オーストリアGP以前から噂レベルで出ていた、ホルへ・ロレンソのPramacへの2020年の移籍。色々な情報を整理すると、Ducatiのジジ・ダッリーニャがロレンソ側にコンタクト、2020年にPramacでDucatiに復帰〜2021年にファクトリーチームへの移籍という話を持ちかけていたようだ。2020年はDucatiはPramacにDucatiファクトリーで完全に同一スペックのGP20を供給するようで、こうした内容もロレンソ側の心を動かした可能性がある。

Pramacとジャック・ミラーの契約更新がなかなか発表されない背景には、ロレンソのPramac移籍の可能性という事情があり、チェコGPでのプレスカンファレンスで「焦ってはいないし、良い形が話がまとまるはず」と語っていたミラーも、オーストリアGPでは「自分の一番のゴールはPramacで2020年も参戦すること」とDucati、Pramacで走りたいと明言。

これはロレンソとPramacの話を牽制するだけでなく、その時点では可能性として語られていたヨハン・ザルコのKTM離脱によって、KTMのファクトリーチームの有力候補となるミラー自身が、KTMのファクトリーシートには興味が無いとDucati側に宣言するという目的もあったはずだ。

Ducatiで良い結果を積み重ねてきたミラーからすると、背後でロレンソが自分と入れ替わる話が進んでいたということでDucatiへの不信感を少なからず抱いたはずだが、この先何がどうなるかわからないKTMの可能性にかけるのではなく、着実に結果を積み重ねてきたDucatiで継続して走ることを選んだわけだ。

一方、HRC側からすると、怪我で療養中と思っていたロレンソとDucatiサイドが急接近していたというのは面白い話ではない。マルケススペシャルと言えるRC213Vへの適合に苦しむロレンソにとって、どの時点で戦闘力を発揮出来るかわからないホンダではなく、Ducatiへ舞い戻るオプションは可能性としてはありえない話ではなかったわけだが、現実的にはHRCと契約破棄をしない限りDucatiへの移籍は不可能なわけで、ロレンソとしては、とりあえず詳細に話を聞いてみたという事だったのではないか。

こうした報道が加熱する中、ホルへ・ロレンソは、アルベルト・プーチに電話で2020年もホンダで走るということは変わらないと伝えたようだが、復帰が予定されている来週末のシルバーストーン戦は、両者の間にかなりの緊張感が残ったままのレースとなりそうだ。

(Photo courtesy of michelin)