フロントタイヤに新開発ハードを投入、リアは右側強化の非対称構造を採用
ミシュランは、MotoGP世界選手権第3戦「レッドブル・グランプリ・オブ・アメリカズ」に向け、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)専用に最適化されたMICHELIN Power Slickタイヤの配分内容を発表した。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA):極限を試すテキサスの舞台
テキサス州オースティン近郊に2010年代初頭に建設された。サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)は、2013年から毎年MotoGP™を開催している名物サーキット。観客収容数は最大12万人を誇り、全長5.513kmのコースには右9、左11の合計20のコーナーが配置されている。
COTA最大の特徴は、1コーナーに向かって40メートルの急勾配を一気に駆け上がる激しい高低差と、1,200メートルに及ぶロングストレート。このストレートではマシンが時速350kmを超える速度に達し、MotoGP随一の高速セクションとなっている。また、ターン17内側にそびえ立つ高さ49メートルの展望タワーも、COTAを象徴するランドマークとして知られている。
2025年もこのCOTAが、タイ・ブリラム、アルゼンチン・テルマス・デ・リオ・オンドでの開幕2戦を経た第3戦の舞台として選ばれた。今季初の北米ラウンドで、各陣営がどのようなパフォーマンスを見せるか、注目が集まる。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)は近年、複数回にわたる再舗装作業が実施されてきた。特に今回対象となったのは、ターン1〜2、ターン11〜12、そしてターン19〜20の区間。これら初期および終盤セクションには新しいアスファルトが敷設され、最も深刻だった路面の不陸(バンプ)はある程度解消された。
しかし、地盤自体の不安定さにより、コース全体としては今なおバンピーな性質を色濃く残している。また、使用された濃い黒色の新舗装材は太陽熱を吸収しやすく、路面温度の上昇とそれに伴うタイヤ摩耗の加速という新たな課題も生じている。
これらのコンディションに対応するため、ミシュランはCOTAの特殊な要求に合わせた専用のタイヤアロケーションを慎重に選定。従来のデータと経験に基づきながらも、路面の変化とセクションごとのグリップ差という新しい変数にも配慮した構成となっている。


ピエロ・タラマッソ(ミシュラン 二輪モータースポーツ部門責任者)
「COTAでの経験は豊富にありますが、今年の部分的な再舗装とグリップレベルの差異が、新たな対応を必要としています。アスファルトの攻撃性は中程度であると評価していますが、再舗装が行われたとはいえ、依然として不規則な路面の特徴は残っています。そのため、タイヤの剛性バランスを維持しながらも、アロケーションの調整を行いました」
ミシュランは、こうした路面状況の変化にも柔軟かつ科学的に対応し、安全性・パフォーマンス・耐久性を両立させる供給体制を構築。激変するCOTAのコンディション下でも、ライダーたちが全力で走り切れる環境を提供する。
COTA専用MICHELIN Power Slick構成
ミシュランは、2025年アメリカズGP(オースティン)に向けたMICHELIN Power Slickタイヤのアロケーションを正式に発表。再舗装されたCOTAの特性と厳しい負荷条件に対応するため、フロント・リアともに専用構成が採用される。
■ フロントタイヤ:対称構造(Soft / Medium / Hard)
- 全3種類(ソフト・ミディアム・ハード)とも対称構造
- ハードには2025年仕様の新コンパウンドを採用し、再舗装路面や高い入力に対応
■ リアタイヤ:非対称構造(Soft / Medium・右側強化)
- ソフト・ミディアムともに右側を強化した非対称構造
- コースは反時計回りであるにもかかわらず、ターン16〜18の3連続右コーナーにおける高ストレスに対応するため、右側強化が必須
オースティンの気候は、3月は一般的に乾燥しており、日中の平均気温はおよそ25℃(77°F)。しかし、ミシュランはウェットコンディションにも備えており、MICHELIN Power Rainレンジを用意している。フロント用は対称構造のソフトとミディアム、リア用は右側を強化した非対称構造のソフトとミディアムが提供される。
ピエロ・タラマッソ(ミシュラン 二輪モータースポーツ部門責任者)
「このサーキットはフロントタイヤに大きな負荷をかけますが、特定の片側だけが極端に摩耗するわけではないため、フロントは対称構造のままにしています。一方でリアタイヤに関しては、COTA特有の右コーナー連続区間が非常に高いストレスを与えるため、右側を強化した非対称構造を採用しました。昨年はこのタイヤ構成で、我々のパートナーたちが複数の記録を打ち立てました。今年も同様に、ライダーたちが最高レベルのパフォーマンスを発揮できる環境を提供できると確信しています」
2025年レッドブル・グランプリ・オブ・ザ・アメリカズ スケジュール
2025年のレッドブル・グランプリ・オブ・ザ・アメリカズは、3月28日(金)に開幕。午前10時45分〜11時30分(現地時間)に最初のフリープラクティス(FP1)が行われ、午後3時〜4時のセッションでは、予選Q2に直接進出する上位10名が決定される。
3月29日(土)の午前には、最終フリープラクティス(FP2)が10時10分〜10時40分に実施。続く予選Q1(11時15分〜11時30分)では、さらに2名のライダーがQ2進出のチャンスを得て、最終的なグリッドが確定する。
同日の午後3時からは、Tissotスプリント(10周)が開催。
そして決勝レース(20周)は、3月30日(日)午後2時にスタート予定。
(Photo courtesy of michelin)