今年序盤は昨年末の活躍から考えると、明確に相対的なパフォーマンス低下が見られたKTM。しかし新型シャーシを投入したことを皮切りに結果を改善。直近では地元オーストリアでブラッド・ビンダーが雨の中をスリックで走りきって、劇的な優勝を手にしている。他社に比べた開発スピードの速さを武器に、後半戦もさらにライバルに接近していくことが予想される。
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昨年から今年にかけて明確にパフォーマンスが低下した

KTMシャーシ開発エンジニア ウォルフガング・フェルバー

「開発初期の3年から4年は、ひたすらトップに近づくプロセスでした。2020年の結果を考えると今年の期待は大きかったです。ですからカタールでスピードがないのを目の当たりにして驚きました。しかし、そこから3戦、4戦で修正が出来ました。これはKTMの強みの1つでもある開発スピードの速さ、モチベーション、メンタリティーによるものです。ドイツGP予選6位 ミゲル・オリヴェイラ「6番手スタートは悲劇的な状況ではない」

昨年から今年序盤にかけては、初めてはっきりとパフォーマンスが低下した瞬間でした。しかしKTMの開発チームはそこで不安がらず、状況の改善を進めていきました。これからもチャンピオンシップタイトル獲得という目標に向けて走り続けていきます。今後はあらゆる環境、あらゆるグリップ、あらゆるトラックでも戦闘力を発揮したいですね。そしてさらに予選を改善していきたいです。決勝レースのグリッドが悪いと、表彰台獲得は難しいですからね。」
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MotoGPライダーは繊細

MotoGPライダーは極めて繊細です。タイヤのグリップ、タイヤの個体差という話題が出ていますが、私の意見も彼ら(ホンダ、Ducati)と同様です。MotoGPライダー達は実に実に繊細で、僅かな違いを感じとることができます。しかし、その差というのは例えばグリップに関しては、コンディションによって大きく変わるものです。外気温、湿度、路面温度などは1日の中で刻々と変わります。こうしたことがグリップのフィーリングに影響を与えます。」

「ミシュランに限らず我々エンジニアも、MotoGPという世界最高峰の舞台で、常に最大限の力で、最大限の性能を発揮しようとしています。ですから、常にすべてが最高レベルの状態で揃い、最高のパフォーマンスを発揮するのは簡単なことではありません。」
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エンジニアもバイクに乗らないだけであって、常に限界までプッシュを続けています。ですから、エンジンの限界性能を突き詰めていく中で、ダイノ上でエンジンをブローさせることもあります(笑)これはKTMだけに限った話ではないと思いますよ。常にライダー同様に限界までプッシュをしているんです。」

この先5年、6年程度で大きくバイクは変わらないでしょう。使用出来るタイヤ、テスト出来るトラックなどが限定されているわけですから、開発には常に手枷がある状態です。その中で極端な何かをすることは、全く間違った方向に進んでしまうリスクを多分に含んでいるんです。」

(Photo courtesy of michelin, KTM)