レース前の混乱
レースではサイティングラップでファビオ・クアルタラロが転倒しそうになるほど雨が強まった。ホワイトフラッグがサイティングラップ中に振られ、ライダーはバイク交換が許可されるが、すべてのライダーがピットレーンに入ったことでレースはレッドフラッグとなり、開始時間が8分後に再設定される。
これでレースは1周少ない26周で再スタートとなった。このリスタートで多くのライダーはウェットタイヤのマシンでコースイン。この時点でテストライダーのサヴァドーリのみがスリックタイヤのマシンでコースインした。
数名のライダーがそのままグリッドに向かう中、多くのライダーが再びピットレーンに入り、スリックタイヤのバイクに乗り換え。そしてこのライダー達はグリッドをスタート前に離れ、ウォームアップをピットレーンからスタートしたということで、新ルールにより、オリジナルのスタート位置からのスタートとなるが、レース中にダブルロングラップペナルティーを受けることとなった。
グリッドに留まったライダー達は映像を見ると9名で、この9名がウェットタイヤのマシンでレースをスタート。その中には優勝したヨハン・ザルコ、アレックス・リンス、ジャック・ミラー、マルコ・ベッツェッキ、フランチェスコ・バニャイア、ルカ・マリーニなどが含まれていた。
レーススタート直後は雨がやんでいたようだったが、4周目あたりから雨が再びトラックを襲う。スリックタイヤでスタートしたライダー達は雨の中でダブルロングラップペナルティーを消化しつつ、6周目を終えた時点でマルク・マルケス、アレックス・マルケスがピットインしてスリックタイヤのマシンからウェットタイヤのマシンに乗り換え。
ウェットタイヤでザルコがレースをリードして優勝
この7周目時点ではアルデゲルがスリックでレースをリードしていたが、スリックタイヤのライダーが一通りバイクを乗り換えた後に、ウェットタイヤで首位に立ったのは地元フランスのヨハン・ザルコだった。
ヨハン・ザルコはこの時点で後続のミゲル・オリヴェイラに約4秒の差をつけていたが、後続へのリードを失うことなくレースを消化。途中マルク・マルケスが2位に浮上した時点での差は8秒。しかしこの差をレース終了まで拡大し続け、最終的に優勝した際のマルク・マルケスとの差はなんと19秒もの大差だった。
ヨハン・ザルコは地元フランスGPでフランス人として最高峰クラスで優勝。これは1954年以来の歴史的快挙となった。優勝後は満員のファンの前でバックフリップを見せ、最高の形で優勝を締めくくった。なお、ヨハン・ザルコの優勝は2023年オーストラリアGP以来となる。
2位はマルク・マルケスでチャンピオンシップのリードを拡大、3位のフェルミン・アルデゲルは嬉しい決勝での初表彰台となった。4位にはペドロ・アコスタ、5位にマーべリック・ビニャーレス、6位はワイルドカードで結果を残した中上。7位ラウル・フェルナンデス、8位ファビオ・ディ・ジャンアントニオ、9位ロレンソ・サヴァドーリ、10位小椋 藍となった。
優勝ヨハン・ザルコ
「信じられません。序盤に何が起きていたのかはわかりませんでしたね。最終ラップは本当に長く感じました。本当にタフでしたが魔法のような結果です。レインタイヤのリアを摩耗させたくなかったので序盤はタイヤを温存していたんです。雨が強まってタイヤを温存することが出来ましたが、マルクが後ろから迫ってきていましたが、彼はおそらくタイヤを摩耗させてしまったのかギャップをコントロール出来ました。本当に信じられないようなレースでした。」
2位マルク・マルケス
「クレイジーなレースでした。今回のレースで新ルールが多くのライダーにとって明確になったでしょう。ただ自分はチャンピオンシップリーダーの弟の戦略を真似ていました。結果的に正しい戦略でしたが、今日のヨハンは速かったですね。8秒差があった状況でプッシュしていきましたが、差が広がっていったので、弟との差を維持する走りに切り替えました。残念ながら弟は転倒してしまいましたけどね。こういった日曜はポイントを多く失う可能性がありますが、自分はすでに2回ミスをしています。今日はしっかりと完走出来て大きな自信を感じています。」
3位フェルミン・アルデゲル
「今朝は天気予報を見て良いレースが出来ないと思っていました。このクラスでウェットの経験は少ないですから。ただ、レースが始まると徐々にフィーリングが良くなってきてペースを発揮出来ました。3位、そしてMotoGPクラス初の決勝表彰台を獲得出来ました。Ducati、Gresiniチーム、家族に感謝します。」