フィジカルコンディションとしては苦戦しないかもしれないとレース前に語ったマルク・マルケスだったが、10連勝を続けてきたドイツのザクセンリンクで11連勝を達成した、キャリアが終わってしまうかもしれないほどの酷い怪我を、多くの人達に支えられながら乗り越えてきた。未だ腕、肩の調子は100%ではないが、得意のザクセンリンクで雨が降り出したタイミングを好機と捉えて最後まで力強く走りきった。[adchord]
自分のキャリアの中で最も辛い時期だった
マルク・マルケス
「自分のキャリアの中でも最辛い時期でした。その中で3連続で転倒して迎えた週末でした。フィニッシュラインを通過した時には、自分がここまで復活するのを助けてくれた多くの人達のことを考えました。チーム、ドクター、理学療法士、マネージャー、家族、有人達が一緒になって助けてくれました。何よりも自分を常に支えてくれたホンダには感謝してもしきれません。自分だけでなくHRCにとっても重要な勝利でした。」
「木曜の時点でフィジカル面で今までよりも楽になるかもと語っていました。右コーナーが少ないので、苦戦してタイムを失う区間が短いわけです。左コーナーでは100%でも走行出来ていませんが、より自然なライディングが出来ますから。」
「今日は完璧なスタートから1周目も素晴らしかったですね。雨が降り出してからは”今日はもらった”と思いました。完全にドライだと今までと同じ走りは出来ませんが、この状況ならギャップを開いていけると思ったんです。ミゲルが追いついてきた時は難しいかと思っていました。自信はありましたが、3戦連続で転倒したことが頭をよぎっていましたので、優勝と同時に完走することも絶対に成し遂げたかったんです。」
ミック・ドゥーハンの言葉が助けになった
「怪我をして復帰前は必ず戻ってくると誓っていました。しかしポルティマオで初めてMotoGPバイクに乗った時は、自分がいかにトップレベルから遠ざかっているかを実感しました。こうした状況では外部からのノイズを遮断することが必要で、自分自身と自分の見方の言葉だけに集中していました。」
「大きな助けになったのはミック・ドゥーハンからの電話です。彼は自分と同じく、92年、93年に酷い怪我から復帰したチャンピオンで、彼に必要な心構えを全て教えてもらいました。彼とはムジェロでも会っていましたが、彼との30分の電話の中で、彼が経験して自分が感じていることを共有しました。思うようにライディング出来ないこと、転倒、愚かなミスなど、まさに彼が経験したことと同じだったんです。本当に大きな助けになってくれました。」
「今回の優勝はチームにとっても重要でした。大きな怪我の後にはこうした結果が必要ですね。今日はここまで無理せず表彰台で終えることも出来ましたが、それは自分ではありません。今日はこれで転倒していたら、また多くの批判があったでしょうが、自分の直感を信じました。」
「それに火曜にアルベルト・プーチから電話があって、”今週待ち受けていることがわかるか?君ならやれるはずだ。”とストレートな電話をもらいました。エミリオは”無理するな”と言っていましたが、完璧なスタートの後に雨が降り出したのを見て、”これなら行ける”と直感したんです。」
「肩の調子は痛みがありますね。それは今回はフルレースを完走したからもあります。今までは3戦連続で完走していませんでしたから。次回のアッセンはフィジカルにはより厳しいですから、苦戦するとは思います。」
「特に今回の結果に大きく影響したのはカタルーニャテストですね。このテストでは時間をかけて自分が乗りたいようにバイクに乗って、バイクの理解、タイヤの理解を深めることが出来ました、自分にとってはまるでプレシーズンテストのような内容だったんです。」
「昨年の10月、11月あたりは腕の感染症と戦っていたので、そもそもレースが出来るかどうかではなく、腕が大丈夫かどうかという心配をしていました。3度目の手術の後は状況が好転しましたが、それまでは本当に辛かったです。」
(Photo courtesy of HRC)