
ホンダは、2026年MotoGPフランスGPが開催されたル・マンと、ポール・リカールで行われた「Sunday Ride Classic 2026」において、同社の豊かなモータースポーツ史を象徴する歴代マシンとともに、新型CB1000Fを披露した。イベントでは、1985年型NSR500、CB750Fデイトナ、さらにRC174とRC166のマン島TTレプリカが展示。現代版クラシックスポーツとして登場したCB1000Fも並び、ホンダのレースDNAと市販車の系譜を印象づけた。
中心人物となったのは、1985年に500ccと250ccのダブルタイトルを獲得したフレディ・スペンサー。当時、レース間で表彰台から次のスタートへ駆け込むほど過密なスケジュールの中で成し遂げた偉業は、今なおGP史に残る伝説となっている。
フレディ・スペンサー
「1985年のNSR500はすべてを変えました。ジオメトリー、テスト方法、そしてライダーとの一体感、そのすべてを再定義したんです。再びこのバイクに乗ると、まるで家に帰ってきたような感覚になります。これは単なるバイクではありません。自分自身の一部であり、その後の世代のレーシングマシンにも大きな影響を与えました。」
NSR500はホンダ初のV4・2ストロークGPマシンであり、現在のMotoGPマシンRC213Vへと続く技術的礎を築いた存在でもある。
ル・マンでは、2018年WorldSSP300王者であり、女性初のサーキット世界選手権王者となったアナ・カラスコも参加。Moto3で80戦以上を経験したカラスコは、NSR500試乗を前に特別な感情を語った。
アナ・カラスコ
「レース前よりも、このバイクに乗るほうが緊張しています。一生に一度の体験です。今はデータや電子制御に頼っていますが、このマシンでは感覚と一体感がすべてになります。それが本当の挑戦であり、特別な経験です。」
イベントでは、ホンダコレクションホールによる歴史的マシン維持活動にもスポットが当てられた。1998年設立の同施設では、150台以上の展示車両に加え、多数のレーシングバイクや市販車を動態保存している。
藤井氏
「我々の目標は歴史を生かし続けることです。ただ展示するだけではなく、実際に走らせることに意味があります。数か月で復元できるバイクもあれば、数年かかるものもあります。しかし哲学は同じです。すべてのマシンを、生きたホンダエンジニアリングの証として残していくことです」
500cc時代からホンダに関わる和栗氏も、当時の開発環境を振り返った。
和栗氏
「当時はマニュアルなど存在しませんでした。過去のエンジニアが残した図面や手書きのメモを頼りにしています。その知識を次世代へ受け継ぐことが、これらのバイクを生かし続けるために不可欠です」
さらに、元レプソル・ホンダMotoGPメカニックで現在もHRC開発チームに所属する宇治野氏は、現代と2ストローク時代の違いを説明した。
宇治野氏
「現在はテレメトリーや封印エンジンがあります。しかし2ストローク時代のメカニックは、音や振動、さらには匂いまで含めてバイクを読み取る必要がありました。求められる理解のレベルがまったく違いました」
また、スペンサーは日本で試乗したCB1000Fについても高く評価した。
フレディ・スペンサー
「最も印象的だったのはライダーとのつながりです。血統を感じられますし、そこに現代技術による安定性や扱いやすさが加わっています。ホンダは常に、限界まで攻めてもライダーを受け止めてくれるバイクを作ってきました。CB1000Fはその哲学を美しく受け継いでいます。」
イベントを主催したホンダ・モーター・ヨーロッパ・フランスのジュリアン・ムンツァー氏は、その意義を次のように語った。
ジュリアン・ムンツァー
「これは単なるノスタルジーではありません。我々の歴史が、現在のエンジニアリングにどう影響しているかを示すものです。これらのバイクは過去の遺物ではなく、今もホンダのアイデンティティを形作っています。」
進化を続けるMotoGPの中で、今回のイベントはレースの原点と、それを支えてきた創意工夫を改めて示す機会となった。
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近DucatiモンスターS4Rに乗り換えました。