MotoGPなどのレースのオンボード映像を見ていると、多くのライダーがショートシフトを多様しているのに気づくはずだ。なぜライダー達はショートシフトをするのか?ショートシフトをするとどのようなメリットがあるのかをシルヴァン・ギュントーリが解説する。

ショートシフトでエンジンパワーを有効に使える

シルヴァン・ギュントーリ

「MotoGPライダーはショートシフトと呼ばれるエンジンのレッドゾーン前のシフト操作を行いますが、なぜなのでしょうか?答えは速く走るためです。では質問を変えましょう。なぜショートシフトをすると速く走れるのか?これは考え方としては少ないほうが良いというものです。」

「例としてお見せした映像は最終コーナーの立ち上がりからホームストレートを走行する映像です。見ればわかるように1速でレッドゾーンまで引っ張っており、シフトアップのタイミングでバイクがウイリーしています。非常にアグレッシブで限界まで攻めて速い印象を与えます。」

「次のクリップでは最終コーナーを2速で立ち上がり、500回転ほど低いところでショートシフトを行っています。非常にスムーズで何事も起きていないと思える走りです。しかしこの2つを比べてみると、ストレートで0.5秒もの差がありました。(※ショートシフトしたほうが速い)」

「この比較からわかることは、シフトアップの度にレッドゾーンまで回す必要はなく、強力なエンジンであれば、そのパワーを有効に使うことが重要だということです。」

「これはビギナーでもすぐに使える技術で、シフトアップ回転数が低すぎてもバイクは安定していますし、シフトアップ回転が低すぎたと思えば、次のラップで修正していくことが出来るんです。」

「ショートシフトは、限界までレッドゾーンを回しきり神経をすり減らしながら走るよりよほどメリットがあります。速く走る上で上達をするには、快適に感じることが出来る程度からはじめ、徐々にそのレベルを上げていくということが重要なんです。」

ショートシフトでコーナリングスピードが上がる

ショートシフトを行うとコーナリングスピードが上がります。私がこの事実に初めて気づいたのは2007年。ドニントン・パークのレースでバレンティーノ・ロッシのデータを見ていた時です。当時は同じブランドのバイクでしたので、彼のデータを見ることが出来たんです。」

「ドニントン・パークのターン1はV字型のコーナーで、ブレーキングで奥まで突っ込み、向きを変えて2速で一気に加速していくコーナーです。そこでバレンティーノは見たこともないようなことをしていました。」

バレンティーノは立ち上がりで2速に入れたあと、すぐさま3速、4速にシフトアップしていました。そこで自分も次のセッションで同じように走行してみたんです。」

「立ち上がりで2速で加速している際はリアが激しくスピンして荒々しい状態なのですが、3速、4速とショートシフトした瞬間、バイクがピタリと安定してスムーズに加速していくんです。こうすることで非常に高いコーナリングスピードを維持することが可能になりました。」

タイトコーナーからの立ち上がりでショートシフトが生きる

「ですから、ショートシフトはタイトなコーナーからストレートに向けて加速していくような箇所、タイトなコーナーから緩やかなコーナーに向けて加速するような場面で極めて有効です。」

「ドニントンなどでコーナーのエイペックスでのギアは2速だったとしても、そこから加速していく場面、バイクを寝かしながら加速していく場合、レブ付近がピーキーなバイクではリアが滑ってしまって安定しませんし、ハイサイドのリスクが極めて高いでしょう。

こういった場面でショートシフトを活用することで、バイクを安定させること、安心して走ること、タイヤを長持ちさせること、転倒のリスクを減らすことが可能なんです。

「次にご紹介するクリップでは、2速でコーナリングを開始してすぐに3速にシフトアップしていますが、こうすることで、トラクション、安定性、コーナリングスピードを得ています。」

「低速ギアのままでレッドゾーンに到達するに従ってシフト操作をしていたのと比較すると大きな差があります。このような小さな違いがラップタイムの差に結びついていくんです。」

「ショートシフトはプロ向けの技術ではありません。一般ライダーであってもバイクのスピードをストレートでコントロールすることが可能になる技術なんです。」

(Photo courtesy of michelin)

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