2020年シーズン開幕の7月19日まで残り1ヶ月を切ったが、既に2021年の話は動き出している。既にいくつかのチームは来年の体制を固めており、着々と準備を進めている。2020年シーズンが通常通り開幕しなかったことで、各チームにとってライダー選定は難しいタスクとなっている。こうした状況の中で、既に2021年のシートが確定しているライダー、未確定ながら参戦チームがほぼ決まっているライダーを一覧としてまとめた。
Honda(ホンダ)
レプソル・ホンダ
・マルク・マルケス(確定)
・ポル・エスパルガロ
マルク・マルケスは2024年までHRCと契約を結んでおり、レプソル・ホンダでそのキャリアを続けることになる。最高のチーム、自分のライディングに合ったバイクが手元にあるわけで、特段の理由がない限りチームを変えることはないだろう。
アレックス・マルケスは2020年のシーズン開幕が例年どおりであれば、ファクトリーチームにふさわしい逸材であるか示すチャンスも与えられたはずだが、ポル・エスパルガロが恐らくレプソル・ホンダに加入することから、2020年限りでファクトリーシートを失うことになりそうだ。
ポル・エスパルガロはKTMでエースライダーとして活躍しているものの、今を逃せばレプソル・ホンダ加入のタイミングは無い。ライディングスタイルにも合っているはずのR213Vでの活躍を期待したい。
LCRホンダ
・アレックス・マルケス
・中上 貴晶
ポル・エスパルガロのレプソル・ホンダ加入によってシートを失うアレックス・マルケスは、そのままホンダサテライトチームのLCRへの加入が予想される。カル・クラッチローは度重なる怪我によって体をかなり痛めており、五体満足のうちに引退して家族と過ごしたいと何度か語っていることから、早ければ2020年末での引退の可能性がある。
現役を続けるとしてもこの先3年も4年も走るとも思えず、ホンダがアレックス・マルケスを手元において置きたいと考えるのならば、引退が近いカル・クラッチローとリプレイスを考えるのが自然だ。
唯一の日本人MotoGPライダーである中上は、LCRと言えどもLCR Honda IDEMITSU MotoGPとしての参戦だ。ご存知のとおり出光が日本企業であるため、実質的にMotoGPにおける日本人枠のこのチームに、アレックス・マルケスが加入する可能性はほとんどない。今後Moto2で活躍する長島、Moto3で活躍する小椋などにシートを脅かされることがなければ、中上はLCRでシートを失う危険はないだろう。
ヤマハ
モンスターエナジー・ヤマハMotoGP
・マーべリック・ビニャーレス(確定)
・ファビオ・クアルタラロ(確定)
ヤマハはDucatiが狙っていたとされるマーべリック・ビニャーレス、ファビオ・クアルタラロと早々に契約を締結。来年以降に向けて盤石の体制と言える。バレンティーノ・ロッシのシートをファビオ・クアルタラロに与えるという思い切った決断となったが、今後のヤマハMotoGPの未来を考えると仕方のない流れだ。
ペトロナス・ヤマハ・SRT
・フランコ・モルビデッリ
・バレンティーノ・ロッシ
契約更新が濃厚なフランコ・モルビデッリは、ファビオ・クアルタラロという最強のチームメイトを失うことになるが、師弟関係にあるバレンティーノ・ロッシのチーム加入が実現する可能性がある。
バレンティーノ・ロッシのペトロナス加入はいまだアナウンスがないが、バレンティーノ・ロッシ自身は自らのモチベーションと十分なスピードがあれば現役を続行したいと話している。なお、バレンティーノ・ロッシがペトロナスに加入する場合、シーズン開幕の7月中盤以前には発表があると予想される。
スズキ
チーム・スズキエクスター(Team SUZUKI ECSTAR)
・アレックス・リンス(確定)
・ジョアン・ミル(確定)
スズキは早々に2人のライダーと契約を更新。若手2人の体制で2022年まで走り続けることになる。アレックス・リンスはGSX-RRで優勝も経験し、今後さらに成長していくだろう。ジョアン・ミルは2019年は怪我に泣かされたが、2020年から徐々に落ち着いたレース運びをすることが期待されている。
ダヴィデ・ブリビオは2人のライダーと2023年、2024年まで契約を続けたいと明言しており、アレックス・リンス、ジョアン・ミルの2人の若手ライダーを、GSX-RRと共に成長させ、トップライダー、トップで戦えるバイクにしていくというプロジェクトが順調に進んでいるように見える。
Ducati(ドゥカティ)
Ducatiファクトリーチーム
