前回スティリアGPでマーべリック・ビニャーレスがブレーキトラブルに見舞われ、ブレーキが効かない車両から飛び降りるという一幕があった。しかしブレンボのエンジニアに言わせると、マーべリック・ビニャーレス本人とチームには、2020年の新型キャリパーの使用を提案しており、直接的な転倒の原因となったブレーキトラブルは、彼らの選択ミスにあると語る。
ビニャーレスは旧型キャリパーを選択した
Bremboエンジニア アンドレア・ベルガミ
「スティリアGPにおいてマーべリック・ビニャーレスのバイクにブレーキトラブルが発生したのは、レースで使用したキャリパーの選択ミスによるものです。ヤマハ側にも、どのキャリパーを使用すべきであるかを伝えていました。あのトラックコンディションにおいて最適な選択は2020年型のキャリパーだったんです。」
「しかしレースウィークの中で、どのスペックの製品を使用するかの決定権はチームにあります。そしてその決定に我々が異を唱えることは出来ません。2020年型キャリパーを使用するべきと提案していましたが、最終的にマーべリック・ビニャーレスのチームと彼自身が誤った選択をしたということです。そしてスティリアGPの赤旗はこの誤った選択によって発生したものでした。」
「もちろんマーべリック・ビニャーレスに起きたことは残念ですし、すべてのライダーにはブレンボのブレーキングシステムに満足してほしいと願っています。彼はこの選択のつけを払ったとも言えますが、ヤマハ、バレンティーノ・ロッシも、ブレンボの2020年型のブレーキングシステムに関しては大いに満足していましたね。」
MotoGPバイクはどんどん速くなっている
「新型キャリパーを投入したのは、MotoGPバイクが年々速くなっているからです。ですからコンスタントなパフォーマンスを発揮するために、ブレーキキャリパーの冷却性を高める必要がありました。特にトラック気温が高い時は、ブレーキングシステムの冷却が難しくなるんですよ。」
「大きな改善点はキャリパーに冷却フィンがついたことで、スピルバーグでは多くのバイクがフィン冷却用のダクトを装備していました。フィンが冷却されることでキャリパーの温度が下がるわけです。キャリパー温度が下がると、パッドのカーボン部材の温度も下がり、ディスクも適切な温度で使用されるようになります。」
「Ducati、LCRホンダ、スズキは他のトラックでも新型キャリパーを使用しています。しかしおそらくオーストリアでのレース以降は、ほぼ全員がミサノから新型キャリパーを使用するようになるのではないかと思っています。一度その優位性を感じた後は、旧型を使用したいと思わないはずです。」
さらなる進化型キャリパーの開発も進んでいる
「もちろんさらなる進化型についても検討しています。バイクの性能の進化は止まりませんからね。新型システムのパフォーマンスには満足していますが、すでにその先の開発も進めており、2021年中盤には投入出来る見通しです。」
「いつ完成するのかについてはなんとも言えません。このシステムがいつ必要になるかにも関わっているんです。前回も最もブレーキシステムに厳しいトラックでの2連戦でしたが、その中で新型システムは素晴らしい性能を発揮しています。ですから現時点では投入を焦っていません。しかし、いずれにしても来シーズン中盤には、さらなる進化型のシステムを披露したいと思います。」
(Source: Brembo)
(Photo courtesy of Michelin)