いよいよ来週からヨーロッパラウンドを迎えるMotoGPについて、今後の見どころを簡単にまとめました。チャンピオンシップの行方、ライダーとチームの契約交渉、サテライトチームはどうなる?などなど、GW中の読み物にどうぞ。

ヨーロッパラウンドはいよいよ来週から


MotoGPは来週末から長いヨーロッパラウンドを迎えます。このヨーロッパラウンドは5/6のヘレス(スペイン)、5/20のル・マン(フランス)、6/3のムジェロ(イタリア)、6/17のカタルーニャ(スペイン)、7/1のアッセン(オランダ)、7/15のザクセンリンク(ドイツ)、8/5のブルノ(チェコ)、8/12のレッドブルリンク(オーストリア)、8/26のシルバーストーン(イギリス)、9/9のミサノ(サンマリノ)、9/23のアラゴン(スペイン)まで続き、チャンピオンシップの行方はヨーロッパでほぼ決まると言っても過言ではありません。

2017年のシリーズチャンピオン、現在ポイントスタンディングで2位のマルク・マルケスは、昨年はル・マンでノーポイント、ムジェロで表彰台を逃し、イギリスでエンジンブローでノーポイントに終わった以外は、ヨーロッパラウンド全てで表彰台を獲得しています。一方、現在ポイントスタンディングで首位に立つアンドレア・ドヴィツィオーゾは、昨年はヘレス、ル・マン、アッセン、ザクセンリンク、ブルノ、アラゴンで表彰台を逃しており、優勝出来ない時は最低限表彰台を獲得していたマルケスと異なり、優勝出来ない時はレースで完走はするものの表彰台は逃すことも多いレースが続きました。

今年のデスモセディチGPとドヴィツィオーゾは、今まで苦手としてきた、マシンの向き替えが多くテクニカルセクションが存在するサーキットのテルマス・デ・リオ・オンド、サーキット・オブ・ジ・アメリカズで、表彰台は逃したものの、昨年よりは良い形でレースを終えました。何らかのミス、もしくはマシントラブルがない限りはヨーロッパラウンドでも強さを発揮するであろうマルケスを逃がさないためにも、Ducatiとドヴィツィオーゾにとっては、ケーシー・ストーナー以来初のチャンピオンシップ優勝を達成するために「勝てるレースで確実に勝ち、勝てないレースでは最低限表彰台を獲得する」という走りが必要です。

デスモセディチのハンドリングは改善されたか?


なお、今年のデスモセディチGPは若干ハンドリングが改善されているようで、アメリカGPを終えた段階では、ドヴィツィオーゾ、ロレンソ両名から「曲がらない」というコメントはあまり聞かれません。もちろんホンダやヤマハと比較すると曲がりにくいマシンであるという特性は変わっていないようですが、実際にどの程度Ducatiの持病であるアンダーステアが改善されているかについては、テクニカルと名高い来週末のヘレスにおいて、ある程度明らかになるでしょう。また、今年は開幕戦から満足の行くレースが出来ていないホルへ・ロレンソについては、昨年表彰台を獲得しているヘレスで良いレースをすることで勢いに乗れるかどうかが注目されます。

ヤマハのエレクトロニクスの改善


現在ポイントスタンディング3位のマーべリック・ビニャーレスについては、現時点の表彰台獲得回数はアメリカGPの1回のみですが、昨年中盤から苦戦していたエレクトロニクスの改善がヤマハで進んでいるようで、これについてはロッシも「今年は昨年よりもエレクトロニクスに関してヤマハはリソースを使っている」と語っています。ビニャーレスは昨年は最速タイムを記録し続けたプレシーズンテストからの開幕戦2連勝、ル・マンで優勝した以降は優勝がなく、中盤から失速していったシーズンでしたが、今年は6位→5位→3位と上り調子のシーズン開幕となっています。この勢いのままヘレスを迎え、ヨーロッパラウンドを戦うことが出来れば、今年こそは念願のMotoGPクラスでのチャンピオンシップ争いに参加出来るでしょう。

