ヤマハの2021年ラインナップ発表から予想されるMotoGP2021年シーズン

タイトルが2020年の間違いなのでは?と思ってしまうのも無理はない。まだ2020年シーズンが始まる前だが、ヤマハはマーべリック・ビニャーレス、ファビオ・クアルタラロと相次いで契約を結び、ファクトリーチームの2021年、2022年のライダーラインナップを決定した。

これによってバレンティーノ・ロッシが2021年にファクトリーシートを失うことが確定したわけだが、2021年のライダーラインナップについての憶測が、2020年のシーズン開幕前に始まっている。

ロッシの引退とVR46のMotoGP参戦はいつか?


ロッシがファクトリーシートを失うとなると、自らのVR46でMotoGPに参戦するのでは?という話も出てくるが、サテライトチームであるPETRONAS Yamaha Sepang Racing Teamはヤマハ発動機と2021年までYZR-M1のリース契約を結んでいることを考えると、ロッシが2021年も現役続行する場合、まずはPETRONAS Yamaha Sepang Racing Teamに移籍することが予想される。

各チームのドルナ、IRTAとの契約更新が2022年〜であることを考えると、VR46がMotoGPに参戦するのは早くても2022年からになりそうで、その際にVR46がPETRONAS Yamaha Sepang Racing Teamと1つになるか、それぞれ独立したチームとなるのかはわからない。

2022年からロッシは現役を引退してチームマネージャーとなるのか、チームマネージャー兼選手として参戦するのかは、ロッシ自身の戦闘力によるだろう。

ヤマハの早期契約はなぜ起きた?


2020年シーズン開始前に2021年以降のラインナップを決定したヤマハ。その背景には年々加速する各チームの有力な若手ライダーの争奪戦がありそうだ。昨シーズン後半からDucatiがマーべリック・ビニャーレスを狙っているというのは色々な形で噂として流れており、ロッシ同様に引退が噂されるアンドレア・ドヴィツィオーゾに変わるエースとして、Ducatiはスピードがある若手ライダーを探し続けている。

昨シーズンの走りを見ると、ホンダとマルク・マルケスという絶対王者を倒せる可能性がありそうなのは、Ducatiのアンドレア・ドヴィツィオーゾ、ヤマハのマーべリック・ビニャーレス、ファビオ・クアルタラロくらいで、Team SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)のアレックス・リンス、Pramacのジャック・ミラーは絶対的な速さと安定感にかける印象だ。

MotoGPタイトル獲得はDucatiだけでなくヤマハにとっても悲願であるわけで、仮に2021年以降もバレンティーノ・ロッシ、マーべリック・ビニャーレスと契約更新をしてしまった場合、2021年からファビオ・クアルタラロという、今最も注目を集める若手を他メーカーに奪われる可能性があった。

そうした背景を考えると、シーズン後半から調子を上げてきたマーべリック・ビニャーレス、今後数年でマルク・マルケスからタイトルを奪還出来る可能性を感じさせるファビオ・クアルタラロというチーム体制をヤマハが選択したのは自然な成り行きだろう。

ヤマハ以外のライダーラインナップはどうなるか

ドヴィツィオーゾの後釜を探す必要があるDucati


ヤマハのファクトリーチームのラインナップが決定したが、他の各メーカーはどうなるのか?ドヴィツィオーゾがいつ引退するのかはわからないが、3月生まれのドヴィツィオーゾは2020年シーズンで34歳、2021年シーズンは35歳だ。ロッシのように40歳まで現役というわけにはいかないだろうから、Ducatiは2021年以降からタイトル獲得に向けて活躍出来る若手ライダーが必要となる。

現在ファクトリーチームに収まっているダニーロ・ペトルッチは2020年シーズンで30歳、いずれはファクトリー昇格有力とされるPramacのジャック・ミラーは2020年シーズンで25歳。今年Avintiaから参戦するヨハン・ザルコは2020年シーズンで30歳と、ミラー以外は年齢が高めのDucati陣営だけに、仮にミラーを2021年にファクトリーに迎えないとなると、他メーカーの若手を獲得するしかないが、その選択肢はかなり狭い。

