開幕戦カタールGPが中止、第2戦のタイGPが延期となったことで、MotoGPの開幕戦は4月5日に決勝レースを迎えるアメリカGPとなった。単純計算で開幕が1ヶ月ほど開幕がずれ込むことになるが、これによって何が起こるのか?

MotoGPのレギュレーションによると様々な開発に関するタイムリミットは”開幕戦まで”となっている。つまり、2020年に関してはまだシーズンスタートしていない状況であるため、各メーカーはシーズン開幕戦を迎えるまでの間、様々な開発を行うことが可能だ。

例えばカタールテストを見る限りでは2020年型RC213Vは様々な面で苦戦しているようだったが、テスト期間中にマルク・マルケスが記録したファステストタイムは、中上から借りた2019年型だったと言われている。このようにカタールテストで露見した問題点に関して、各メーカーが対処出来る時間が発生しているわけだ。

主要コンポーネントの開発の継続

エンジン

シーズン中に開発が一切禁止(凍結)されるものとしてはエンジンが上げられるが、開幕戦が始まっていない現状を踏まえると、各メーカー共にエンジンに関してさらに開発を続けることが可能となり、カタールテストで得られた最新トラック走行データから、エンジンに関して細かい微調整が可能となるだろう。

エアロダイナミクスパーツ

FIMが発表したレギュレーションによると、エアロボディーのコンポーネント(フロントフェンダー/フロントフェアリング/エリアAとその他エアロボディーパーツ)の変更はシーズン中1回のみライダーごとに可能となっているが、ボディワークがレギュレーションで規定した通りのものであるかどうかの検査は、レースのフィニッシュラインを通過した状態での検査となる。
FIM MotoGPの2020年レギュレーションを発表
つまり、各メーカーは開幕戦の決勝レース前までにボディワークの仕様を各ライダーごとに決める必要があり、その後シーズン中に1度のアップデートが可能なわけだが、4月の開幕戦までにカタールテストで得られたデータを元に、ボディワークを微調整していくことが出来るということになる。

シャーシ

シャーシに関してもエンジン、エアロダイナミクスパーツ同様に開発を継続出来る部分で、メーカーによってはライダーごとにカタールテストから得られた異なるフィードバックから、各ライダーの好みに近づけたものを開幕戦から投入したり、同一の最新スペックのシャーシを2名のライダーに供給するなども可能だろう。

なお、MotoGPクラスで唯一鋼管フレームを採用するKTMの場合、アルミニウムもしくはアルミニウム+カーボンのフレームを採用する他メーカーに比べて、異なるスペックのフレーム開発にかかるリードタイムが短いと、以前ポル・エスパルガロが語っている。

マシン開発のテスト継続

通常のチームの場合、レースライダーによるテストは公式テストのみとなるが、コンセッションが適用されるアプリリア、KTMに関しては、レースライダーによるテストがあらゆるサーキットで可能とされており、3月中にさらに開発を進めるためにプライベートテストを行う可能性が高い。
RS-GP 2020
なお、コンセッションを受けられないチームはレースライダーによるプライベートテストは出来ないものの、テストライダーによるプライベートテストはレギュレーション上禁止されていないはずで、KTM、アプリリアがレースライダーでプライベートテストを進める傍ら、テストライダーによるプライベートテストを行う可能性もあるだろう。

アプリリアは今年完全新型のRS-GPをデビューさせており、最高速、ハンドリングに関してもようやくライバルと同じ土俵で戦えるレベルになったと目されている。セパンテストでデビューしたRS-GPは、セパン、カタールテストでもアレイシ・エスパルガロから高い評価を得ている。
KTM RC16 2020
KTMは昨年の段階で既に高い戦闘力を発揮しつつあったが、今年はダニ・ペドロサのインプットもあり、さらにRC-16の熟成が進んでいるはずだ。ポル・エスパルガロ、ブラッド・ビンダーのファクトリーチーム、ミゲル・オリヴェイラ、イケル・レクオーナのサテライトに4台同一スペックのマシンを投入することから考えても、バイクの熟成スピードは速いだろう。

アンドレア・イアンノーネ参戦の可能性

開幕延期によって注目が薄れているが、ドーピング疑惑で開幕戦カタールへの参戦が絶望的となっていたアンドレア・イアンノーネとアプリリアにとって、開幕戦がアメリカGPになったのは嬉しいニュースだろう。現時点では資格停止処分の解除となるか、資格停止処分となるか不明ながら、国際規律法廷(CDI)判決を待つしかないアンドレア・イアンノーネとアプリリアは、今週末に予定されていたカタールGP開幕を見守ることしか出来なかったが、もし4月5日の開幕までに資格停止処分が解除されれば、事前テストゼロの状態ではあるが、アメリカGPのFP1から晴れて2020年シーズンを迎えることが出来る。

アンドレア・イアンノーネ
アンドレア・イアンノーネ

世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が続く現在、4月のアメリカ開催が本当に可能かどうかは定かではないが、開幕が後ろにずれ込めばずれ込むだけ、レースライダーがテストを行えるアプリリア、KTMにとってはメリットが大きく、6メーカーの戦力が拮抗したエキサイティングなシーズンとなるだろう。

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(Photo courtesy of michelin, aprilia, FIM, KTM)