優勝の経験はまるでドラッグ

マルク・マルケスは最終戦を前にインタビューに答え、Gresiniに移籍した今年1年を振り返った。ホンダで負った怪我から、繰り返した手術でも競争力を取り戻すことが叶わず、原因は自分かバイクかと考える中で、ファクトリー契約ではない状態で、1年型落ちのDucatiに乗るという大胆な選択をしたマルケス。その後の復活劇は誰もが知るところだが、優勝から遠ざかっていく感覚、そしてそれを再び感じることが出来た感覚、さらに求めていく感覚などを語った。来年はいよいよフランチェスコ・バニャイアのチームメイトとして、Ducatiファクトリーからの参戦となるが、引き続きステップ・バイ・ステップで競争力を高めて2025年、2026年のタイトル争いをする姿に大いに期待したい。

マルク・マルケス

「昨年移籍をしたわけですが、この移籍自体が大成功でした。これが1年遅れていたらリタイアをしていたでしょうから。1年前は自分に対して多くの疑問がある中でした。しかし1年が経過して、これらの疑問がすべて消え、競争力を取り戻したと言えるでしょう。もちろん2019年のような戦闘力ではありません。引き続きプッシュし続ける事、作業し続けることが出来る戦闘力で、そして優勝、表彰台を再び経験することが出来ました。加えてMotoGPのトップレベルで戦うという集中力、そしてそのスピリットを再び感じることが出来ました。」

「優勝という経験から長らく遠ざかっていると、その感覚を忘れてしまうんです。でも、この優勝という経験をアラゴン、ミサノで経験した後は、さらにこの経験が欲しくなります。まるでドラックですね。もっともっと際限なく欲しくなるんです。」

「自分はこの優勝という経験を2倍楽しんでいると思っています。今までの自分にとって優勝は当たり前のことでした。でも、今はこの優勝が特別なものなんだとわかっています。物事の見方が変わりましたし、優勝は多くの自信を与えてくれるんですよね。数年間苦しんで、腕を4回手術して、それでも結果を得ることが出来なくて、自信を失っていきました。その原因がバイクなのか自分なのかフィジカルコンディションなのかわからず、こうなっていた状況を、レースを重ねること、ポールポジション、表彰台、優勝で塗り替えていったんです。」

「まだ最後の段階での調整が残っていると感じています。戦闘力は非常に高いのですが、苦戦する局面もあります。そうした局面で自信をさらに持つことが出来れば、苦戦が減っていくはずです。こういった形で作業を続けていきたいですね。」

「来年に向けてはステップ・バイ・ステップで進んでいきたいと思っています。プレッシャーもありますし、期待は大きい状況です。Gresiniに移籍が決まった段階でもDucatiに乗るなら優勝を連発すると言われていましたが、そんな簡単にはいきません。優勝するにもシーズン半分までかかりましたからね。」

「来年も最も競争力が高いバイクで走るわけですから、優勝はより近づくとは言えますが簡単ではありません。来年もペッコが参照するべき選手でしょうね。来年はペッコとチームを助けながら、彼のレベルに到達することが目標です。」

「来年は2人でタイトル争いが出来ればと思います。これは自分達の競争力が高いことを意味しますし、ベストバイクである証明になります。Ducatiのことを信頼していますし、ジジ・ダッリーニャを始めスタッフにも信頼を置いています。来年含めて2年間は最高のバイクであることは間違いないでしょうが、その先はわかりません。」

「いずれにしてもペッコとはプロフェッショナルな関係である必要があります。互いにDucatiを助けること、ベストバイクを作ること、タイトルを獲得すること、これは自分でも彼でもどちらでもです。多くの期待はあると思いますが、若い才能も育っています。」

「素晴らしい才能がすでにいる状況ですし、こういったスポーツですから全盛期というものがあります。いつしか衰えがくる中で、若い才能が伸びてきて、いつかは追い抜かれるわけです。可能な限り競争力を保っていきたいと思っています。1年、2年前は多くの人、自分でさえもマルク・マルケスは終わったと思っていました。」

「ただ、いずれ必ず引退をするわけですから、その前に挑戦しなかった後悔を残したくなかったんです。自分は当時自分が持っていた手札をすべて使って競争力を感じること、優勝すること、タイトルを毎年争う可能性にトライしたんです。」

(Photo courtesy of Gresini)