プラマック・ヤマハMotoGPチームは、世界選手権第8戦となるアラゴンGPに向けてスペイン・アルカニスへ出発した。直近の数戦で見せた明確な進歩を、過酷なモーターランド・アラゴンで裏付ける意気込みだ。ジャック・ミラーはイギリスGPで長時間にわたり表彰台争いを繰り広げ、最終的に7位でフィニッシュ。今週末も上位争いを視野に入れている。一方、ミゲル・オリヴェイラは負傷からの復帰後3戦目。フィジカルの回復とYZR-M1のパフォーマンス引き出しに注力している。
モーターランド・アラゴンは、長いバックストレートと低速コーナーが連続するコースレイアウトで、強力な加速力とマシン全体のバランスが求められる。ヤマハにとっては、これまでのヘレス、ル・マン、シルバーストンといったマシン特性に合ったサーキットとは異なる“試練”となる。
ブレンボによると、アラゴンはブレーキング負荷が高いコースの一つであり、1周中に10か所のブレーキングゾーンが存在。そのうち3箇所がハード、3箇所がミディアム、4箇所がライトに分類され、ライダーは1周あたり30.5秒をブレーキに費やす。ターン1では時速293kmから93kmまで、わずか4.7秒で減速。ブレーキレバーには4.9kgの力がかかり、減速Gは1.5Gに達する。カーボンディスクの温度は500°Cを超え、ブレーキフルードの圧力は10.6バールに達する。
ミラーはMotoGP初期にはこのコースで苦戦していたが、2019年にプラマック時代に3位表彰台を獲得。その後も2020年に6位、2021・2022年には5位と着実に成績を上げており、いずれも予選2番手からのスタートだった。オリヴェイラも同様にこのコースでの実績を持ち、Moto3時代には2015年に優勝。Moto2では2017年に表彰台(3位)を獲得し、MotoGPでも2020年に6位を記録。決勝での成績だけでなく、予選でもMoto2でポール、Moto3で2番手を記録している。ランキングでは、ミラーが29ポイントで16位、オリヴェイラが2ポイントで23位。チームとしては総合11位につけている。

ジーノ・ボルソイ(チームディレクター)
「アラゴンはデータの上では、ヤマハの近年のアップデートが真価を発揮できるコースです。ただし、実際にタイムを見てみるまでは何も断言できません。過去数戦の流れから、M1は挙動面でもパフォーマンス面でも安定してきているのは明らかで、クアルタラロの3戦連続ポールポジションがその証明です。予選での進歩ははっきりしています。今後の課題は決勝ペースの改善です。アラゴンの後には重要なテストも控えています。月曜にはアラゴンで公式テスト、そして水・木曜にはモントメロでヤマハのプライベートテストを行い、さらなるアップデートを試す予定です。」
ジャック・ミラー
「アラゴンに戻るのが楽しみです。去年コースが再舗装されていて、そのときはまだ路面が安定していなかったけれど、今回はグリップが良くなっていることを期待しています。最近はバイクの調子も良く、アラゴンは確かにロングストレートが厳しいけど、流れるようなコーナーもあるので、ヤマハの強みを活かせるはずです。シルバーストンでは良い週末を過ごせたので、今回もその勢いを持ち込みたいですね。」

ミゲル・オリヴェイラ
「シルバーストンではル・マンに比べてスピード面で進歩を感じました。まだ万全な状態とは言えませんが、毎日少しずつ前進できていますし、バイクに乗るたびに競争力が上がっているのを感じます。アラゴンは全体としては身体的にそこまで厳しいコースではないですが、左コーナーが多いので、まだ完全には回復していない体の側には負担がかかります。それでも今週末はもっと戦えると信じています。」
(Photo courtesy of Pramac)