自身10度目のタイトル獲得目指すバレンティーノ・ロッシは、カタールGPのレース前となる3月16日にヤマハと2年間の契約を更新。表彰台獲得で幸先よく今シーズンをスタートした矢先、第2戦アルゼンチンでマルケスに突っ込まれて転倒しノーポイント、アメリカGPでは4位でレースを終え、現在はランキング7位となっています。昨年のヨーロッパラウンドでは手堅くポイントを積み重ねてはいたものの、優勝はアッセンのみ。今年チャンピオンシップの争いに参加するにはヨーロッパラウンドで優勝を重ねていく必要があります。

サテライトチームの活躍


アルゼンチンGP終了時点ではポイントスタンディング首位にいたLCRホンダのクラッチローは、アメリカGPを終えて総合4位。またテック3のヨハン・ザルコも同ポイントで並んでいます、アルゼンチンGPの予選、決勝でサテライトチームのライダーの活躍が目立ったように、今年は例年以上にファクトリーチームとサテライトチームの戦力が拮抗しています。特にテック3のヨハン・ザルコについては、MotoGPクラス初優勝をいつしてもおかしくないほどのスピードがあり、現在チャンピオンシップ争いをするファクトリーチームのマルケス、ドヴィツィオーゾ、ビニャーレスにとっては、ヨーロッパラウンドでいかに多くの優勝を重ねるか、サテライトチームのライダーがいかに自分の直接的なライバルとの間に入ってポイントを奪ってくれるかも重要になります。

今後加速するライダーとチームの契約交渉


ヨーロッパラウンドが始まり本格化して行くことが予想されるのが、2019年シーズン以降のライダーとチームの契約交渉です。現在ファクトリーチームで2019年、2020年のライダーラインナップが確定しているのはヤマハのみで、ホンダはマルケスとの契約を既に更新しています。Ducatiはドヴィツィオーゾとの契約更新はほぼ確定と言われており、スズキもリンスとの契約更新は間違いないと言われています。また、2019年にはファクトリーチームからの参戦を強く望んでいるヨハン・ザルコはKTMとの契約を結んだとされています。


ダニ・ペドロサ、ホルへ・ロレンソ、アンドレア・イアンノーネに関しては現状は契約更新の噂はありませんが、ダニ・ペドロサはザルコがKTMと契約を結んだとするとレプソルホンダとの契約更新が予想され、Ducatiでロレンソが契約更新しない、もしくは出来ないとすると、その行き先はスズキとも言われています。これはロレンソの高いコーナリングスピードを特徴とするライディングスタイルが、スズキのGSX-RRの特性とよく合っているためですが、アメリカGPで遂にスズキで初の表彰台を獲得したイアンノーネが今後も同様の活躍を続けるとすると、ロレンソの行き先は結局Ducatiになるのかもしれませんし、スズキがイアンノーネを放出、ロレンソを獲得するというシナリオも可能性がないわけではありません。

2019年からのチーム体制は


チーム体制に関しては2019年からテック3がKTMのサテライトチームになるという大きな話題とは別に、Marc VDSがスズキのサテライトチームになるのか?それともヤマハのサテライトチームなるのかという話題があります。スズキのダヴィデ・ブリビオは「Marc VDSとの契約はヘレスまでに判断する」と語っており、GW中の大きな話題となりそうです。ヤマハにとっては、ロッシが2020年シーズンで引退、2021年からVR46でMotoGPクラスに参戦しヤマハのサテライトチームになるというシナリオに沿って動く場合、2019年からのサテライトチームはロッシのVR46がMotoGP参戦を開始するまでのつなぎになってしまいます。この段階でヤマハが現在の4台体制から6台体制とし、2019年からのサテライトチームに加えて、ロッシのVR46にもM1を供給するというシナリオは少し考えにくく、サテライトチーム側にとってもメリットがありません。こうした事もあって、Marc VDSはスズキのサテライトチームになるのではという噂があるわけです。さあ、ヨーロッパラウンド開幕まであと1週間。楽しみに待ちましょう。

(Photo courtesy of michelin)