※現在MotoGPでトップ選手として活躍する若手はTeam SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)のジョアン・ミル(今年で23歳)、アレックス・リンス(今年で25歳)、化ける可能性があるのがレプソル・ホンダのアレックス・マルケス(今年で24歳)で、KTMのブラッド・ビンダー(今年で25歳)は他メーカーへ移籍の可能性は低いだろう。

リンス、ミルの流出防止が最優先のスズキ


スズキはマーべリック・ビニャーレスを獲得した2015年から若手を育てる戦略を取り、マーべリック・ビニャーレスがヤマハに移籍した後は、アレックス・リンス、ジョアン・ミルを育ててきた。ストレートスピードは劣るものの、優れたハンドリングを持つGSX-RRの総合的な戦闘力は高く、リンスもMotoGPクラスで優勝をするなど活躍をしている。

予選順位が悪く、決勝レースにおける成績が安定しないなどの問題はあるものの、アレックス・リンスは着実に成長しており、怪我に泣かされながらジョアン・ミルも昨年成長した姿を見せた。仮にDucatiが契約金額でどちらかのライダーを釣り上げようとした場合、予算面でスズキが対抗出来るとは思えないが、チーム環境の整備、GSX-RRの性能を磨き上げることで、両選手の流出防止をすることになるだろう。

アレックスの成長が鍵となるホンダ


マルク・マルケスがレプソル・ホンダを離れることは到底考えられないため、マルクの弟であるアレックス・マルケスが2021年以降もホンダに残留出来るかどうかが問われるが、2020年シーズンに成長した姿を見せることが出来れば、チーム体制を考えてもホンダがアレックス・マルケスと2021年以降も契約を継続する可能性は高いだろう。

また今年ホンダで大活躍を遂げたとすると、Ducatiが高額な契約金をぶら下げて釣り上げにかかる可能性もあるが、マルクの弟であるという点を考えても、ホンダライダーとなってしまったアレックス・マルケスを釣り上げるのは相当に困難なはずだ。

KTMはエスパルガロ、ビンダーのラインナップを保持か


KTMは開発ライダーにダニ・ペドロサ、エースライダーにポル・エスパルガロ(今年29歳)、成長株としてブラッド・ビンダー(今年25歳)を抱える。サテライトのテック3にはイケル・レクオーナ(今年20歳)、ミゲル・オリヴェイラという若手が控えており(今年25歳)、順当にマシン開発を進め、若手を成長させるという戦略を取るだろう。

イアンノーネのドーピング疑惑に揺れるアプリリア


アプリリアは2022年からファクトリー体制での参戦が予想されているが、アレイシ・エスパルガロ(今年で31歳)のチームメイトが誰になるかというのは、セパンテスト前後までわからない。

現在ドーピング疑惑で資格を停止されているアンドレア・イアンノーネが参戦出来ないとなった場合、おそらくテストライダーのブラッドリー・スミスが2020年に参戦すると予想されるが、2021年以降どのようなラインナップでいくかは頭が痛いところだろう。

2021年シーズンからの大きな動き

こうして見ていくと、ヤマハの2021年ラインナップがマーべリック・ビニャーレス、ファビオ・クアルタラロと順当に決まったところで、2021年に予想される大きな動きは、ロッシのペトロナス移籍、年齢が高めの選手で構成されるDucatiファクトリーのミラー採用、アプリリアのイアンノーネ後釜探しだ。

おそらくホンダに関してはアレックスがレプソル・ホンダで契約を更新、クラッチローの引退の可能性がある程度。スズキ、KTMに関しては大きな動きはないと予想される。

それにしても、この時期で2021年のライダー移籍動向を予測するというのは妙なものだ。

(Photo courtesy of yamaha-racing)

knbn

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