★MotoGP2017 なぜMotoGPが今後もさらに良くなっていくと言えるのか?

今後のMotoGPが発展するであろうという理由について、ドルナの独立チームへのサポート、現在のレギュレーションからそれが言えるというマット・オクスレイ氏の意見をご紹介します。確かにF1などと異なり、ファクトリーが開発パートナーとしてサテライトチームに頼り、サポートを厚くするというのは健全ですし、サテライトがそのサポート内容に不満であればメーカーを乗り換える事が出来るというのも面白いですよね。マシンの最低重量はあと5kg軽くするだけでもタイヤの後半の保ちが段違いのはずなので、MotoGPクラスでも最終ラップまで団子になって面白いかも。。なんて思ってしまいますが。

昨年のMotoGPチャンピオンシップはグランプリレーシングの数十年の歴史の中でも最高の1つと言えるものだった。2017年はさらに素晴らしいものになるのだろうか?その答えは予想に反して、イエスと言えそうだ。1つの理由はドルナが2017年から5年間に渡り、独立チームへの財政支援を2倍にするという話だ。例えば、テック3ヤマハのエルヴェ・ポンシャラルは、ジョナス・フォルガーとヨハン・ザルコをチームに加入させたことで400万ユーロ(約4.8億)を、ドルナが全てのチーム(ファクトリーとノンファクトリー)に支払っている標準イベントフィーに加えて受け取る。

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ポンシャラルは、今月末にロサイルのピットレーンを笑顔を見せながら歩く唯一のチームオーナーではなかろう。全てのMotoGPの独立チームは、1年にライダー1名につき200万ユーロ(約2.4億)を受け取る。これはチーム委員会のIRTAとの粘り強い交渉によるものだ。これによってテック3は契約期間全体で2000万ユーロ(約24億)を得ることとなり、ルチオ・チェッキネロの1名体制のLCRホンダは1000万ユーロ(12億)を得ることとなる。

ドルナのこうした内容は、F1やフットボールなど、彼らの収入のほとんどを既にスポンサーシップで潤っているトップチームに還元するという他の大きなスポーツに真っ向から対抗するやり方だ。カルメロ・エスペレーターは社会主義者ではないが、(小声で言うと)MotoGPの現在のやり方はバイク狂いの社会主義であり、マシンパフォーマンスを均等化することで、その方針を加速させている。

IRTA会長/Tech3 エルヴェ・ポンシャラル

「いつもドルナに”もし強力で潤っているチームをさらに助け、弱くお金のないチームに手を差し伸べないのであれば、パフォーマンスにおけるギャップを生むことになる”と話しているんです。そうなればグリッドとレースは面白くなくなり、いくつかのチームは苦戦し、レースどころではなくなってしまいます。」

チェッキネロのLCRはこの10年でMotoGPレースで勝利した初めての独立チームとなったが、彼はここ数年で独立チームがファクトリーチームに強力に挑むようになったことで、レース環境は今よりもよくなると考えている。そしてそれは彼らがより多くの資金を得ることになったからだけではない。

LCR ルチオ・チェッキネロ

「チャンピオンシップに参戦するメーカーが増え、彼らにとってそのパフォーマンスに対するプレッシャーが大きくなりました。ですから彼らは独立チームが彼らのバイクの開発を助ける事を必要とするようになります。そうなればメーカー達は独立チーム達とより緊密に働くようになり、ファクトリーバイクと我々のバイクの差が、より一層小さくなるのです。」

MotoGPは今までこうした方向に何度か動いてきた。2016年にクラッチローがブルノとフィリップアイランドで勝利した事は、このカテゴリーの(小声で)社会主義モデルが上手く働いているということだ。先月のフィリップアイランドテストでは、この流れを汲むものだ。フォルガーとクラッチローは9人のファクトリーライダー達を抑えて、4位と5位タイムを獲得したのだ。

既に昨年のMotoGPマシンに関してもグランプリレーシングが始まった1949年以来最も性能が接近しており、グリッドの先頭から最後尾まで、そのパフォーマンスの差は本当に僅かであった。数十年に渡り物事はそういった形ではなかった。特に、1960年から1970年にMVアグスタがそのエキゾチックなマルチシリンダーマシンで、グリッドを埋めていたNorton、Matchlessの単気筒レーサーに挑んだ時はそうだった。戦力が拮抗し始めたのは、タバコの資金がグレンプリレースに大々的に供給された1980年台の初めだ。突然多くのチームはファクトリースペックのバイクをファクトリー達からリースする資金を得るようになり、そうして平穏かつ幸福な日々は、2006年以降のシーズンからタバコに企業によるスポンサーが禁止されて終わりを告げた。

ドルナの小規模チームに対しる資金援助はこうした禁止を受けたものと、それに続いて起きた世界金融危機によるものだ。本質的に、ドルナは小規模チームはMotoGPマシンを走らせるだけの資金調達が出来ないと認め、そうしたチームのために彼らのポケットから金を出すことにしたのだ。こうした支出は、ドルナにとって採算性の高い有料TVとの契約によって部分的に賄われている。ドルナの新しい契約におけるその他の重要な条項は、全てのメーカーに独立チームに向けてファクトリースペックのバイクを、1人につき最大2200万ユーロ(約26.5億)で貸し出すことを求めるものだ。このアイディアによって、独立チームは高額なリース料の減額の交渉に利用出来る。そしてこれは既に起こっていることだ。

