2025年FIM MotoGP世界選手権の第19戦「Liqui Moly オーストラリア・モーターサイクル・グランプリ」が、今週末に伝説のフィリップアイランド・サーキットで開催される。全長4.445kmのこのコースは、タイヤにとってシーズン屈指の過酷なチャレンジとして知られている。
2024年に全面再舗装が実施されて以降、ミシュランはそのデータを基に、コースの特性に合わせて改良したタイヤセレクションでオーストラリアに戻ってきた。フィリップアイランド特有の左右非対称レイアウト、特に左側への負荷が極端に高い設計に対応すべく、前後とも左ショルダーを強化した左右非対称構造を採用している。
レースは10月19日(日)14時(現地時間)に27周でスタート。前日の10月18日(土)には、13周のTissotスプリントが15時から行われ、午前中には公式予選が予定されている。

過酷で美しいサーキット、フィリップアイランド
このサーキットは、ほぼ一周を左側にリーンした状態で走行する設計で、特にリアタイヤの左ショルダーに高温と高負荷が連続する極限の状況が発生する。一方、右側は使用頻度が少なく、初期から確実にグリップを発揮する非常にソフトなコンパウンドが求められる。
フロントタイヤには、冷涼な気候と中程度の制動による温度低下への対応が求められ、安定性と熱制御の精度が不可欠。これらの要因から、ミシュランは前後すべてに左右非対称構造のタイヤを供給する。この仕様が採用されるのは、年間カレンダーの中ではザクセンリンク(ドイツ)とバレンシア(スペイン)を含めたわずか3つのサーキットに限られている。
2024年のデータを反映したタイヤアロケーション
昨年の新舗装に対する不確実性を踏まえ、ミシュランは拡張アロケーションで臨んだが、好結果を得たことで、今年は標準的な構成に回帰。それでも左右非対称タイヤの採用は継続される。
フロントタイヤは2024年と同様に、ソフト、ミディアム、ハードの3種。リアタイヤは2種が用意され、いずれも左側を強化した左右非対称構造。2024年のソフトリアは継続しつつ、新たなオプションも導入された。これは昨年のテスト結果を基に開発されたもので、週末を通じて多様なライディングスタイルや気象条件に対応できる組み合わせとなっている。
加えて、ミシュランは雨天用としてMICHELIN Power Rainタイヤ(ソフト/ミディアム)も供給。フロントは左右対称、リアは左側を強化した左右非対称構造で、気象が急変するフィリップアイランドでは必須の備えだ。
ピエロ・タラマッソ(ミシュラン・モータースポーツ・二輪部門責任者)
「フィリップアイランドは、年間を通して最も要求の厳しいサーキットのひとつです。このレイアウトは長く高速なコーナーと、左側への大きな横G、わずかな右コーナー、そして低気温といった複数の要素がタイヤに最大限の負荷を与えます。昨年は新舗装への対応として拡張アロケーションを導入しましたが、非常に良好な結果が得られました。そのため今年は標準構成に戻しつつも、前後とも左右非対称のタイヤを投入します。」
「ここでの鍵は、左右で異なる温度差をいかにマネージしつつ、長い高速コーナーを通して安定したグリップを確保するかです。加えて、強く冷たい風がさらに複雑な要因になりますが、昨年のデータがある今、我々は高い自信を持っています。フィリップアイランドは本当に特別な場所であり、レースはいつもスリリングです。オーストラリアのファンの熱気も素晴らしく、毎年ここに戻ってくるのが楽しみです。」
不安定な天候が鍵を握る週末に
例年通り、10月のオーストラリアは冷涼かつ気まぐれな気候で知られ、強風と降雨の可能性がある。こうした条件では、タイヤの柔軟性と適応力がレース戦略を大きく左右する。
インドネシアとマレーシアという熱帯のグランプリに挟まれたこのラウンドは、気温的にも大きなコントラストを生む。ミシュランのタイヤパフォーマンスと技術チームの適応力が試される絶好の舞台となる。
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近はまた乾式クラッチのDucatiに乗りたいと思っています。