・アンドレア・ドヴィツィオーゾ
・ジャック・ミラー(確定)
Ducatiに関してはジャック・ミラーがファクトリーチームに昇格、ドヴィツィオーゾはファクトリーチームで契約更新をする可能性が濃厚だが、なんらかの理由で契約更新には至っていない。ドヴィツィオーゾが引退し、代わりにホルへ・ロレンソが参戦するといった噂もあるが、実現可能性はほぼないだろう。
Pramac Ducati
・フランセスコ・バグナイア
・ホルヘ・マルティン
PramacからMotoGPクラスにデビュー後、成績が優れないフランセスコ・バグナイアは契約更新が濃厚と伝えられる。Ducatiのパオロ・チャバッティは「2020年のシーズン再開の中でフランセスコ・バグナイアの成長具合を確認したい」と語っている。まだ23歳の若手ライダーとは言え、今年大きな改善が見られない限り、2021年からはバグナイアが望むような条件での契約更新は難しいだろう。
ホルへ・マルティンは既にDucatiと契約を結んだとされているが、KTMとの契約が残っているため、KTMの契約が切れる7月以降での発表が予定されている。KTMとしてはマルティンを失うのはかなりの痛手のはずだ。
Avintia Ducati
・ヨハン・ザルコ
・ティト・ラバト(確定)
ヨハン・ザルコとDucatiが契約を行い、そのザルコを走らせるということもあって、Avintiaは正式にDucatiのサテライトチームになった。これによってAvintiaはDucatiから2名のトラックエンジニア、2名の電制エンジニアを獲得しており、ヨハン・ザルコも2021年は引き続きAvintiaからの参戦が予定されている。
ティト・ラバトは2021年までAvintiaと契約があるため、来年も引き続きAvintiaからの参戦となる。2014年にはMoto2クラスでチャンピオンシップ優勝をしているラバトだが、MotoGPでは目立った活躍がない。現在31歳だが年齢が上がると共に契約更新は難しくなっていくだろう。
KTM
レッドブルKTM・ファクトリー・レーシング
・ダニーロ・ペトルッチ
・ブラッド・ビンダー
ポル・エスパルガロを失うことになりそうなKTMファクトリーは、Ducatiファクトリーチームでシートを失うことになるダニーロ・ペトルッチとミーティングを行っており、既に契約の合意に近いとされている。エースとしてチームを引っ張ってきたポル・エスパルガロの離脱は大きいが、MotoGPクラスで優勝経験があるダニーロ・ペトルッチのことは評価しているようだ。
2020年からファクトリーチームでデビューとなったブラッド・ビンダーは、そのままファクトリーチーム残留の可能性が高い。充当に行けばミゲル・オリヴェイラがファクトリーチームに昇格するべきだったが、シーズン途中のヨハン・ザルコの離脱により、ビンダーがザルコのシートを得た形だ。
レッドブルKTMテック3
・ミゲル・オリヴェイラ
・イケル・レクオーナ
ミゲル・オリヴェイラは、本来ビンダー以前にファクトリー入りしていたはずだが、ザルコの離脱により色々と未来を狂わされたと言える。ポル・エスパルガロが抜け、ホルヘ・マルティンがPramacに加入するとなると、KTMは経験あるベテランと才能ある若手2人を同時に失うことになる。活躍次第では、ミゲル・オリヴェイラ、イケル・レクオーナには来年以降ファクトリーチーム加入の可能性が残されている。
アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ
・アレイシ・エスパルガロ(確定)
・ブラッドリー・スミス
アプリリアはアレイシ・エスパルガロと契約を更新し、今後のマシン開発においてもアレイシ・エスパルガロが中心となってチームを牽引していくことになりそうだ。新生RS-GPはプレシーズンテストで確たる速さを発揮していることから、細かいセッティングが煮詰まり、信頼性が向上していけばトップ10付近は十分に狙えるはずだ。
もう1人のライダーはアンドレア・イアンノーネで行きたいというのがアプリリアの方針だが、現在ライセンス停止中、シーズン開幕までにスポーツ仲裁裁判所(CAS)が結論を出さない可能性が濃厚であることから、テストライダーのブラッドリー・スミスが代わりに出場することになるだろう。
各チームが7月19日の開幕に向けて準備を進めているが、この開幕日までにもう少し様々な話が出てくることだろう。
(Photo courtesy of michelin, HRC, Pramac, Yamaha)