開催がいつになるのか、果たして2020年シーズンが開幕するかどうか不明な状況が続くMotoGPだが、MotoGPクラスのタイヤサプライヤーであるミシュランの2輪モータースポーツグループ・マネージャー ピエロ・タラマッソは、現在のミシュランの状況について詳細に語っている。

ミシュラン工場で、タイヤの製造は完全に停止している

2輪モータースポーツグループ・マネージャー:ピエロ・タラマッソ

「フランスも他国と同様に多くの工場が閉鎖されており、ミシュランも例外ではありません。現時点の稼働は通常時の10%以下です。最近は工場で使い捨てマスクの製造を開始しており、欧州10拠点で毎週約40万枚を生産する体制となっています。また再利用可能マスクについても生産を始めることになります。これらは医療従事者向けに生産しているもので、MotoGPチームの中にはこのプロジェクトに参加しているチームもあります。」
ミシュラン ピエロ・タラマッソ「レースタイヤは都度生産しているため、出来るだけ早い改訂版カレンダーのフィックスが重要」
現時点では自動車用、モーターサイクル用のタイヤ製造は完全にストップしています。作業を続けているのは研究開発部門のみです。普段はレースで忙しいですから、データ解析などプロジェクトへの集中は、シーズン中には出来ないんです。ミシュランは通常、レースウィークで使用するタイヤはその都度生産しています。シーズン開始時点でフルシーズン分のタイヤを製造し終えているわけではないのです。現時点では6レース分のタイヤの在庫がある状態です。

レースウィークで使用するタイヤの製造には3〜4週間必要

「ただ、これらのタイヤはどのサーキットで使用するか明確に決まっているので、どのサーキットでも使用出来るわけではありません。1つのレースウィークで使用する約1,200本のタイヤの製造には3〜4週間が必要で。特定のトラックに最適なタイヤを製造するには事前にその日程が明らかになっている必要があります。ですから、出来るだけ早く改訂版のカレンダーがフィックスすることが重要になります。同じサーキットであっても、本来のカレンダー日程に開催されるレース、日程変更されて開催されるレースではコンパウンドを変えるなどが必要になってきます。
ミシュラン ピエロ・タラマッソ「レースタイヤは都度生産しているため、出来るだけ早い改訂版カレンダーのフィックスが重要」
ミシュランは既にMotoGPに長年タイヤを供給していますから、特定のサーキットにおけるレースが通常とは異なる時期で開催されるとしても、その時期にその地域がどのような気温、コンディションになるかシミュレーションをすることで、どのコンパウンド最適であるか判断することが可能です。ですからどのタイヤをどの時期に使用するかということに関して大きな問題はありません。」

「タイヤのオプションについては、通常3種類を準備していますが、この3種類のタイヤでレースで想定している気温すべてをカバー出来ます。実際のところ、技術の進歩で過去よりもコンパウンドが対応出来る幅が広がっています。3種類ではなく2種類のタイヤでも10℃〜45℃をカバー出来るようになっているんです。

タイヤの輸送については、通常7割を船で、3割を飛行機で輸送しています。しかし船で輸送する場合はコストは安く済むものの、3ヶ月前に輸送を開始する必要があります。これが飛行機であれば1ヶ月前の輸送で大丈夫なんです。いずれにしても、今年のタイヤ輸送については方法を考え直す必要があるでしょうね。」
ミシュラン ピエロ・タラマッソ「レースタイヤは都度生産しているため、出来るだけ早い改訂版カレンダーのフィックスが重要」

新型タイヤの開発は止めず、新しいフロントタイヤが2022年に登場する

タイヤの開発についてはストップするつもりはありません。2019年は今シーズン投入する新しいリアタイヤの開発に力を入れてきました。ですから開発は引き続き続けていき、2021年には新しいフロントタイヤを投入する予定でした。問題となるのは、今年タイヤテストを行うことが出来ないであろうということです。ですから、新しいフロントタイヤのデビューは2022年になると思います。

新しいリアタイヤはコーナー立ち上がりの際に、さらに優れたトラクションと安定性を提供するものです。最初のテストからすべてのライダーから高い評価を得ていますし、ラップタイムも0.5秒ほど短縮されています。各トラックで精力的にテストを行い、フィリップアイランドでは特別なタイヤセッションのための時間も設けました。また、この新しいタイヤ構造では、同じコンパウンドでありながら摩耗が少なく、摩耗が均一なんです。

新しいリアタイヤはすべてのバイクにとってメリットとなる

ミシュラン 2020年シーズンに新型リアタイヤを投入
「新しいリアタイヤに関してはグリップが増していますが、マルケスが語っていたように、新しいタイヤであるならば、バイク同様にそれに適応して走ることがライダーには求められます。通常リアタイヤのグリップが高いと、その分さらにフロントタイヤをプッシュすることになりますが、その場合はバイクのバランスを再考することになるでしょう。新しいタイヤへの適応については、ライダーごとに必要な時間が異なるでしょうが、遅かれ早かれ皆が適応することが出来るでしょう。そしてこのリアタイヤが提供する素晴らしいグリップを享受することになるでしょう。」

グリップが優れたタイヤを使用すると、コーナリングスピードに勝るヤマハ、スズキのコーナリングスピードがさらに高まったとしても不思議ではありません。しかしDucatiやKTMのようなトラクションに優れるバイクについても、立ち上がり加速がさらに加速すると予想しています。ですから、この新しいタイヤは皆にとってメリットとなるでしょう。

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(Photo courtesy of michelin)