Team SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)の佐原伸一氏は、今年ダヴィデ・ブリビオ不在のチームで、チームディレクター、プロジェクトリーダー、日本の開発部門ではグループリーダーを勤めるなど、八面六臂の活躍を見せた。昨年と打って変わり、今年は現場でレースを見ながら戦った1年で大きな学びがあったとのこと。
2022年はさらに安定感を高めたジョアン・ミル、スピードをいつでも発揮出来るアレックス・リンスの姿を見てみたい。[adchord]
今年1年現場にいた経験が来年生きてくるはず
スズキ チームディレクター、プロジェクトリーダー佐原伸一
「長く要求の多いシーズンが終わりましたが、望んでいた6割、7割り程度の結果しか得られなかったと言える1年でした。タイトルを2020年に獲得して、チームマネージャーがチームを去って迎えた厳しい1年でした。全員がステップアップして進むべき方向性を見つける必要があったんです。今まで私はチームディレクターとして日本のファクトリーとのやり取りをしていましたが、2021年はチームマネージャーでありつつ、プロジェクトリーダーを勤める形になったんです。」
「また日本での開発部門におけるグループリーダーという立場もあり、負荷が集中する状況でした。しかし私自身多くを学びましたし、レーストラックにいる時間が増えたことで、前年までは気づいていなかったことに気づくことが出来ました。GSX-RRのことがより理解出来ましたし、サーキットにおける挙動も理解することが出来たんです。」
「2020年は最終戦のポルティマンしか現場にいることが出来ませんでした。2020年のバイクを理解したいと思っていたので、本当はもっとサーキットでバイクを観察したかったんですよね。今年のシーズンが始まった時点ではバイクの比較をしっかりすることが出来なかったんですが、今年はすべてのレースに現場で参加しましたから、今年の経験は来年に生きてくるはずです。」
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「今やGSX-RRというバイクに本当に詳しくなりましたし、すべてのレースで現場にいたことで、技術的側面だけなく、マネジメントの意味でも役立ちました。2021年はパドックにいる皆と今まで以上にコミュニケーションを取ることが出来ました。今までもほとんどの人のことはわかっていましたが、直接コミュニケーションを取ることで互いを知ることが出来ました。やはりメールかオンラインミーティングよりも、互いをよく知ることが出来ますね。」
「チーム内であっても、各メンバーの仕事をより深く理解できるようになりましたし、マーケティング部門では特に顕著に現れていますね。 今まで、彼らの仕事の複雑さを本当に理解していなかったと思いますし、ちゃんと感謝出来ていなかったと思います。 彼らはとてもクリエイティブで、常に新しいアイデアを出し、毎週だけでなく、毎時間新しいアイデアを出し続けているように感じます。」
「マーケティング、コマーシャル、スポンサーシップなど、この分野のプロジェクトは私にとって初めての経験で大きな責任を伴うため、多くを学びました。しかし、今年、新しい役職に就いて一番大変だったことは何か大きな相談ができる相手がいなかったことです。」
「日本からリモートで仕事をしている時は全体像が見えていて、的確なアドバイスができるのですが、現場にいると一歩引いて客観的に物事を見ることが難しく、何でも相談できる相手がいないのは寂しいですね。しかし、その中でもクルーチーフやマネージャー陣、チームメンバー全員に助けられ、支えられていることを実感しています。」
「このシーズンを通して、すべてのメンバーが自分のことを助け、支えてくれようとしてくれました。そういった意味でも、今年はチームスピリットという点では期待通りの1年でしたが、結果という点では少し物足りなかったと言えます。」
物事の優先順位をコントロールする必要があった
「確実に言えることとしては、バイクのパフォーマンスについて、昨年から今年にかけての向上が、昨年ほど大きくはなかったということです。 ファクトリーのエンジニアの努力不足というわけではありません。彼らは必要なことはすべてやってくれましたし、彼らの仕事ぶりにはとても満足しています。しかし、例えば仕事の順番や項目の優先順位をコントロールする必要があったと思うんです。」
「表彰台には何度も上がることが出来ませんでしたが、本当に多くの素晴らしいファンに支えられていると実感しました。スズキのファンは熱狂的、情熱的で、自分達のことを愛してくれていて、それを感じることが出来ました。私の立場ですらファンの声援を大きく感じるんですから、ライダー達はもっと多くの声援を感じていることでしょう。」
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「この仕事を始める前は、ファンからの応援の重要性に気づいていませんでした。ファンが楽しそうにしている姿を見るのはいいなと思っていたのですが、現場でレースに出るようになってから、ファンの応援がライダーやクルー、チーム全員に伝わっていることがわかりました。ですから、ファンの声を聞いたり、コメントを読んだりすると、私達のモチベーションは100パーセントから110パーセント、120パーセントになるんです。」
「本当に嬉しいですし、これからも一緒に応援していきましょう。冬休みに入る前に、2人のライダー、ジョアンとアレックスにも同じようなメッセージを送りたいと思います。」
来年も2人のライダーと共に勝利を目指していく
「今年は、2人のライダーの活躍により、チームチャンピオンシップ、マニュファクチャラーズチャンピオンシップで3位を獲得することができました。ジョアンも非常に競争の激しい今年のチャンピオンシップで、ライダーズチャンピオンシップで3位を獲得しました。」
「ジョアンは、また確実にタイトルを獲得できる実力と可能性を持っている選手です。彼にはコンスタントさ、スピード、そしてスマートな頭脳が揃っていますし、運に見放されたときでも、しっかりと結果を出すことができる選手です。2022年に向けて、これらの要素をどう組み合わせるかすでに計画を立てていますし、彼を全面的に信頼しています。」
「アレックスにとっても今シーズンはタフなものでした。彼にはポテンシャルもスピードもあって非常に強力な選手なのに、そのスイッチが入らないことがあるんです。彼はシーズン前はいつもモチベーションが高く、シーズン開幕後は、今年のように序盤から非常に速い走りを見せてくれました。」
「しかし、クラッシュやミスを犯すと、そのスパイラルから抜け出して調子を取り戻すことができない印象です。 彼のスイッチを入れる方法を見つけることができれば、無敵になれるはずです。 2人のライダーへのメッセージはシンプルです。”我々は挑戦者であり、再び勝つために一緒に戦おう!”」
(Source: suzuki-racing)
(Photo courtesy of suzuki-racing, michelin)