ケーシー・ストーナーは同じくオーストラリア出身のクリス・バーミューレンと自分のキャリアを振り返り、来年Ducatiファクトリーから参戦するジャック・ミラーについて期待の思いを語った。
今もレースをすること自体は恋しいと感じないが、チームと共にバイクの改善を進め、最高のラップタイムを獲得する喜びは恋しいと語る。将来的に何らかの形でMotoGPに戻ってくるケーシーの姿を見たいファンは多いはずだ。
MotoGPの世界に何かしら貢献したい気持ちがある
「Ducatiとはテストライダー、ブランドアンバサダーという明確な役割を持って仕事をしていました。ホンダでも同様の働き方をしようとしていたんですが、あの”若手ライダー”が窮屈そうだったんで辞めたわけです。しかしDucatiではやり方の面で折り合いがつかずでした。チームに対してしっかりと貢献出来たという感じはあまりないですね。」
「ライダーが求めることはわかっていますが、残念ながらライダーの声が通らないこともあります。いくつかのメーカーではメーカー側がデータを見て正しいと感じる方向性が優先され、ライダーと協調していかないケースもあります。ですから、常にバイクを正しい方向性に前進させるために衝突があるんです。こういったことをオーストラリアにいながらにして、ミーティングの数を増やしつつ行っていくのは非常に難しかったんです。」
「ですから身を引いたというわけですが、このスポーツにはまだまだ多くを還元出来ると思っています。他の人が思いもつかない発想が出来ると思いますし。何かしら役に立つ異なるものの見方を共有出来ると思っています。」
「すぐにMotoGPの世界に戻って何かをするということはありませんが、レースで勝つためにはどうすれば良いのかわかっています。将来的にこういった知識を還元したいですね。」
「とは言え現在はそういった状況ではありません。慢性疲労症候群が少し良くなるのを待ってから、今よりもしっかりと注力出来るはずです。今は慢性疲労症候群の治療と家族との時間の確保を最優先しているんです。でも、正直なところもっとMotoGPに関わっていきたい気持ちがあるんです。」
ジャック・ミラーはここ数年で大きく成長した
「ジャックはここ数年で実に大きく成長しました。彼の仕事の仕方には関心しましたね。彼のレース結果、働き方、集中の仕方、モチベーションからも明らかです。年々彼の成長が見て取れ、ここ数年の結果は実にコンスタントですよね。」
「ハードタイヤの使い方はまだまだ改善の余地がありますね。ハードタイヤとソフトタイヤの間で迷っている時に、ハードタイヤも有効に活用出来ると強いですからね。エンジニアと共にセッティング作業を進めていくことが重要です。そうすればレースの終わりにタイヤの摩耗に悩む必要はありません。近年そういったことは増えてきていますしね。」
「ジャックはDucatiファクトリーで素晴らしい仕事が出来ると思います。あとはジャックのチームメイトがどちらになるかの問題でしょう。ドヴィツィオーゾに順当に決まるのか、それとも大きな驚きが提供されるかどちらかですね。」
「しかしジャックがこのチャンスを得たことは実に素晴らしいことですね。彼が理解しておくべきは、ファクトリーチームのファクトリーバイクになったからといって、ものすごく大きな変化にはならないということでしょう。」
「Ducatiの場合はサテライトバイクとファクトリーバイクにそこまで大きな差はありません。しかしサポートの体制は大きく異なります。チームはジャックが言う事は全て注意深く耳を傾けるでしょうし、彼が望む方向に開発が進む可能性もあります。彼の2021年には期待していますし、ジャックにとってもオーストラリアにとっても素晴らしいことです。」
チームと協力して素晴らしいタイムを出すことが恋しい
「あの時引退していなかったらと考えることが無いわけではありません。ただ、間違いなくさらに多くのチャンピオンシップ争いに参加していたでしょう。こればかりはけしてわかりませんが、再びタイトルを獲得出来たかもしれませんし、そうならなかったかもしれません。誰にもわかりませんよ。」
「時にはあの環境に戻ってみたい気もします。レースをするということではなくて、チームと共に作業するのが楽しかったんです。変に聞こえるかもしれませんが、バイクと天気が素晴らしい状態で、練習走行をするのは最高に楽しいものですからね。」
「それに、たった1周のために全てを完璧にして、少しばかりのプレッシャーを感じながら走る予選走行も好きでした。バイクの性能を引き出せたときは本当に気持ちよかったですしね。レースというのは29、30周に全精力を注ぎ混んでミスが許されないわけですから、けして楽しいとは言えないものです。バイクを限界でプッシュしていると、ミスは簡単にしてしまうものですから。」
「間違った場所で指が少しブレーキにかかっただけで簡単に転倒してしまいます。小さいバンプに乗り上げたり、フォークが間違った場所でボトムしてしまった転倒することもあります。ブレーキングポイントをミスして、走行ラインがワイドになっただけでレースが終わってしまうこともあるんです。」
「本当に沢山のプレッシャーがかかるんです。ですからレースを終えると、いつも安心感を感じました。これは優勝しようと負けようと、良いレースが出来た時も同じでした。もし表彰台を逃したとしても、満足出来るレースをしていれば十分なんです。こういったレースに関するものはそこまで恋しいと思いませんが、チームと協力して予選走行のような素晴らしいタイムを引き出す喜びは恋しいですね。」
(Photo courtesy of Ducati)