昨日ホルへ・ロレンソのカタルーニャGPのラップタイムの分析をしてみて、ペース配分など含め色々な発見がありましたが、今シーズンに入ってから調子が良くないビニャーレスの問題点は何なのか?過去3戦のタイムから読み解いてみましょう。
ビニャーレスは今シーズンに入ってから、バイクに関してほぼ不平しか語っていないとも言えますが、その中で共通しているコメントは「レース終盤のペースはトップ3選手と変わらないが、レース序盤に良いペースで走行出来ない」というもの。それでは実際のデータを見て何が言えるのか?ということで、ビニャーレスの第5戦ル・マン(7位)、第6戦ムジェロ(8位)、第7戦カタルーニャ(6位)と、上位3選手のデータを比較してみます。
まず第5戦ル・マンから見ていくと、上位3選手がレース前半は1’32後半で走行しているのに対し、ビニャーレスは1’33後半で走行、上位3選手が後半は1’32後半〜だったのに対し、ビニャーレスは1’33前半で走行しており、レース全体で上位3選手のペースに及びません。
第6戦ムジェロではレース前半はロッシ含め上位3選手が1’48前半で走行しているところ、ビニャーレスは1’48後半のタイムでありレース全体を通じて1’48後半で走行しています。ロッシは12周目以降は1’49前半にタイムが落ちていますが、ビニャーレスはやはりレース序盤のタイムが影響しており、結果的に8位でレースを終えています。このレースに関して言えばレース後半の15周目以降は上位3選手に近いペースで走行出来ているものの、序盤に差がついてしまうと挽回が厳しいことが伺えます。
第7戦カタルーニャでは特に序盤7周ほどのペースが全く上がらず、11周目以降にようやくペースが上がるも、上位3選手は1’40中盤でタイムが安定しているところビニャーレスのタイムは安定していません。また、レース後半に向けてペースは改善していくものの、今までのレース同様に序盤についた大きな差を埋めることが出来ず、なおかつ予選位置が良くないことから、後半にペースが改善されても表彰台争いに絡むことが出来ていません。
このように、過去3戦だけの分析からも「序盤7周目までに先頭グループにレース全体で埋められないほどの差をつけられてしまう」という構図が見て取れます。この問題の原因はビニャーレス自身もわかっていないわけですが、簡単に想定するだけでも、電子制御のセッティング、燃料満載時の車体バランス、新品タイヤでの車体バランス、レース序盤のビニャーレスのライディングetc..など様々です。とは言え同じバイクに乗るロッシは予選位置が良いとは言え、ビニャーレスよりも良いペースで走行し、表彰台を獲得しています。レース序盤のペースがホンダやDucatiに及ばないのはロッシにも見て取れる傾向ですが、それでもトップに肉薄して表彰台を獲得出来る。このあたりがやはり経験の差なのでしょう。
カタルーニャGP後の月曜テストでは、ロッシは「特にパフォーマンスの向上は出来ていない」といったコメントを出しており、ロッシが今シーズン何度か語っているとおり、ヤマハの問題解決には今シーズン丸々かかってしまう可能性もあります。他のどのメーカーよりも早く2019年〜2020年のライダー体勢を確定させたヤマハでしたが、両選手がここまで苦戦するとは想定していなかったのではないでしょうか?
次回のアッセンはヤマハにとっては相性が良いトラックと言われていますが、今年のMotoGPはこうした過去の傾向があてになりません。ル・マンほどヤマハ圧倒的有利と言われるトラックでない限り、ヤマハの苦戦は続きそうです。
(Photo courtesy of michelin)