激戦が繰り広げられたオランダGPのトップ5名の選手のタイム比較をしてみました。まず5人のタイムを比較して言えるのは、データから見てもいかに接近した戦いが繰り広げられていたのかということです。
通常20周を超えるレースをグラフにしてみると、ここまで各選手のグラフの形状が似てくる事はありませんが、今回はレース全体を通じてバトルが繰り広げられていたため、各選手のグラフは驚くほど似た形状をしています。
まず優勝を遂げたマルケスのタイムについて見ていくと、22周目まで集団の中でレースをしていましたが、23周目から一気にペースを上げて後続を引き離しにかかったことがわかります。そしてマルケスは24周目に自己ベストタイムを記録。25周目にはその時点で2位のロッシのインに、ターン1でドヴィツィオーゾがやや強引に飛び込んだことでロッシがコース外に押し出される形となり、ドヴィツィオーゾ自身もリズムを落とし、マルケスを逃し、ビニャーレスとリンスにも抜かれてしまいました。マルケスは25周目、26周目もトップ5人の中では最速タイムを記録して今シーズン4勝目を達成した形です。
2位を獲得したアレックス・リンスに関しては、データを見る限り20周目までじっくり我慢のレースを続け、その後ペースを上げていった事がわかります。そして25周目のドヴィツィオーゾ、ロッシのバトルによって一気にこの2名に追いつき、ビニャーレスと共にすぐさまドヴィツィオーゾをオーバーテイク。そして最終ラップでビニャーレスを抜いて2位を獲得しています。なお、データからはリンスは24周目からは、優勝したマルケスに次ぐペースで走行している事がわかり、最後の最後まで丁寧にタイヤを労り、ラストスパートをかける余力も残していたのであろうことが伺えます。
3位を獲得したマーべリック・ビニャーレスは6周目にレース全体のファステストを記録。その後は集団の中に飲み込まれる形でなかなか前に出れず、25周目のドヴィツィオーゾとロッシのバトルがなければ、単独では表初台獲得は難しかったと言えます。しかしデータからは今まで課題であった序盤のペースが改善されており、トップ集団にしっかりとついて行けた事が伺えます。
ロッシ、ドヴィツィオーゾに関してはレース全体を通じて集団の中で良いペースで走行していたことが伺えますが、25周目のドヴィツィオーゾのターン1での突っ込みによって、ロッシが語っていたように2人ともペースが悪化し表彰台を逃したことがわかります。
なお、この上位5名にロレンソのタイムを加えてみると、むしろロレンソのペースのほうが遅く、こうした事もあってロレンソを先頭とした集団が形成されたのだということがわかります。ムジェロ、カタルーニャの2連勝のようにロレンソが先行逃げ切り型のレースを展開するにはペースが不十分であったこと、ペースがトップ選手達よりも遅かったことから、ロレンソが上位でレースを終えるには、序盤から先頭に立ってレースをリードしていく以外に戦術がなかったのであろうことも伺えます。
さて、マルケス首位のまま迎える前半戦最後の戦いとなるドイツGPは、7月15日にザクセンリンクで開催されます。なお、マルケスはザクセンリンクで今のところ8連続優勝しており、無敗記録を更新中です。
(Photo courtesy of michelin)