★MotoGPでも”オイル燃焼”によるパフォーマンスアップが可能なのか?

前回お届けしたDucatiの”サラダボックス”の中身は何か?というインタビュー記事の後編です。今回はF1で問題になっている”オイル燃焼”によるパフォーマンスアップがMotoGPでも可能なのか?という話題を中心に、マニアックな話が飛び交います。

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Ducatiの”サラダボックス”についての話の後、MotoGPの技術ディレクターであるコラード・チェッキネッリと”オイル燃焼”、意図的に弾性をもたせたエアロダイナミクス、燃料タンクのデザインについて話をした。

 

Q

”オイル燃焼”はオイルを燃料のように故意に燃焼させることでさ、パフォーマンス上のアドバンテージを得るものですが、今年F1で大きな話題となってきました。理論的にはMotoGPでも可能なのでしょうか?」

コラード・チェッキネッリ

理論上は可能でしょう。もしやっているとして、F1でこの”オイル燃焼”を行う理由は燃料制限によるものでしょうね。彼らは燃料の制限、燃料フローに関しても制限があります。ですから従来の燃料ラインを通らない何かを燃焼させれば、パフォーマンス上のアドバンテージとなるでしょう。彼らがこうした”オイル燃焼”を行っている最大の理由は、オイルの中にアンチノック剤を添加出来るからでしょう。そうすれば高い圧縮比で走る事が出来ますからね。燃焼出来るオイル量は多くありませんから、あまりエネルギー量の上で違いを生み出せるとは思いません。ただ最後に加えるアンチノック剤の種類によって大きな違いを生み出せるでしょう。そして、これがモーターサイクルではこの技術を使用しないほうが良い理由で、モーターサイクルのエンジンはターボではありませんから、こうしたことをする理由があまりないんです。F1では禁止されている”オイル燃焼”がモーターサイクルでは行われないだろうと考えるもう1つの理由は、モーターサイクルでこれを実現する実用的な方法がなく、燃料の使用量もそこまで厳しくないですから。それに私は専門家ではありませんが、ブローバイガスと一緒に燃焼させることが出来るオイルの量というのでは十分ではないでしょう。ですから意図的にオイルを”漏らす”ようにしなければいけません。F1ではターボベアリングという機構を持っていますが、これはモーターサイクルにはありません。」

 

Q

「ということは実用的にオイルを燃焼室内に届けるということが、モーターサイクルにおける最大の問題になるということですね。」

コラード・チェッキネッリ

「ええ。明らかにオイルインジェクターを設けることは出来ません。ですから、どこで行われる”オイル燃焼”が禁止となるのかを見極める事が必要で、F1ではいくつもの実用的なオプションがあるのです。F1はターボですし、ベアリングをオイルで冷却する必要がありますから、この部分でオイルが”漏れる”ということは問題ないんです。それとは別に、ピストンのブローバイをコントロールしようとする事も可能です。ただしこれは複雑ですし、バイクなら尚更です。車はしっかりとしたドライサンプの技術がありますので、クランクケース内は真空ですから圧力は大気よりもだいぶ低いんです。しかし、理論上はピストンでこの真空状態をコントロールして、ブローバイにオイルを届けさせるという事が可能です。これは車でも恐ろしく複雑なことですが、バイクではなおさらです。ですから、色々とバイクでは実際無理だろうと思う理由があるんです。何よりもまずそこまで役に立ちませんからね。メインの理由ではないと言いましたけど、車のほうが燃料消費に関するレギュレーションは厳しいですから。私が知る限りMotoGPで燃料消費に厳しいのはスピルバーグのみです。ですから、モーターサイクルの場合、燃料上限をそこまで気にすることはないんです。22Lというのは十分な数値ですよ。」

 

Q

「もう1つの”オイル燃焼”による目的として、オクタン価の高い添加物を届けるというものがあります。例えば予選においてパフォーマンスの嵩上げになるというような事でしょうか。」

