ヤマハ発動機はミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリにて、V4エンジンを搭載したYZR-M1のプロトタイプマシンを初公開した。2025年シーズン第16戦のタイミングでの早期発表は、マシン開発におけるヤマハの“より攻撃的な姿勢”と、技術革新への長期的なコミットメントを鮮明に示すものだ。
この新型マシンは、今週末のサンマリノGPでワイルドカード参戦するヤマハ・ファクトリー・レーシングのテストライダー、アウグスト・フェルナンデスがライディングを担当。さらにレース翌日の9月15日(月)には、ファビオ・クアルタラロとアレックス・リンスが、公式MotoGPテストでこの新型V4マシンを公の場で初めて走らせる予定だ。
V4プロジェクトの背景と狙い
ヤマハのV4プロトタイプは、日本(YMC)と欧州(YMR)の共同体制のもと開発が進められており、プロジェクトリーダー増田和宏氏、テクニカルディレクターのマッシモ・バルトリーニ氏、そして開発責任者の住吉貴浩氏らが記者発表に登壇。開発の進捗状況、今後のフェーズ、そして2026年に向けた技術戦略について説明が行われた。
フェルナンデスは2026年・2027年シーズンに向けてヤマハとの公式テストライダー契約を締結済みであり、今回のワイルドカード参戦は、プロトタイプの“実戦環境下におけるストレステスト”を目的としている。週末のパフォーマンスは開発方針に直接影響しないが、走行データの収集が最大のミッションだ。
鷲見祟宏(ヤマハ発動機 モータースポーツ開発部長)
「V4エンジンと新型車体の同時開発という非常にチャレンジングなプロジェクトを進めてきました。これはチームだけでなく、会社全体が一体となって取り組まなければ実現できないものです。V4プロジェクトはまだ開発途上ですが、確実に前進しています。今回の公開とフェルナンデスの実戦投入によって、技術的選択肢がさらに広がると考えています。将来的に最も競争力のある構成を選ぶことが重要です」
パオロ・パヴェジオ(ヤマハ・モーター・レーシング マネージングディレクター)
「日本とヨーロッパ、そして各技術パートナーが一丸となった協働体制が、このプロジェクトの中核です。開発スピード、機動力、そしてグローバルな資産の活用が鍵となっています。アンドレア・ドヴィツィオーゾとアウグスト・フェルナンデスという2人のテストライダーが、それぞれの強みを発揮してこの『Plan V』に大きく貢献しています。特にフェルナンデスは、実戦レベルの高い走行でV4の限界を押し上げてくれています」
増田和宏(プロジェクトリーダー)
「ダイノテストからサーキット走行評価、そして今週末は初のグランプリ環境での実走という段階的な開発計画を進めてきました。月曜のIRTAテストでは、クアルタラロとリンスによるさらなるデータ収集を予定しています。全てのフェーズにおいて綿密な検証を行っており、現在の進捗は計画通りです。今後はセパンやバレンシアでの追加テストを計画しています。」
マッシモ・バルトリーニ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング テクニカルディレクター)
「今回の焦点はパフォーマンスそのものではなく、レース週末のリアルな条件下での“運用検証”です。パワーデリバリー、シャシーバランス、エアロダイナミクスを一体として設計し、実際の走行環境でどう機能するかを見極めます。将来的な狙いは2026年仕様の競争力あるV4パッケージの構築です」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(テストライダー兼パフォーマンスアドバイザー)
「マレーシアで最初に乗ったときから非常に好印象でした。毎回走行ごとにフィーリングが向上していて、ポテンシャルを強く感じています。ヤマハのエンジニア陣との連携も素晴らしく、フェルナンデスとの共同作業も非常に実り多いです。彼とのフィードバックが一致していることは大きな強みです」
アウグスト・フェルナンデス(ヤマハ・ファクトリー・レーシング テストライダー)
「このような大きなプロジェクトに関われて本当に光栄です。新型マシンを初めてレースの舞台で走らせることは自分にとって特別な経験になります。今週末は、このV4マシンの長所と短所を明確にするための重要な機会。実戦の中でどこまで通用するかを見るのが楽しみです」