LCR ルチオ・チェッキネロ

「他の2つのメーカーからアプローチがありました。1つはこの最大リース価格より安かったですので、かなり凄いオファーでしたね。つまりこれはメーカーは彼らの独立チームの面倒を見なければいけないということなんです。そうでなければ独立チームは異なるメーカーのバイクを使用するようになりますからね。」

ドルナがここにたどり着くには長い時間がかかった。それまでにはグリッドを独占したいメーカーとの間で何度も交渉が持たれた。もちろんマイナス点もある。マシンパフォーマンスが接近するということはそのテクノロジーが似たようなものになるということで、これを喜ばないファンもいる。そしてここにたどり着くまでには多くの金がかかった。何度もテクニカルレギュレーションが変わったことで、莫大な金がかかったのだ。

LCR ルチオ・チェッキネロ

「過去数十年に渡るレギュレーション変更で2倍のコストがかかっています。ただ、その価値はあったと思います。というのも、ようやく異なるメーカー、異なるライダーが優勝出来る非常に公平性の高いカテゴリーとなったわけで、ファクトリーチームと独立チームの差は小さくなりました。ドルナは素晴らしい仕事をしたと思います。」

こうしたレギュレーション変更は、ドルナが2007年からエンジンを4気筒に限定し、排気量を990ccから800ccにしたことから始まった。

LCR ルチオ・チェッキネロ

「ですからファクトリーは完全に新しいエンジン開発する必要性があったんです。排気量を800ccに落としたのは大きな間違いでした。というのも、彼らは回転数の制限を設けていなかったんです。それでエンジニア達はエンジン回転数を上げることでさらなるパワーを求めました。そしてバルブスプリングを使用するエンジンよりも大幅にコスト高のニューマチックバルブへと移行したんです。数年後エンジンは800ccから1000ccになりましたが、それでも回転数の上限は定められなかったために、ニューマチックバルブは残ったんです。それからシームレスギアボックスが登場しました。これもまたコストを上昇させました。このせいでトランスミッションを担当する技術者が余計に必要になりました。そしてほとんどの場合ギアボックスにはいろいろな秘密が詰まっているので、この技術者というのはファクトリーからの人間になります。」

統一ソフトウェアへの移行もまた、コストを引き上げることとなった。少なくとも時間に関しては。

LCR ルチオ・チェッキネロ

「ホンダのソフトウェアには多くの自動機能がついていたので、自分達が1人の電制周りのエンジニアで賄えるようになる前は何人かでやっていました。しかし、統合ソフトウェアはホンダのソフトウェアのような機能がないようで、ソフトウェアの作業を行うためにもう一人エレクトロニクスエンジニアを雇わざるを得ませんでした。」

F1も統合ソフトウェアを導入して同じような道を辿った。ただ彼らが完全にこのシステムに適応した後は、エレクトロニクスに関わるコストは半減した。800cc以外のドルナの唯一のミスは、ファクトリーバイクの最低重量をオープン機、CRT機に合わせて162kgとしたことだ。

LCR ルチオ・チェッキネロ

「すぐに皆がこうした重いバイクには大きなブレーキディスクが必要だと気づきました。ですから、我々は320mmディスクだけでなく、340mmディスクも買わなくてはいけなくなったんです。1シーズンにディスクだけで10万ユーロ(約1215万)を使っています。そしてこれはたった1人のライダーの値段なんです。そしてタイヤがミシュランに変わったことでもお金がかかりました。新しいタイヤは異なるグリップキャラクターを持っており、シャーシを異なる形で機能させるためにファクトリーは多くの作業を行う必要があったんです。過去2シーズンでこれほどまでに多い本数のスイングアームを見たことはありませんよ!(※スペック違いの)将来的にテクニカルレギュレーションが、今の状態で出来る限り長い間安定しているということを願うだけですね。そうすれば技術的に余計な出費はないでしょう。」

マシンに関わるコストが近年上がっているなかで、コストとして下がった部分がある。それはライダーの給料だ。特にファクトリーではないライダーに関しては。

IRTA会長/Tech3 エルヴェ・ポンシャラル

「金融危機で良いライダーのコストが50%から60%下がりました。しかしこれはトップ5人のライダー以外の話です。金融危機の前は100万ユーロ(約1億2000万)以下で良いライダーを確保するのは難しかったですが、現在はかなり安くなってますね。」

ほとんどのMotoGPの独立チームはドルナによって大きく助けられている。LCRとテック3はそうした援助が厚くなったことをすぐには感じないかもしれない。チェッキネロは未だに2015年にCWM FXがスポンサーを下りた事によって発生した借金を支払っている。

ポンシャラルはこうした製作で増える数百万ユーロは、値上がりしているマシンのリース費用で消えるという。これは彼が今までヤマハのバイクをバーゲンプライスで使用していたからだ。ドルナの独立チームへの資金援助は、ファクトリーへの援助を減らすことからも成り立っている。そのためヤマハは、その不足分をポンシャラルから回収することで損失を埋めている。ただポンシャラルがそれを良しとしなければ、彼はさらに良い条件を提示するメーカーを選ぶ事が出来る。KTMは2018年から独立チームへのマシンのリースを開始し、スズキとアプリリアもこれに続くだろう。

ドルナは現在の6メーカーを維持し、その各メーカーが2台のファクトリーチームライダー達と、2台の独立チームライダー達を走らせることで、グリッドに24台のバイクを走らせることを目指している。現在の台数は、この目標から僅かに1台足りないだけだ。

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