コラード・チェッキネッリ

「もし私がMotoGPエンジンをデザインするとして圧縮比を高めることが必要なのであれば、アンチノック剤をオイルに添加するよりは、燃料特性について作業をするでしょう。そして”オイル燃焼”を実現する方法を考えるでしょう。私にはこれは恐ろしく複雑なことのように思えます。圧縮率は自然吸気エンジンではそこまで問題にはならないんです。これはモーターサイクルの世界ではやり過ぎということになってしまうと思います。もう1つ問題があって、これは私はF1でどのように解決しているのかわかりません。でも燃えたオイルというのは燃えカスが残るんです。ですからしっかりと燃焼する組成のオイルにする必要があるんです。アンチノック剤を加えたオイルは、クリーニング機能、洗浄機能も持たせた組成として、燃えカスが残らないようにする必要があります。これは非常に複雑だと思いますね。MotoGPでやっているチームがあるかもしれませんが、到底無理だと思います。F1では私が読んだ中では予選においてさらなるスピードを与えてくれるようです。これが私に、ゴールはさらなる燃料を確保することではなく、アンチノック剤を使用することだと考えさせるもう1つの理由です。ですから高い圧縮比で限られた周回を走る事が出来ますが、ゴールとしては限られた燃料の中で0.5%燃焼エネルギーを増すことではなく、アンチノック剤をさらに加える事にあるでしょう。」

 

Q

「MotoGPエンジンのオイル容量というのは、だいたいどれくらいなんでしょうか。」

コラード・チェッキネッリ

「恐らく1〜2Lでしょう。別体式のリザーバーとバキュームクランクケースからなる、完全なドライサンプシステムは備えていないと思います。クランクケースが2つに別れており、動いているほうのパーツからオイルを除去し、もう一方にオイルを移動させるという形式でしょう。しかしクランクケース内はしっかりした真空状態ではないと思います。もしかすると、ピストンのブローバイプレッシャーと相殺することを考えるかもしれません。つまり高い圧縮率でもないが、真空状態でもないということです。これはどちらかというと車の技術ですね。車には別体式のリザーバータンクがあって、高圧ポンプがエンジン内にありますから。あと、車では遠心力によってオイルを吸入したい部分からオイルが移動してしまいます。ですから適切な吸入、循環のシステムがないとベアリングが焼き付いてしまいます。バイクではリーンすることによって、こうした問題が発生しません。これが複雑さと重量に加えて、バイクでオイル吸入に関する技術が限界まで開発されないもう1つの理由となります。ロードカーでトラックを走れば、まず最初に問題になってくるのはコンロッドベアリングの不良です。これはオイルポンプが十分にオイルを吸入しないことによるものです。トラック走行で発生する横Gによってオイルがエンジンのサイドからサイドに移動するようになってしまうのです。バイクの場合はリーンのお陰で、オイルレベルはコーナリングをしていない時と全く同様に保たれます。」

 

Q

「チームはハンドリングに与える影響の問題から、定期的に燃料タンク内部のデザインを変更していると思いますか?別の言い方をすれば、異なるサーキットや天候によって燃料重量をどこに置くかをデザインしているのでしょうか。」

コラード・チェッキネッリ

「異なる状況によって燃料タンクを変えているとは思いません。また何らかの理由で可動するデバイスによってタンクのチューニングをしているとは思いません。例えば可変式バッフルによって特定の容量をタンクの前後に移動させているとは思いません。ただ、もちろん原理上は可能です。異なる重量配分を持つことによるアドバンテージはあります。例えば予選で少しの燃料しか積んでいない時、燃料の理想的な位置というのは、フルタンクで走る場合とは異なるでしょう。またウェットコンディションでは、より多くの荷重がリアに掛かるようにしたいかもしれません。ですから、より多くの燃料がリアよりに来るような”ウェットコンディション用タンク”なんていうのもあり得るでしょう。ただ、私が知る限りはチームは1種類の燃料タンクだけであり、皆が出来る限り燃料を後方に、低い位置に置こうと努力しています。基本的にはライダーの真下ですね。」

 

Q

「F1では幾度も意図的にウイングに弾性を持たせる事を禁止しています。これは荷重テストを利用して、速度に応じて角度が変化するように作られているウイングに関してです。荷重テストがMotoGPのウイングフェアリングにも必要なのでしょうか?」

コラード・チェッキネッリ

「一般的な話として私はそうは思いません。MotoGPでは問題になりません。エアロダイナミクスのディメンションに関して定めたレギュレーションを考えると、柔軟性に関しては問題とは思いませんね。」

(Photo courtesy of michelin)

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