ロッシ、マルケスの因縁の接触劇から10年のマレーシアGP 2015年の両者の主張「ロッシに蹴られた」「足がステップから外れただけ」を振り返る MotoGP2025

ロッシ、マルケス確執の舞台 セパン

今週末の舞台セパンにはマルク・マルケスの姿はない。だが、ここは2015年にバレンティーノ・ロッシとマルケスの攻防がターン14で決定的な局面を迎え、マルケスが転倒した場所である。陣営の主張は「ロッシが蹴った」「足がステップから外れただけ」と割れ、テレメトリは非公開のまま。確証も和解もないまま、2025年の現在まで確執が残っている。

2015年、ロッシは“通算10度目”への久々の王手

ロッシは2009年のタイトル以降、ドゥカティ期(2011–12年)の低迷を経て、2015年に再び最前線へ復帰。通算10度目(最高峰8度目)のタイトル獲得に現実味が宿り、シーズン序盤からチームメイトのホルヘ・ロレンソと激しいバトルが続いていた。

春から積み上がった緊張

2015年はタイトル争いとは別の観点で、マルケスとロッシの緊張感は高まっていた。アルゼンチンGP終盤の交錯でマルケス転倒、ロッシ優勝(レーシングインシデント扱い)。アッセンの最終シケインでは接触後にロッシがグラベルを突っ切って優勝(「接触時に前にいた」ことが判断軸)。フィリップアイランドは歴史的名勝負となり、マルケス優勝、ロレンソ2位、ロッシ4位。ロッシは11点差リードのままセパンへ向かったが、ロッシはマルケスが意図的にロレンソを助けていたという思いを持っていた。

セパン木曜会見と決勝7周目のターン14

セパン木曜会見でロッシは「マルケスはフィリップアイランドでロレンソを助けた」と名指しで批判。本人は後年「マルケスに泥を投げるつもりだった」と発言意図を明言している。発言は瞬時に拡散し、パドックの空気は二極化した。

迎えた決勝、7周目のターン14で両者が接触し、マルケスが転倒。見解は平行線のまま、テレメトリは非公開にとどまった。レースディレクションはロッシにペナルティポイント3を科し、累積により最終戦バレンシアは最後尾スタートが確定。ロッシ陣営のCAS(スポーツ仲裁裁判所)によるペナルティー執行停止申請は却下されたまま最終戦バレンシアを迎えた。

最終戦バレンシア——永遠に届かなかった“10度目”のタイトル

セパンでの裁定がバレンシアの構図を決定づけた。最終戦バレンシアはロレンソがポール・トゥ・ウィン。最後尾スタートのロッシは4位まで追い上げたが、最終ポイントはロレンソ330/ロッシ325。ロッシに求められた最低2位は、最後尾からでは現実味を失った。結果として、セパンの一件がロッシの“通算10度目”のタイトルの可能性を事実上、永久に閉ざした形となった。

10年を経た現在、当事者の一人であるマルケスは今週末のセパンに不在となる。それでも10年の節目ということで、2015年の両者の接触劇を思い返すファンは多いだろう。ロッシの“10度目のタイトル”は消えた一方で、マルケスにはキャリア通算で10度目のタイトルへ届く可能性が残る。