カル・クラッチローのエンジニアであるクリストフ・ブルギニョンは、MotoGPバイクの転倒コストについて30万程度で済む転倒はないと語る。酷い転倒の場合は修理代金で1,200万ほどになるとし、安全のためにカーボンブレーキディスクはグラベルに突っ込むたびに交換しているという。

クリストフ・ブルギニョン

カル・クラッチローのバイクには毎年2億円近くがかかっています。(200万ユーロ)これは開発費、全てのレースに帯同するHRCエンジニアの人件費も含まれます。ものすごい金額だと感じるでしょうが、それだけ人的リソースがかかっているんです。

MotoGPバイクで転倒すると1回あたり180万円〜1,200万円ほどかかります。30万程度で済む転倒は存在しません。多少のパーツを変更するだけの転倒であることをいつも願っていますが、大きな転倒や、転倒が重なったりするとチームには大きな痛手となります。ストックで持っている燃料タンクは5個ですし、ラジエターに関しても同様です。HRCに小ロットのみ製造をお願いするとなると納期も長くなりますしね。

「MotoGPバイクは車重もありますしスピードも高いですから、軽微な転倒というのはほとんどないんですよ。フロントを失って転倒するとなると、フェアリング、ハンドルバー、その他のカーボンパーツが間違いなくダメージを受けます。カーボンディスクブレーキはセットで120万円です。それにグラベルに突っ込むたびにブレーキディスクは使い物にならなくなるんです。
カル・クラッチロー
「もちろん完全に駄目になるとは思いませんが、300km/hで走行するライダーが使用するブレーキに、信用できるか不安なものは使用出来ませんから。マグネシウムホイールは55万ほどしますし、ミシュランタイヤは薄めの作りなので転倒するたびにホイールに傷が入る可能性が高いんです。ですから転倒のたびにホイールを交換することもありますね。また、電子制御系統の部品(センサーなど)に関しても13万を下回る製品はありません。
カル・クラッチロー
「ですから、バイクが転倒すると様々なパーツに交換が必要になってくるんです。ただ激しい転倒であってもほとんど壊れることが無いパーツも当然あります。なかでもブレーキキャリパーは非常に頑丈です。そしてエンジンも同様です。年間のエンジン使用基数はレギュレーションで規定されていますのでエンジンが頑丈なのは実に助かるんです。でも私が覚えている限り、転倒によってエンジン交換が必要になったケースはありません。バイクの90%を交換しないといけない場合であってもエンジンは無事であることがほとんどなんです。
カル・クラッチロー

(Source: HRC)

(Photo courtesy of michelin)