ヤマハのモーターレーシング・マネージングディレクターであるリン・ジャービスは、今年は昨年と大きく結果は変わっていないとしながらも、ヤマハとしてレース参戦のための内部体制は大きく変わったと語る。また、ザルコをテストライダーとして採用するなどの話題がシーズン中に飛び交ったテストチームに関しても、日本とヨーロッパでチームを分けず、1つのチームでテストを行っていく体制になっているとしている。

昨年の冬(2018年)に大きく内部体制を変えた

リン・ジャービス

「昨年と比較して成績は大きく変わっていません。しかしヤマハは内部体制として大きく変わっています。プロジェクトリーダーに鷲見さんを起用し、後半戦はどのトラックでも4名のヤマハライダーがトップ付近で走行する姿が増えています。しかし、パワーとトップスピードで苦戦しており、特にホンダ、Ducati相手に苦戦してしまっています。こうした厳しいレースの中でマーべリック・ビニャーレスは優勝を獲得し、バレンティーノもスピードを発揮しています。レベル自体は昨年と同様ですが、内容としてはもう少し楽観的に考えています。」

2016年終わりから2017年にかけては間違った方向に進んでしまった1年でした。確かにマーべリックが優勝を重ねましたが、間違った方向にこれから進もうとしている中での勝利だったわけです。その後シーズン中はどんどんと間違った方向に進んでしまいました。問題は開発のそれぞれのパートが噛み合っていなかったことで、シャーシ、電子制御、エンジンがそれぞれ独立して作業していたんです。」

「昨年冬にこのやり方を変え、全ての部署が協力してエンジニアリングをやるという体制にしたんです。まさにリセットと言えるでしょうね。エンジニアの顔ぶれ自体はほぼ変わっていませんが、やり方を大きく変えました。まさに“Don’t leave any stone unturned”(問題解決のためには、あらゆる手段を講じるということ)と言えるやり方を取るようにしたんです。問題は全て解決する、内部で解決方法が見つからなければ外部でソリューションを見つけるということなんです。

今後は1つのテストチームが世界中でテストを行う

「テスト体制については、今までも日本人テストライダーと一緒に開発を進めてきました。誰かをクビにしたり、新たに採用したりはしていないんですよ。テストはヤマハのテストコース、それからもてぎでテストするケースもありますが、基本的に中須賀と野左根というラインナップです。しかしヤマハに不足しているのは、グランプリライダーがグランプリトラックでテストするという経験なんです。

「昨年はこの体制を新たにし、既存のスタッフ、エンジニアに加えて、テストライダーとしてジョナス・フォルガーを入れました。来年はどうしていくか検討しているところですが、エンジン開発は重要になっていくでしょうね。昨年はこの体制で問題があり、日本でテストする際、ヨーロッパでテストする際でスタッフが異なっていたんです。そのため、同様のフィードバックを理解するにも、作業のやり方が異なっているため、比較が難しいという問題があったんです。」

2020年は1つのテストチームが世界中でテストを行うことになります。日本人チームでもヨーロッパチームでもなく、単純にテストチームという位置づけとし、こうした体制の変更もあったので、ジョナス・フォルガーを起用しないという決定になったんです。今後日本人以外にテストライダーを入れるかどうかは未定です。しかしテストライダーのレベルの引き上げをしてくれる速いライダーが必要であることは間違いありません。全てがフィックスしているわけではありませんが、1つのテストチームが世界中でテストするという体制は決定しています。

(Source: yamaha-racing)

(Photo courtesy of michelin)