ホンダは、環境負荷低減に向けた取り組みの一環として、バイオ由来素材やリサイクル材の採用を拡大している。中でも注目されているのが、非可食トウモロコシを原料とした高性能エンジニアリングプラスチック「DURABIO™(デュラビオ)」の導入だ。
この素材はアフリカツインに初採用された後、現在では26年型(26YM)モデル6車種にまで拡大。ハンドルバーカバーからカウル全体に至るまで、各部品に使用されている。

デュラビオ™とは何か?
DURABIO™は、三菱ケミカルグループが開発したバイオベースエンジニアリングプラスチック。再生可能資源である非可食トウモロコシや小麦から生成されたイソソルビドを主成分とし、光学的透明性、耐傷性、耐衝撃性、UV耐久性に優れている。塗装を不要としつつも高級感ある外観を実現できるため、製造工程の簡略化とCO₂削減に寄与している。
欧州ではアドベンチャーモデルのCRF1100Lアフリカツイン、ツアラーのNT1100、多用途モデルのNC750X、スポーツツアラーのCB1000GT、SUVバイクのX-ADV、マキシスクーターのフォルツァ750といった主力モデルにすでに採用されており、モーターサイクルメディアから高い評価を得ている。
採用モデルの拡大と進化
デュラビオ™は、2024年3月発売のCRF1100Lアフリカツインのウインドスクリーンに世界初採用されたのを皮切りに、X-ADVのスカートカバーとウインドスクリーン、フォルツァ750のハンドルバー中央カバーとフロントサイドカウルへと広がった。
25年型(25YM)NT1100では、フロントカウルの一部にデュラビオ™を採用。NC750Xでは、ミドルカウル、サイドカバー、リアサイドカウル、ウインドスクリーンに使用され、さらにアースブラックおよびアースアイビーアッシュグリーンの2色で、着色デュラビオ™を世界で初めてボディワークに採用した。
そして、EICMA2025で発表された26年型CB1000GTでは、ウインドスクリーンに採用されている。
プラスチック使用削減の多角的アプローチ
デュラビオ™だけでなく、ホンダは他のリサイクル材も積極的に導入している。例えば、自動車部門で使用されてきたリサイクルバンパー材を、25YM NC750XやX-ADVのラゲッジボックス、フォルツァ750のシートベースへと展開。バイク向けとしては難しいとされてきたが、設計最適化により適用が実現した。
さらに、家庭用電化製品や自動車部品の製造工程で発生する端材から得られるプレコンシューマーリサイクルPP(ポリプロピレン)も導入。これは粉砕・再構成・ペレット化され、新素材と同等の物性を持たせた上で、X-ADVとフォルツァ750では15点以上の部品に使用。新たに26YM CB1000Fでも、リアマッドガードとシート下パネルに適用されている。
サステナブルなモビリティ実現への5つの原則
ホンダは、「取る・作る・捨てる」という直線型モデルから、循環型バリューチェーンへの移行を目指し、以下5つの資源循環原則を掲げている。
- ビジネスイノベーション:製品ライフサイクル全体で素材活用を最大化するリサイクル志向型システムの構築
- 先進リサイクル技術:経済性と環境性を両立するリサイクル技術への投資
- データトレーサビリティ:CO₂排出のライフサイクル追跡と回収率の向上
- サーキュラーデザイン:分解・再利用しやすい製品設計と高リサイクル性素材の選定
- 循環型バリューチェーン:サプライチェーン全体で再生資源の安定的確保と再利用を推進
現在、新車に使われる原材料のうち約90%が新たに採掘されたものであるというデータもある。ホンダはこうした現状を踏まえ、再生可能かつリサイクル可能な素材への切り替えを進めることで、CO₂排出削減、資源保全、資源枯渇リスクへの対応を図っている。
デュラビオ™などの先進素材をモーターサイクルラインアップに本格導入することは、「移動の喜びと自由」を提供するというホンダのブランドミッションと、環境配慮の両立を象徴する取り組みだ。
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近はまた乾式クラッチのDucatiに乗りたいと思っています。