ホンダのCRF1100Lアフリカツインを中心とした3つの公式アドベンチャーセンターが、イタリア・フランス・イギリスに設置されている。いずれもライダーに対して、世界中どこでも通用する本格的なオフロードスキルを、安全かつ体系的に学べる場を提供している。
各センターでは、単なるマシンの乗り方ではなく「冒険するための準備」を重視。全員が一人ひとりの技量と目標に合わせてトレーニングを受け、実際の路面、実際の地形で実践的に学べるのが最大の特徴だ。日本にこうした公式オフロードプログラムは現段階では確認できないが、日本でも本格的なオフロードスキルを学習できるプログラムがあれば、ある一定のニーズはあると考えられるだろう。







■「冒険」とは、準備である
ホンダが誇るCRF1100Lアフリカツインは、8度のダカールラリー優勝という輝かしい歴史を背景に、圧倒的な全地形対応性能を有する。このマシンを駆って世界中を走るライダーの育成を担っているのが、次の3人の元トップライダーたちだ。
- ダヴィッド・フレティニエ(フランス・アヴェロン)
フランスエンデューロ選手権5回王者、モロッコラリー2008年覇者など、幅広い競技で実績を持つ彼は、ライダーが舗装路を離れた途端に操作に苦労する様子に驚き、自身の経験を還元する場としてセンターを設立。 - デイヴ・ソープ(イギリス・エクスムーア)
500ccモトクロス世界選手権を3度制したレジェンドは、「ディーラーで触れるバイクを、実際にオフロードで走らせる場がない」というギャップに着目。誰もが安全かつ安心して挑戦できる環境を整備。 - マルチェロ・“ブルドーザー”・ロマーノ(イタリア・サンジョルジョ・ピアチェンティーノ)
競技志向から一転、現在は初級者の育成に尽力。理論・実践・実地の3段階で構成された週末プログラムを通じて、ライダーに自信と実戦感覚を与える。
■成功体験を重ねることで、真の上達へ
共通するのは、「最速」や「派手さ」ではなく、「確実な成功体験」を重視する指導スタイル。参加者は経験値に関係なく、まずは白紙の状態として扱われる。インストラクターは静かに観察し、それぞれの課題や習熟度に応じてメニューを調整。熟練者には自律を促し、初心者にはマンツーマンのサポートも惜しまない。
動画解析なども活用し、間違ったフォームや悪癖を的確に修正。「10年続けてきた間違いを1日で分解して正す」ことも可能だという。目標はひとつ、「最後に笑顔で帰ること」。それが3人の教える理由だ。
■マシンは“道具”。主役はライダー自身
使用される車種はCRF300L、CL500、XL750トランザルプ、CRF1100Lアフリカツインと多彩。中でもアフリカツインは、単なるシンボルではなく、冒険の“実行力”を体現する存在だ。だが「最初からアフリカツインは難しい」とソープは言う。小排気量車両から始め、段階的にステップアップすることで、本物の自信が育まれる。
ロマーノは言い切る。「アフリカツインは、よりオフロードらしい。美しい。素晴らしいマシンだ。」
■欧州というフィールドの魅力
地理的な多様性も特筆すべき要素だ。1日で泥・砂・岩・森・山をすべて体験できる場所は世界でも限られる。フレティニエは「スキルを学ぶだけでなく、環境と地元に対するリスペクトを学ぶことも必要だ」と語る。
冒険とは、スピードや支配ではなく、「準備・自信・楽しさ」だと3人は断言する。ソープは「笑顔で終えることが第一」とし、ロマーノは「バイクで景色に感動してほしい」と語る。フレティニエは「知識こそ、どこへでも持っていける武器」と結ぶ。
■初めての一歩に必要なのは“適切な環境”
最後に「オフロードに挑戦したいけど不安な人」へのメッセージを問うと、3人の答えは一貫している。
- 自己流ではなく、正しい指導を受けること
- 気後れせず、一歩踏み出すこと
- 適切なマシンと適切な場所を選ぶこと
「正しいツールがあれば簡単なんだ。思っているよりずっと安全だよ。」とフレティニエは語る。
この3つのセンターは、レーサーを育てる場所ではない。冒険に挑むすべてのライダーに、「理解・尊重・準備」を教える場であり、”走ることで世界を知る”というモーターサイクルの真髄を体感できる場所だ。
- フランス(ダヴィッド・フレティニエ)
https://www.davidfretigne.com/ - イタリア(マルチェロ・ロマーノ)
https://www.trueadventureoffroadacademy.com/ - イギリス(デイヴ・ソープ)
https://www.davethorpehonda.com/

中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近はまた乾式クラッチのDucatiに乗りたいと思っています。