先週のアメリカズGPではマルク・マルケスはスタートでなんらかの電子制御の問題によってスタートに失敗。最後尾から追い上げるレースとなった。結果的にマルケスはこのレースで6位を獲得し、レース後に25ポイントを獲得出来たレースだったと振り返った。
もしスタートに失敗していなければ、COTAの王者と言えるマルク・マルケスが表彰台争いに参加していた可能性は高いが、今回はスタートを失敗〜追い上げて走ったマルクの走りと、優勝したエネア・バスティアニーニの走りを比較してみた。(※便宜上2:09.352というタイムだった場合、2.09352と表示)[adchord]
この比較チャートでは左軸にメモリのある折れ線グラフでエネア・バスティアニーニ、マルク・マルケスの1周のタイムの推移、そして右軸にメモリのある縦棒グラフで、2人の累積タイムを比較している。
マルクはスタート失敗で1周目は2分9秒台に
まず折れ線の2人の1周ごとのタイムを見ていくと、マルクは1周目はスタート失敗によって大きくタイムを落として2分9秒台で周回している対し、エネア・バスティアニーニは2分5秒33で周回している。
マルク・マルケスは3周目以降はペースを一気に上げて、ペースに乱高下はあるものの、15周までは平均して2分4秒12のタイムで走行。エネア・バスティアニーニはペースに乱高下がない影響もあって、3周目から15周目までは平均2分4秒14のタイムで周回している。[adchord]
12周目以降のエネア・バスティアニーニのペースは圧倒的
大きな差が生まれるのはレース後半で、マルク・マルケスは、前半にかなりのスピードで追い上げてきた影響もあって、16周目以降はタイムは平均2分4秒35と落ちており、グラフにして視覚化することで、タイムの落ち込みはより明らかだ。一方のエネア・バスティアニーニは12周目以降もタイムが一定で大きく変化しておらず、温存してきたタイヤを存分に活かして平均2分3秒87で走行している。
レース後半に強いという印象からは後半に追い上げていると思いがちだが、今回タイムを視覚化して理解することで、エネア・バスティアニーニが追い上げるというよりは、むしろ周囲の選手がタイヤ摩耗によってどんどんタイムが落ちていくなか、エネアのタイムはほとんど変化が無いということがわかる。
レースの経過時間で見ると、エネア・バスティアニーニは41分23秒でレースを終えているのに対し、マルク・マルケスは41分30秒となり、エネア・バスティアニーニとの差は7秒となった。マルクがスタート失敗せずにスタートしていたら、タイヤ摩耗もなかったであろうことから、マルクのレースタイムはさらに短くなった可能性もあるが、たらればを検証しても不毛だろう。
今回は純粋に2人の走りをタイムから比較することが目的だったが、こうして見比べることで、エネア・バスティアニーニの後半に強いと言われている走りが、後半になってもタイムが落ちないことによる強さなのだということが明確になったと言える。そして、レース終盤までタイヤを温存出来た選手が有利である今のMotoGPにおいて、エネア・バスティアニーニの強さはこれからも発揮されていくはずだ。
(Photo courtesy of HRC, Gresini Racing)