土曜日のティソ・スプリントで痛恨のミスを犯したアコスタだったが、日曜日は別人のような完璧な走りでMotoGP初優勝を飾り、悪夢を完全に払拭した。KTMのホームとなるオーストリアでの優勝で、来年Ducatiに移籍するアコスタがかねてからKTMに優勝をプレゼントしたいと語っていたものが実現した。

マルティンのリードは12ポイントに拡大
MotoGPで15度の表彰台を重ねながら最高位には届いていなかったアコスタは、ワールドチャンピオンシップ首位のホルヘ・マルティンをバトルの末に追い抜き、そのまま抑え切った。マルティンはカタール航空グランプリ・オブ・オーストリアで重要な2位を獲得し、マルク・マルケス(ドゥカティ・レノボ・チーム)が5位でフィニッシュしたことでタイトルリードを12ポイントに広げた。3位の座を射止めたのはマルティンのアプリリア・レーシングのチームメイト、マルコ・ベッツェッキで、ゴールラインではマルティンとわずか0.192秒差という緊迫したグランプリとなった。
スタート:アプリリア勢が夢のような発進
シグナルが消えると、アプリリア勢にとって夢のようなスタートとなった。マルティン、ベッツェッキ、小椋 藍(スーパーファイル・トラックハウスMotoGPチーム)がこの順で1〜3番手を占めた。一方、マルク・マルケスはやや出遅れたアコスタに1コーナーで抜かれるなど、オープニングラップ終了時点で3ポジションを失い4番手に後退した。
2周目の開始とともに、ベッツェッキがレースリードを奪いにかかった。1コーナーでチームメイトのマルティンをクラシックな動きで仕留めたかに見えたが、ポールポジションスタートのマルティンは3コーナーですぐさま首位を取り返した。その間、アコスタも着実に前へと進んでいた。6コーナーで小椋 藍をかわして3番手に浮上すると、すぐさまベッツェッキのRS-GPに迫っていった。
アコスタが前方へ、マルク・マルケスは後退
しかし、アコスタが後方に留まっていたのは長くなかった。4周目、スプリントでのミスから23時間後に同じ2bコーナーでアコスタが仕掛け、2番手を奪取。ベッツェッキは4周目の最終コーナーでコースを外れ、4番手の小椋 藍にさらに迫られる形となった。
7周目終了時点で、マルティンとアコスタはベッツェッキから1.5秒前方に出ており、ベッツェッキは小椋 藍の0.5秒前。小椋 藍には、現ワールドチャンピオンからのプレッシャーがかかり始めていた。
そして9周目、トップが入れ替わった。アコスタは1コーナーの立ち上がりから2aコーナーへの進入でマルティンを攻略し、初めてトップに立った。後方ではマルク・マルケスに注目が集まった。小椋 藍をかわして4番手に上がった直後、マルク・マルケスは1コーナーで大きく横を向いてコースオフ。これで4番手を失い、さらにブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリーレーシング)にも抜かれて5番手に後退した。
続く1コーナーでも失敗し、フェルミン・アルデゲル(BK8グレジーニ・レーシングMotoGP)にも先行を許して、マルク・マルケスは一気に7番手まで後退。
アコスタ対アプリリア、勝利をめぐる攻防
グランプリの折り返し点、28周のうち16周目に入った時点で、アコスタはマルティンに0.7秒差をつけてトップを走行。ベッツェッキはマルティンから約1秒遅れの3番手を維持していた。4番手の小椋 藍もベッツェッキから1.2秒差で表彰台争いに加わっており、アルデゲルとマルク・マルケスは5番手・6番手で小椋 藍から3.4秒後方に位置していた。
20周目、マルク・マルケスはアルデゲルをかわして5番手を奪い返した。しかし小椋 藍との差はすでに3.8秒に広がっており、ドゥカティのタイトル争いの主役にとって5番手が精一杯という状況だった。
一方、先頭集団では差が縮まり始めていた。アコスタは21周目に1分31秒台に入ったものの、リードは1秒超から0.7秒へと縮小。追う3台のアプリリア勢はいずれも1分30秒台後半で周回していた。4台の中で最速だったのは小椋 藍だった。
アコスタは次の周に反撃した。1分30秒693を記録し、マルティンとベッツェッキのファクトリーカラーのアプリリアを上回った。ただし小椋 藍は依然として前の3台をわずかに上回るペースを刻んでいた。
その後の数周でアコスタはペースを整え、リードは再び1秒を超えた。マルティンはチームメイトのベッツェッキから増すプレッシャーにさらされていた。最終ラップ。差は1.2秒。マルティンとベッツェッキの差は0.2秒。アコスタはRC16をクリーンな走りでゴールまで持ち込んで優勝を飾った。
アプリリア、タイトル争いで大きな一歩
予測不能なアジア連戦が始まる前に、マルティンとベッツェッキがオーストリアでダブル表彰台を獲得したことで、アプリリアにとってMotoGPタイトル獲得に向けた大きな一日となった可能性がある。マルティンはマルク・マルケスに12ポイント差をつけており、ベッツェッキは日本GP前の時点でトップから42ポイント差の3番手につけている。
オーストリアGP ポイント獲得ライダー
日本といえば、小椋 藍の復活も特筆に値する。ホームグランプリまで2週間を切ったタイミングで、表彰台から0.9秒差の4位という結果は申し分ない帰還となった。
スプリントで2位を獲得していたマルク・マルケスにとって、5位フィニッシュ・トップから7.3秒差という結果はやや予想外だった。1年前に2025年タイトルを決めたサーキットへ向かうにあたり、マルク・マルケスはチャンピオンシップリードの座を明け渡すこととなった。
ビンダーはアコスタの優勝を6位という今季最高結果で援護し、レッドブルKTMファクトリーレーシングの両サイドに大きな喜びをもたらした。フランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)はドゥカティ勢2番手の7位でフィニッシュした。
接触を引き起こしたとしてレース後に3秒のペナルティを科されたアルデゲルはドゥカティ勢3番手の8位。ファビオ・ディ・ジャンナントニオ(ペルタミナ・エンデューロVR46レーシングチーム)は静かな週末を9位で締めくくった。ヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)がオーストリアGPのトップ10を締めくくり、エネア・バスティアニーニ(レッドブルKTMテック3)、ラウル・フェルナンデス(スーパーファイル・トラックハウスMotoGPチーム)、ジョアン・ミルの代役タカアキ・ナカガミ(ホンダHRCカストロール)、ルカ・マリーニ(ホンダHRCカストロール)、ディオゴ・モレイラ(プロ・ホンダLCR)が残りのポイントを獲得した。
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近DucatiモンスターS4Rに乗り換えました。