ロレンソについてはホンダ加入後からホンダでは無理じゃないか?と否定的な意見が多かったカル・クラッチローだが、テック3時代にサテライトライダーとしてロレンソの走りを見ていた彼が語るロレンソへの評価は高い。レプソル・ホンダのシートの行方よりも、ロレンソ引退がレース界にとって悲しい出来事であることは間違いない。

カル・クラッチロー

「ロレンソの引退はジャーナリストが記事にしているのは知っていましたが、バレンシア空港について時にプレスカンファレンスに出席するように言われたんで、そこで知りました。彼のシートに誰が収まるかってことが問題になるのではなく、まずは今日はこのスポーツにとって悲しい日であることが注目されるべきです。

「ロレンソは5度の世界チャンピオンであり、全盛期には彼に近づくことが出来たライダーはいないんです。同じく表彰台に立ったとしても、同じレースをしていたとは思えないほどの差があったんです。彼は偉大なチャンピオンでプロフェッショナルなライダーです。」

「彼は少し変わったやつだってことは知っていますが、ロレンソがトラックで成し遂げた事は偉大なことで、このパドックにいるほとんどの人が成し遂げたこと以上のことを成し遂げているんです。ロレンソが引退するのはショックとも言えますし、そうでないとも言えます。今までもジャーナリスト達が彼の引退説を散々書いていましたからね。」

「ロレンソはホンダでも成功したはずだと思います。彼はどうやってバイクを操るかを知っていますし、彼のブレーキングのデータなどを見てもその内容は信じられないほど凄いんです。彼はブレーキングを遅くまでかけているように見えないんですが、彼のブレーキングは本当に深いんです。本当に効率良く減速しているんです。ヤマハ時代は自分とコーリンでロレンソのデータを見て呆れて笑っていたんです。ヤマハ時代の彼は、今のホンダのマルクのような強さがありました。

「ロレンソのセッティングを見てそれを試しても、同じような走りは出来ないんです。彼はほとんどセッティングを変えずに週末を走りきってしまうんですよ。彼はホイールベース等も変えずにひたすら走り込むんです。ロレンソは実はフロントに関してはそこまで気にしておらず、リアタイヤを駆使して曲がって行きます。彼はフロント重視と思われがちですが、実際はバイクのリアホイールがバイクの向きを変えているんです。リアでスライドするのではなくて、体の使い方でバイクを曲げていくんですよ。

「バイザーを閉じると、ロレンソはまるで機械です。今年だって10周連続でどこかで走った際に、10周のうち9周のタイムは1分30秒0でした。こんなことは普通出来ませんよ。ヤマハでの彼の仕事も見ていましたけど、このスピードでバイクを走らせながら、ここまでタイムを揃えてくるなんて狂っています。」

「レプソルのシートが空きますが、自分はすでに契約を交わしていますし、仕事を探しているわけではありません。ホンダで走ることはとても楽しいですし、来年乗るバイクにしても楽しみにしています。ホンダは今年のバイクのエンジンに関しては素晴らしい仕事をしたと思いますね。」

「他の部分で苦戦している面はあるかと思いますが、今年の目標はエンジンパワーをアップすることで、それは間違いなく達成されています。来年はさらにパワーをアップして乗りやすくなればと思いますね。今年自分はMotoGPキャリアの中で最も転倒数が少ないんです。つまり、フロントエンドが改善されているのかもしれませんね。」

(Source: HRC)

(Photo courtesy of LCR)