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2021年以降に各ファクトリーチームはどのライダーと契約をするのか

2021年以降に各ファクトリーチームはどのライダーと契約をするのか

2021年各ファクトリーチームのライダーラインナップ変動は限定的か

ヤマハは既に2021-2022年のラインナップをマーべリック・ビニャーレス、ファビオ・クアルタラロの2名に決定したが、これによって各メーカーの2021年からのライダーラインナップもある程度予想しやすい状況になってきた。まだ2020年シーズンも開幕する前だが、2021年からの各ファクトリーチームのライダーラインナップについて考察する。

 

Ducatiはドヴィツィオーゾ+若手成長枠

Ducatiがこの数年で引退の可能性があるドヴィツィオーゾに変わるエースライダーとしてマーベリック・ビニャーレスを狙っていたのはよく知られた話で、ファビオ・クアルタラロにしても昨年の活躍からDucatiをはじめ多くのメーカーが注目していたのは間違いない。

マーべリック・ビニャーレス

結果を見ると2019年、2018年、2017年とマルク・マルケスについで年間ランキング2位だったのはDucatiのアンドレア・ドヴィツィオーゾであるため、Ducatiは実質的に世界で2番目に速いライダーを手元に置いていると言える。

アンドレア・ドヴィツィオーゾ

しかしドヴィツィオーゾは今年で34歳、もう1名のファクトリーライダーであるダニーロ・ペトルッチが大化けしたとしても、将来的にマルケスとタイトル争いをする姿を想像するのは難しい。

そうなると経験豊富なドヴィツィオーゾと共に若い有望なライダーを育てるという戦略を取るのが最も自然で、考えられる最有力候補がジャック・ミラーだ。

ジャック・ミラー

ホンダからDucatiに乗り換えて以来スピードを発揮しているミラーは、2019年も3位表彰台を5回獲得、予選におけるスピード、決勝でのタイヤマネジメントの経験が足りないが、この2点を改善出来れば表彰台の常連になれる可能性がある。

Ducatiライダーとしてはもう1人フランセスコ・バグナイアもいるが、MotoGP昇格後目立った活躍がなく、Ducatiが2021年のファクトリーライダー候補として考えているとは思えない。

他メーカーに目を移すと、Ducatiはスズキのジョアン・ミルに声をかけている可能性はある。ミルは2019年シーズンにMotoGPクラスでしっかり成長した若手の1人であり、今年23歳という若さもプラスの判断材料となる。しかし、魅力的な若手であるからこそスズキもミルの引き止めには必死になるはずだ。

 

レプソル・ホンダはマルケス兄弟ラインナップは変わらず

マルク・マルケスはMotoGP昇格から今までレプソル・ホンダチームで参戦を続け、既にMotoGPクラスで6冠を獲得。家族のようなチームと語るホンダから他のチームに移籍するとは思えず、この先もホンダで優勝を重ねていくはずだ。

マルク・マルケス

ホルへ・ロレンソの後釜としてレプソル・ホンダに加入したアレックス・マルケスだが、バレンシアテスト、ヘレステスト、セパンテストを終えて、さほどRC213Vに苦戦している印象は受けない。

すぐさまスピードを発揮しているとも言い難いが、まずは及第点といったところか。2020年シーズンは学習の1年となるが、ホンダとしてもシーズン前半戦はトップ15、シーズン後半戦にトップ12付近で走行出来れば期待値通りの活躍と言えるだろう。

アレックス・マルケス

絶対的なエースライダーであるマルク・マルケスがチームにいる以上、アレックスはその横でしっかりと技術や戦略を吸収して成長していくことが求められる。2020年に着実に成長する姿を見せることが出来れば、2021年のシートの心配はさほどいらないはずだ。

 

若手2人チームを維持したいTeam SUZUKI ECSTAR

Team SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)は2015年にマーべリック・ビニャーレスをMoto2から起用、2017年にアレックス・リンスをMoto2から起用し、2019年にジョアン・ミルを同じくMoto2から起用している。

アレックス・リンス

基本的な戦略としてはダヴィデ・ブリビオが何度も語っているように、若手ライダーをMoto2から起用し、トップライダーへと育てていくという形を取る。

ジョアン・ミル

ジョアン・ミルがDucatiに狙われている可能性は高いが、スズキはチームとしての居心地の良さを提供し、MotoGPクラス随一と言われるハンドリング、バランスの良いシャーシなどで高い戦闘力を発揮するGSX-RRの魅力で、アレックス・リンス、ジョアン・ミルの両名を2021年以降も起用する方向のはずだ。

 

