Team SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)の佐原氏が、2021年のチームについてスズキのサイト内で解説しているのでご紹介しよう。ダヴィデ・ブリビオが抜けた後のチーム体制、そしてスズキのGSX-RR開発なども興味深いが、サテライトチームの計画については進捗が気になるところだ。
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冬季のオフシーズン中はどのような作業をしていましたか?
佐原伸一
「バイク、パーツなどの準備を進めていました。日本でかなりの時間を作業しました。疲れましたがエキサイティングな時間でしたね。シーズン開幕前の作業はいつも大変なんですが、結果が見えるようになると満足感があります。」
ダヴィデ・ブリビオ離脱というビッグニュースがありました。
佐原伸一
「皆にとってショックだったのは事実です。しかし彼が新しい役割の中で成功してくれることを願っています。既に我々がすべき作業に集中していますよ。」
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新しいマネジメントプランを教えてください
佐原伸一
「皆にとってよりオープンな環境です。チーム運営に関わる内容は、チームのキーパーソンの間で共有されます。チームマネジメント委員会を設立し、その中にキーパーソンが所属、アイテムごと、セッションごと全ての問題をここで話し合います。メンバー間で情報を共有するようにしていて、こういう形でチーム運営をしようとダヴィデがチームを去ってから決めています。彼がいなくなったことの穴を十分補填出来ていると思いますよ。」
なぜ新しいチームマネージャーを入れなかったのでしょうか?
佐原伸一
「昨年ダヴィデがマネージャーだった時も、多くの意思決定は皆で話し合って決定していました。例えば私がプロジェクトリーダー、河内がテクニカルマネージャーですが、多くの内容をダヴィデを始め、チームの皆と話し合いました。様々なアドバイスや知識が共有されています。」
「ダヴィデが人間的な部分とテクニカルな部分でうまくバランスを取っていたのは理解していますから、新しいチーム体制になっても何ら心配はしていません。チームメンバー全てが、それぞれの役割の中で最高の仕事をしています。チームとしての意思決定には自信がありますし、それでチームの結束が強まっています。」
今年はタイトル防衛側でシーズンを過ごしますが、変化は?
佐原伸一
「特に影響はありません。目標はいつも同様で常に一回り強くなろうとしているんです。ですからチャンピオンシップで優勝してもそれは変わりません。正直ディフェンディング・チャンピオンだとも思っていませんしね。最高の結果を得ること、そして毎週末全力を尽くすことに集中しています。」
タイトル獲得が20年ぶりだったことを考えると、2021年に同じ結果を繰り返すのはプレッシャーですか?
佐原伸一
「よりプレッシャーを感じるかというと、そういうわけではありません。しかし常に競争力を発揮出来ることを証明することは重要です。タイトル獲得は究極の成功ですが、最終的な目標は変わりません。常にレースには優勝したいと思っているんです。ジョアン・ミルとアレックス・リンスは素晴らしい成功をもたらしてくれるとわかっていますが、更にこの2人でタイトル争いをしていきたいと考えています。全力を尽くします。」
開発凍結についてはどう感じていますか?
佐原伸一
「優先事項は常にバランスの良いバイクを作りあげることです。ベースラインのバランスを失うほどに、なにか特定の性能に集中しようとは思いません。スズキは常にバイクのベース部分を変えずに、少しづつ改良を積み重ねてきています。改善の余地はあり努力していきますが、エンジン開発が出来ないことは問題だと思いません。全チームが同じ状況ですし、スズキは昨年にGSX-RRと共に素晴らしい成績を残していますから。」
2021年型GSX-RRに関しての作業は?
佐原伸一
「例年どおり少しづつ改善していきます。大きなインパクトがある小さな改善点を常に探しているんです。これがスズキのやり方です。全体パッケージ改善のために、あちこちを少しづつ改善していくんです。」
テストライダーの影響はどの程度のものなのでしょうか?
佐原伸一
「シルヴァン・ギュントーリは非常に重要な役割を担っています。彼は開発と開発の方向性決定に大きな意味を持っています。彼は非常に頭が良くスキル溢れるライダーです。彼のラップタイムはMotoGPの現役ライダーと接近していますから、多くの情報を共有してくれます。そして彼の指摘は直感的で非常に正確です。」
「日本のテストライダーの津田もまた重要な役割を担っています。2人が今年はより多くの時間でバイクに乗れることを願っています。昨年はコロナの影響であまりバイクに乗れていませんから。」
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現時点ではスズキのサテライトバイク計画は保留なのですか?
佐原伸一
「そうですね。ダヴィデがサテライトチームの編成について各チームと話をしていましたから。しかし私自身もこの作業には関わっていて、各チームと話していました。ですから、彼がいなくなって私の作業が単純に増えたということです。引き続き作業を続けていきますが、現時点ではいつサテライトチームを持つということは明言出来ません。」
2020年のタイトル獲得の秘訣は?
佐原伸一
「GSX-RRが最高のバイクだから!とお答えしたいのですが、そうもいきません。しかし長年、最も安定してバランスの良いバイクを目指して開発してきました。しかしライダーのスキルと能力が大きな違いを生み出すのは事実です。ジョアン・ミルはまだスズキ2年目ながら、素早く学習し成熟しました。難しい1年の中で彼はうまくコントロールしたと思います。アレックス・リンスも同様に素晴らしいライダーで、怪我もありましたが優勝を持ち帰ってくれました。しかし今の結果に安住せず、ライダーもバイクも改善を続けていきたいと思っています。」
スズキは昨年からラインナップが唯一変わらないチームですが、アドバンテージになるでしょうか?
佐原伸一
「両ライダー共にタイトル候補ですから、同じラインナップ、同じチームで今年も挑めることは重要です。2人のGSX-RRに関する知識も増えていますし、ジョアン・ミルとアレックス・リンス2人で参戦出来ることが嬉しいですね。」
2名の強力なライダーのライバル関係はどうでしょう?
佐原伸一
「スズキはフィロソフィーとしてナンバーワンライダーを持ちません。ルーキーがチームにいたとしても全く対等に扱うようにしてきました。昨年ジョアン・ミルとアレックス・リンスは素晴らしいライバル関係にありました。共にプッシュし、結果を出してきました。この精神を引き継いで2021年も同じ雰囲気でチームを運営していきたいですね。」
ジョアン・ミルがゼッケンナンバーワンを使用せず、36にしたことについては?
佐原伸一
「私としてはナンバーワンをバレンシアで見ることが出来たので満足です。本当に最高の瞬間でしたが、既存の36を使用するという決断は全く問題ありません。あれは彼自身の選択ですから。しかし今年またナンバーワンを見たいものですね。」
昨年は日本とサーキットにいるチームが分断されていましたが、影響は?
佐原伸一
「時にはこれは大変なことですが、チャンピオンシップ優勝したことで、いろいろな成約にも関わらずお祝いが出来ました。ジョアン・ミルがタイトルを獲得した時、私は日本にいました。しかし浜松にいたスズキの皆も共にタイトル獲得を祝福することが出来ました。様々なお祝いの品、メッセージ、祝電があらゆるグループからかかってきました。これはスズキの自動車部門、船外機部門からもです。スズキにとって本当に大きな成果でしたからね。」
(Source: suzuki-racing)
(Photo courtesy of suzuki-racing)