フレーム
まずバイクの骨格となるフレームだが、ホンダはプレシーズンテストの中でおそらく3種類のフレームをテストしていたようだ。各テストに登場したバイクのフレームを同じようなカットで比べていくと、アルミ溶接面が異なっていたり、フレームの上下幅が微妙に異なっているのがわかる。[adchord]
2021年型RC213Vの課題、持病としては、前輪荷重が多い車体バランスと、リアグリップの不足だった。ライダーのコメントを整理すると、今年のRC213Vはこの部分を大幅に改善してきているようで、車体ジオメトリの見直し、具体的にはエンジン搭載位置を変更してきた可能性が高そうだ。
2021年のプレシーズンテストではホンダライダーの転倒が多く、2021年型RC213Vの神経質な性格が見て取れた。今まではフロント周りが神経質なバイクでも、マルク・マルケスが超人的に転倒をセーブしながら乗りこなしていたが、2021年に怪我から復帰した時に、もはやマルクにこの神通力が失われていることは明らかだった。[adchord]
一方、2022年型はリア荷重が増して乗りやすくなったというライダーコメントも目立ち、何よりもホンダライダーの転倒数は明らかに昨年よりも減っている事実がある。
エンジン
エンジンはコロナによる開発の凍結が溶けたことで、各メーカーともにアップデートをしているはずだが、ホンダも例外ではないはずだ。
今のところトップスピード面ではライバルに比べて目立った印象は無いが、エンジン搭載位置が(おそらく)変化、フレームの形が変化しているということは、エンジン上部にあるエアボックス、エアインテークの形状も大きく見直しとなり、エンジン性能も基本的には変化(向上)しているはずだ。
ライダーからエンジンに関するコメントはあまり出ていないが、総合すると全体的に扱いやすくはなっているようで、パワーデリバリーがユーザーフレンドリーになっている可能性がある。エキゾーストレイアウトも大きく変わり、今までセンターから出ていたエキゾーストはシートカウルをオフセットした位置から顔を出している。[adchord]
なお、このシートカウルも2021年型と比較すると巨大化しており、現時点では確認が取れないものの、Ducatiがサラダボックス内に搭載しているという噂のマスダンパーを搭載していても不思議ではないだろう。
エアロパッケージ
外観上すぐにわかりやすいのはカウル形状の大幅な変化だ。既存のフロントフェアリングは必要最低限の大きさといった印象で、MotoGPグリッド内でもコンパクトさが目立つカウルだった。
2022年型のカウルは初披露時に大きな話題になるほど既存の形状とはかけ離れており、ウイングレットに関しても今までの形状より複雑になり、サイドカウルにDucatiのようなコの字型のウイングが付いたバージョンもテストされていた。
実際のところの効果のほどは不明だが、リアに重心位置が動いた車体に対して、フロント周りのダウンフォースを調整したり、加速時にフロントタイヤが電子制御をあまり効かせずとも浮き上がりにくくする狙いが基本的にはあるはずだ。
総括
全体的に大きく姿を変えたRC213Vだが、実際にテストでは転倒も少なく、トップスピードこそDucati、アプリリア等に敵わないものの、扱いやすさは大きく向上していそうだ。カタールで開幕戦を迎えてどうなるかという部分だが、少なくとも今までよりもユーザーフレンドリーなバイクにはなっていそうだ。
予選でのタイムがどの程度出てくるかは何とも言えないところだが、安心感が増した車体でポル・エスパルガロが好タイムを記録するなど、ライダーの安心感が増加、前後輪の荷重バランス見直しによって安全にプッシュ出来るようになっていると仮定すると、一発のタイムも侮れないかもしれない。
レースディスタンスに目を向けると、リアグリップが増したと言われているため、立ち上がりでタイヤを無駄に空転させることなく、レース終盤までタイヤを温存出来る可能性がありそうだ。
(Photo courtesy of michelin, HRC)