ブランド内でのライダー入れ替えの可能性はありそうなKTM

KTMはMotoGPプロジェクト立ち上げ時から活躍するポル・エスパルガロをエースライダーとして抱え、昨年からは開発ライダーにダニ・ペドロサを迎えた。

ダニ・ペドロサ

今年はポル・エスパルガロのチームメイトにブラッド・ビンダーを迎え、さらにテック3ではミゲル・オリヴェイラ、イケル・レクオーナが控えている。

今年以降もポル・エスパルガロがエースライダーであることは変わりないだろうが、もう1人のファクトリーライダーに関しては残りの3人の活躍の度合いによって変動する可能性は大いにあり得る。

ポル・エスパルガロ

KTMの場合、moto3から若手ライダーをブランド内に抱え、才能ある若手を順次Moto2、MotoGPクラスへとステップアップさせていく戦略をとっている。

KTMとしても今年29歳となるポル・エスパルガロが、将来的にマルク・マルケスに対抗出来るライダーであるとは考えていないはずで、MotoGPでタイトルを獲得するというロードマップについても、10年以内の中長期計画で考えているはずだ。

ブラッド・ビンダー

例としてダカール・ラリーでは、KTMがプライベーターではなく、ファクトリー体制でレースに参戦したのが1994年。そして7年後となる2001年にファブリッツォ・メオーニが総合優勝を果たしている。

KTMがMotoGPに参戦したのは2017年であることを考えると、今年が4年目であり7年後は2024年となる。ダカールと同じスパンで考えるのであれば、2024年にタイトル獲得を目指すということとなるだろう。

契約更新のタイミングを考えると、2021-2022年の2年契約の次のタイミングで契約したライダーでタイトルを狙うということになり、才能ある若手を育てつつタイトルを狙っていくのであれば、KTMが時期エースと考えるライダーが、ポル・エスパルガロのチームメイトとして2021年以降に契約を獲得することになるだろう。

 

今年のバイクの出来によっては魅力的なオプションとなり得るアプリリア

アプリリアはTeam SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)で活躍したアレイシ・エスパルガロが2017年に加入、2020年で完全新型となったRS-GPの開発を牽引している。

アレイシ・エスパルガロ

アンドレア・イアンノーネのドーピング疑惑が未だに晴れない現状、今年で31歳になるアレイシ・エスパルガロ、テストライダーのブラッドリー・スミスが今後もアプリリアにとってはマシン開発の要となる。

新しくなったRS-GPはストレートスピードが向上、ハンドリングを含めた全体的なバランス、レベルもアップしているようで、セパンテストを終えたアレイシ・エスパルガロは上機嫌だった。アプリリアは2021年からファクトリー体制で参戦するとも言われており、今年のRS-GPの活躍如何ではファクトリーチーム昇格を狙う若手にとって魅力的なチームになる可能性も高い。

とは言え、当面はアレイシ・エスパルガロをエースライダーとして抱えマシン開発を進めていきたいアプリリアにとって、Ducati、スズキのバイクで優勝経験があるアンドレア・イアンノーネからのインプットは新型RS-GPの開発には欠かせないはず。しかしイアンノーネの資格停止処分が続いているため、そもそも2020年シーズンに出場が出来るかどうか判断しにくい状況にある。

ブラッドリー・スミス

ドーピング疑惑が晴れればアンドレア・イアンノーネを引き続き起用、ドーピング疑惑が晴れない場合、2020年を含め、2021年以降の活躍が期待出来るライダーを採用する必要に迫られるだろう。

 

早すぎる契約交渉はドルナが目指したイコールコンディションの戦いの弊害の側面も

改めて振り返ると、今年1月終わりにヤマハが相次いで発表したマーべリック・ビニャーレス、ファビオ・クアルタラロの2021年、2022年のファクトリーチーム加入のニュースによって、2020年シーズンスタート前のこの時点から、2021年のシート状況の話題が出ている。

こうした早すぎる契約交渉について将来的にドルナ、FIMが何らかのルールを設定する可能性はゼロではないが、レギュレーションによってメーカーごとに独自性を発揮出来る部分が狭まっており、強力な選手を早めに確保しておかないとタイトル争いに加わることが出来なくなっているのも事実。


ドルナが目指してきたMotoGPに参戦するメーカーの資金力に左右されない参加車両のレベルの統一は、確実に成果を上げ、イコールコンディションでの白熱したバトルによって、様々なメーカー、選手が表彰台、優勝する回数が格段に増えた。

一方で、タイトル争いに参加するためにはいかに優れた若手選手を早めに確保するかがメーカーにとって重要になってきており、その弊害として各選手のシーズン中の活躍によって来年のシート状況を考えるというファンの楽しみは失われている。

(Photo courtesy of michelin)

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