7月1日のオランダGPを5位で終えたバレンティーノ・ロッシが最後にMotoGPにおいて優勝したのは丁度1年前のオランダGPでしたので、これでロッシは1年間最高峰クラスで優勝がないことになります。過去を振り返るとロッシにとって最も優勝から遠ざかったのはDucatiで過ごした2011年と2012年で、この間ロッシの優勝数はゼロ、表彰台も2011年に3位を1度、2012年に2位を2度獲得したのみでした。
昨シーズンはオランダGPでの優勝のほか、2位を3回(アルゼンチン、アメリカ、オーストラリア)、3位を2回(カタール、イギリス)獲得しています。今シーズンは優勝、2位は今のところなく、3位を4回獲得し、チャンピオンシップにおいて2位としています。
ロッシは今年3月にヤマハとの2年間の契約延長を発表、2020年まで現役続行を発表しました。2月16日が誕生日のバレンティーノ・ロッシは現在39歳ですので、2020年には41歳を迎えることとなります。契約更新前から「戦闘力がある限りは現役続行する」と語っており、実際に現時点でもランキング2位、しかもマシンの方向性で苦戦が続くヤマハライダー達の中では最高位を獲得しているわけですから、その戦闘力がトップレベルであることは明らかです。
では、2020年末に41歳の時点でバレンティーノ・ロッシに戦闘力はあるのでしょうか?今までの戦績や走りからすると、戦闘力が無いことを想像するのが難しいですし、「レースで優勝したい」というそのモチベーションが低下するとも到底思えません。
ロッシからラモン・フォルカダへのオファー
なぜロッシのモチベーションが下がっていないと言えるのか?それは最近ロッシがロレンソの元チーフメカニックであるスペイン人のラモン・フォルカダにオファーを出しているという話があるからです。ロッシは2014年シーズンからそれまで長年連れ添ったチーフメカニックであったジェレミー・バージェスに別れを告げ、2014年からシルヴァーノ・ガルブゼラをチーフメカニックとして採用しました。
この当時もロッシは「新しい環境が必要で、新しいモチベーションがいる」とバージェス解任の理由を説明していましたが、ロッシは実際に2014年シーズンから完全復活を遂げ、実際に表彰台獲得数も2013年の6回から2014年には13回と2倍以上になっています。
ロッシは現在も自身10度目となるタイトル獲得のため、そして優勝するためにレースを続けているわけですが、今回ロレンソの元チーフメカニックであるスペイン人のラモン・フォルカダにオファーを出しているということは、やはり「新しい環境が必要で、新しいモチベーションがいる」ということなのでしょう。
2021年のシナリオを深読みする
バレンティーノ・ロッシはMotoGPライダーとして現役を引退した後、自身のVR46を率いてMotoGPクラスへと参戦するのではないか?と長年言われています。現時点ではそういった話はあくまで噂レベルで、ロッシ自体も何度か「現在計画にはない」と述べていますが、MotoGPの人気を一手に牽引してきたスターライダーであるバレンティーノ・ロッシがMotoGPを引退するとなると、なんとかして、ロッシをパドックに引き止めたいとMotoGP運営元のドルナが考えるのは自然でしょう。
そういった意味からもロッシがVR46をMotoGPクラスでも走らせる可能性は高いと言えますが、1つ気になるのが、7月6日にヤマハが発表したセパン・インターナショナルサーキット(SIC)との契約期間です。この新しいサテライトチームはマレーシアの国営企業である石油大手ペトロナスをメインスポンサーに迎えたサテライトチームとなるはずですが、ヤマハとSICの契約期間は2019年から2021年の3年間となっており、バレンティーノ・ロッシが2020年末で仮に現役を引退、2021年からVR46がサテライト参戦をするとなると、グリッド上にはファクトリーヤマハ、ペトロナスヤマハ、VR46という3つのチームが並ぶこととなります。
リン・ジャービスは3つのチームが存在する事について可能性レベルの話として「そういったこともあり得る」といった話も過去にしていましたが、実際問題として2021年にヤマハが2つのサテライトチームを走らせるという未来はあまり想像がつきません。とは言え、2021年時点で考えられるシナリオとしては
といったところでしょうか。おそらく今週末に発表となるであろうSICペトロナスヤマハについても楽しみですが、今後本当にロッシが引退するのか?VR46は本当にMotoGPクラスに参戦するのか?だとしたらいつからなのか?といった点も、今後のMotoGPにおいてまだまだ楽しみな話題だと言えるでしょう。
(Photo courtesy of michelin)