来年ヤマハのテストライダーに就任するカル・クラッチローは、今年限りで現役のライダーを引退する。今まで人生を捧げてきたレースから離れることは悲しいと語るが、来年はレースをしないことで家で一緒に過ごせることを泣いて喜ぶ娘の涙を見て、正しい判断だと確信したと語る。これからは家族との時間を大切にしつつ、ヤマハM1の開発を牽引して欲しい。
もう十分にレースをした
カル・クラッチロー
「もう十分にレースをしたでしょう。MotoGPで10年間走り、自分自身でMotoGPに参戦した時に考えていた期待を遥かに上回る結果を残しました。今まで素晴らしいキャリアを重ねてきたと思いますしね。今は何か新しいことをしたいと思っているんです。」
「それでヤマハテストライダーという興味を引かれる仕事があったので、そのチャンスに飛びついたんですよ。レースをしたい気持ちはあります。しかし、今後はレースに対するアプローチを変えようと思ったんです。」
テストライダーから現役に戻ることはない
「一度テストライダーになった後は、レーシングライダーには戻りません。今でも速く走れますし、良いフィーリングでレースが出来ます。でも年間に22日も日曜日にレースをするストレスを感じたくないんです。」(※将来的にMotoGPは22戦になる)
「来年レースに参戦しないと決めた理由の1つはこれです。もし望めばアプリリアと契約は出来たわけですから。」
人生を捧げたレースをしないのは悲しい
「来年レースに参戦しないと考えるは悲しいですね。今までずっと人生を捧げてきたわけですから。しかし今年でそれもお終いです。レースに参戦して、いつの日か世界タイトルを獲得するという夢を追い、毎週末に命を危険に晒すのはもうお終いなんです。」
来年から一緒に過ごせることが嬉しくて、娘は泣き出してしまった
「もちろん家族とは話し合いました。妻のルーシーはレースが俺の人生だとわかっていますし、レースがしたいということはわかっています。今日は娘のウィローに”お父さんは来年レースをしないんだよ”と話したんです。彼女は、”じゃあ来年、お父さんはおうちにいるの?”と聞いてきました。”そうだよ”と答えると、彼女は嬉しくて泣き出してしまったんです。」
「娘の涙を見て、正しい判断をしたんだなと思いました。自分自身、自分の家族も理解してくれているレースというものから距離を置くのは難しいことです。しかし、今年はルーシーとウィローと一緒に過ごすことが出来ていません。娘の涙で正しい判断だと確信が持てました。」
今後大きな怪我をした時に、しっかりと回復出来るのかという不安
「今までは大きな怪我からもかなり早く回復することが出来ていました。しかし今年は怪我の回復が遅く、来年20戦になるMotoGPまでに完全に回復するかどうかもわかりません。それに今年のように同じトラックでの連戦があるかもしれないと考えると心配だったのもあります。そういった心配をしながらレースを戦うのはもう嫌なんです。
ヤマハから始まった世界選手権キャリアの締めくくりもヤマハ
「ヤマハから世界選手権のキャリアをはじめて、ヤマハを手助けするために、彼らの元に戻るというのはいいですね。ヤマハは世界選手権で戦う初めてのチャンスをスーパースポーツ世界選手権で与えてくれました。その後スーパーバイク世界選手権(SBK)に参戦し、MotoGPに参戦したのもヤマハからです。これからのヤマハとの未来が楽しみですよ。」
(Source: HRC)
(Photo courtesy of michelin)