に苦戦する中で、今また同じ問題を判断するとしたらウイングレットの禁止はしないでしょうか?ウイングレット禁止はミスで、ウイングレットがあったほうが良かったのでしょうか?」

アプリリア ロマーノ・アルベシアーノ

「正直アプリリアはウイングレット禁止には乗り気ではありませんでした。安全性との妥協点を探ろうとしていたんです。ただウイングの形状のせいもあって難しかったんです。」

Ducati ジジ・ダッリーニャ

「もちろんDucatiはウイングレット使用の可能性を探っていました。今年もムジェロなどのサーキットで、ウイングレット無しのバイクはウイング有りのバイクに比べて安全性が低いことがわかっています。例えばストレートの終わりなどで、ウイング無しではウイング有りの場合のような安定感は得られないんです。」

HRC 国分 信一

「安全性とエアロダイナミクスの効果の妥協点を探そうとしていたわけであって、あくまでも昨年の決定はミスでは無かったと思います。」

ヤマハ 津谷 晃司

「ウイングレットが禁止となったのは少し残念だと言いましたけど、今は手遅れです。それに既に異なる解決策を見つけているわけですし、ウイングレットを使用したかったというのはありますけど、現時点ではレギュレーションに関して問題はありません。」

スズキ 佐原 伸一

「私は昨年の議論に加わっていませんから何とも言えませんし、それがミスだったとも言えません。単純にうちのエンジニアにウイングレットを使用せずにエアロダイナミクスを発生させるようにとオーダーしただけです。」

KTM セバスチャン・リッセ

「我々にとってはこのルール変更は安全性を高めるためだったというのは明確です。確かにこの決定によってより難しい状況になることは明らかでしたが、こういう事を頭に入れて性能を発揮しようとしているわけですから。KTMはウイングレットを持ったバイクがありませんでしたが、それでも性能のロスが発生するという決定だったわけです。そしてこのチャレンジに挑戦しています。今のところ問題はありません。」

(Photo courtesy of michelin)