ホルへ・ロレンソのヤマハテストライダー就任の話は噂レベル
ホルへ・ロレンソがヤマハでテストライダーとして復活するという噂がでている。この手の情報は明確になるまで確たるソースが出てこないことから、ロレンソのPramac加入の動きや引退についても、明確になってはじめてその事実が確認されたというケースが過去にもあった。
であるからして、ホルへ・ロレンソがヤマハのテストライダーに就任するという話も、どこまでいっても噂の域を出ない。では実際にリン・ジャービスはヤマハのテスト体制についてどう考えているかということは、既に当サイトでお伝えしているとおりだ。その中で、リン・ジャービスは2020年体制については次のように語っている。
リン・ジャービス
「2020年は1つのテストチームが世界中でテストを行うことになります。日本人チームでもヨーロッパチームでもなく、単純にテストチームという位置づけです。今後日本人以外にテストライダーを入れるかどうかは未定ですが、ヤマハに不足しているのは、グランプリライダーがグランプリトラックでテストするという経験なんです。テストライダーのレベルの引き上げをしてくれる速いライダーが必要であることは間違いありません。」
リン・ジャービスのこの発言から読み取れるのは、日本人(中須賀、野左根)以外のグランプリライダーを加入させたいという思惑で、その最有力候補であったヨハン・ザルコがDucatiと契約してしまった以上、現在最も有力な候補として考えられるのはホルへ・ロレンソであるというのは間違いない。
5体満足で引退出来たことをロレンソは喜んでいた
ヤマハの状況から考えると、ホルへ・ロレンソがテストライダーとして最適であることは間違いない。しかし、ホルへ・ロレンソ自身のフィジカル、メンタル面を考えると、噂ばかりが先行しているような気がしてならない。
シーズンオフからインドネシアでゆっくりと体を休めたホルへ・ロレンソが、体の調子が良くなるにつれて再び走りたいという思いを持ったとしても不思議ではないが、今年ホルへ・ロレンソが負った怪我は、最悪の場合、下半身不随などの危険があった怪我で、ロレンソ自身も引退の際に5体満足で引退出来たことを喜んでいる。
ホルへ・ロレンソ
「フィニッシュラインを通過した時に、大きな喜びと自由を感じました。このスポーツを健康な状態で終えることが出来、これからの人生も楽しめますからね。今まで多くの犠牲を払ってきました。今もこうして背中の痛みを抱えているわけですしね。」
現在はスイスの自宅に戻っている様子のホルへ・ロレンソだが、一度でも事故で骨折の経験があればわかるように、冬の時期、寒さで古傷はキリキリと痛む。
ロレンソにしても例外ではないはずで、17年間世界を転戦する中で負った傷、そして今年痛めた脊椎の怪我も、部位としては完治という診断が出たとしても、寒さ、低気圧の際は不快な痛みがずっと残るものだ。(※定期的な神経ブロック注射という手もあるが。。)
ライバルと戦うわけでもなく、チャンピオンシップ優勝を目指すわけでもないが、バイクを限界までプッシュする必要があるテストライダーというオファーを、こうした痛みを抱え、再び怪我をするリスクを冒してまでロレンソが受けるというのは少し考えにくい。
今のホルへ・ロレンソが、ヤマハのM1で速いという保証はない
ホルへ・ロレンソは2008年にヤマハからMotoGPクラスデビュー、2016年まで9年間ヤマハで走り、その間に2010年、2012年、2015年と3度の世界チャンピオンを獲得している。2017年、2018年はDucatiから参戦し、2019年はホンダで走り今シーズン末で現役を引退している。
ロレンソがヤマハのYZR-M1で走らなくなって3年間が経過しており、次々に新しい流れが生まれ、それについていかなくては取り残されるMotoGPという世界において、3年間のギャップは実に大きく、YZR-M1 2020年型プロトタイプは、ホルへ・ロレンソが慣れ親しんだM1ではなくなっているのは間違いない。
仮にロレンソがある程度バイクとの信頼を取り戻せるとしても、来年33歳となり、また致命的な怪我をするかもしれないという心理的なブレーキがかかった状態で、リン・ジャービスがグランプリライダー出身のテストライダーに求めるほどにバイクを限界までプッシュ出来るだろうか?誤解を恐れずに言うならば、今のホルへ・ロレンソには、かつてヤマハのM1で見せたような輝きは無いかもしれない。
4名のヤマハライダーの誰に寄せた開発をするのか
ロレンソがヤマハでテストライダーとして復活するなら喜ばしいニュースではあるが、現在ヤマハのM1を走らせるバレンティーノ・ロッシ、マーべリック・ビニャーレス、フランコ・モルビデッリ、ファビオ・クアルタラロの4名のライディングスタイルはそれぞれに異なっている。
フランコ・モルビデッリによると彼とロッシのスタイルは比較的似ているというが、バイクをねじ伏せるような走り方をするビニャーレス、4名の中では一番ロレンソに似ているとされるファビオ・クアルタラロと、誰に合わせてバイクを開発していくのかという問題は残る。
リン・ジャービスはマーべリック・ビニャーレスに関しては2021年以降もヤマハで走ってもらいたいと明言しているため、バイクの開発の優先度としては、ビニャーレス、将来が期待されるクアルタラロのフィードバックに応える形で開発の優先度が高くなるが、ロッシの影響度は引退が近いとしても変わらずに大きいはずだ。
ロレンソがテストライダーとしてヤマハに復帰するというのは面白い話題だが、冒頭に述べたように、実際に発表があるまで真実かどうかはわからない。
命の危険を冒さずとも、スペイン語、イタリア語、英語が堪能なホルへ・ロレンソはTV解説者としても引く手数多だろうし、多くの若手ライダーから慕われる彼ならば、ライダーコーチにも適任だ。
近く自身の将来について発表するとロレンソも語っているため、彼からのビッグニュースに期待しよう。
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(Photo courtesy of michelin)