遂に待ち望まれた優勝を達成したジョアン・ミル。リンスを抜いた後は、追いつかれることなくリードを拡大。文句なしの優勝を決めた。チャンスがある時に優勝を狙い、それ以外の時は表彰台を獲得するというのは、マルク・マルケスに通じる強さの秘訣と言えよう。
また、コロナで家賃の支払いにも苦しむ人達のことを考えれば、自分のチャンピオンシップ争いのプレッシャーなど大したことではないと語る成熟ぶり。スピード、そして素晴らしい人柄で、さらにファンが増えそうだ。
今年のシーズン頭には想像出来ない結果
ジョアン・ミル
「遂に優勝を手にすることが出来ました。チャンピオンシップが進むにつれて、常にリスク(スピード)と結果の妥協点を探すのが難しくなっていましたから。今日のバイクは最高の形で機能していたので、それをしっかりと活用しました。そしてスズキにとっても1−2フィニッシュが出来たのは嬉しいですね。今年のシーズン頭には想像も出来ない結果でした。」
「今週末はシーズン最高の状態で挑みました。今週はウェットコンディション、そしてウェットパッチの状況で難しいコンディションでした。セッティングを見つけるのは簡単ではありませんでしたが、チームが素晴らしい仕事をしてくれました。土曜日にバイクを少し変更したところ、バイクは完璧にどのコンディションでも機能するようになりました。」
「今日のウォームアップは初めてのドライコンディションでしたが、バイクのコンディションが最高で、今日こそは優勝を獲得出来るかもしれないと思いました。」
今まで以上にクレバーにレースに挑む必要がある
「まだチャンピオンシップは終わっていません。ポイントのアドバンテージは大きいものの、今まで以上にクレバーに挑む必要があります。このポイントリードを良い形で活かしていきたいと思います。」
「バイクは最高ですし、今日のようなフィーリングを得ることが出来れば優勝争いをしていくことも可能でしょう。いずれにしても全力でレースに挑んで、日曜にどのような形でレースに挑むことが出来るか見てみようと思います。」
「残り2周は自分にブレーキングでミスをしないこと、フロントを失わないように注意しようと言い聞かせていました。最終ラップは本当に長く感じました。正直もう少し周回数が少なければ良いのにと何度も思いました。」
「自分にとってプレッシャーは大きな問題ではありません。プレッシャーは自分にとってネガティブに働くものではないんです。上手くコントロール出来ればと思っています。」
表彰台を獲得するだけでも素晴らしい結果
「レースを消化するごとに、バイクのパッケージが非常に良いことがわかってきました。今年は優勝争いが出来ないサーキットでも、表彰台を獲得することが出来ていました。オーストリア2は優勝のチャンスがあったレースだったと思いますが、今回のように優勝のチャンスがある時にチャンスを掴むことが出来たわけです。」
「今年のような難しい1年の場合は、優勝することももちろん素晴らしいことながら、表彰台を獲得するということだけでも十分に素晴らしいことだと思うんです。」
「1982年以来となる最高峰クラスでの1−2ですが、こういう状況下ですから、あまり盛大にお祝いは出来ないのが残念です。1982年には生まれてもいませんし、まだスズキに加入して2年です。」
「ですから自分にとって、今回の結果の価値は推測するしか出来ません。しかし1982年当時から働いてきた人達がいるわけでしょうし、スズキにとっては本当に素晴らしい価値がある1−2だったと言えるでしょう。」
新しいカテゴリーでは1年目はアグレッシブに走る
「通常自分にとって新しいカテゴリーで走る時、常にアグレッシブなスタイルなんです。経験不足でスピードを発揮出来ない時は、とにかくアグレッシブに走行してミスも多くします。MotoGPでもそうでしたが、2年目からは徐々にミスが少なくなり、バイクを徐々にコントロール出来るようになってきます。」
「Moto3でも2年目はよりスムーズに落ち着いてライディングが出来るようになりました。そして今年に関しても同様に出来ているわけです。MotoGPバイクの挙動を理解出来るようになりましたし、ポテンシャルも昨年から大きく変わってきました。」
コロナで経済的に苦しむ人のことを考えれば、自分のプレッシャーなど取るに足らない
「MotoGPバイクを走らせることに関してプレッシャーはもちろんあります。命懸けで走っているわけですし、やらねばならないことに100%集中しているんです。でもそれが自分達の仕事なんです。」
「でも、これは自分にとっては良い意味でのプレッシャーでしかありません。もし今年チャンピオンシップ優勝が出来ればもちろんあらゆる意味で最高です。しかしチャンピオンシップ優勝出来なかったとしても良い結果であることには変わりません。もちろん結果の内容は違いますけどね。」
「しかし、今現在コロナウイルスによる経済悪化で苦しんでいる人の中には、家賃が払えない人もいるわけです。このウイルスのせいで仕事が出来ずに苦しんでいる人達がいる、これこそが最悪のプレッシャーでしょう。」
「ですから、チャンピオンシップ争いに関してプレッシャーはないのか?という質問を受けますが、こうした人達のことを思えば、自分のプレッシャーなど取るに足らないものです。こういう形で自分の仕事が出来ている事自体、本当に感謝すべきことなんです。」
(Source: suzuki-racing)
(Photo courtesy of michelin)