レッドブルKTM Tech3は、モータースポーツ界で名を馳せるグンター・シュタイナーの主導するコンソーシアムによって完全買収されることが発表された。Moto3™を含む全カテゴリーでの所有権が移行され、新体制は2026年から本格的に始動する。

新たな体制では、F1でその辣腕を振るったシュタイナーがCEOに就任し、長年のビジネスパートナーであるリチャード・コールマンがチームプリンシパルとなる。創設者であり現在もチームを率いるエルベ・ポンシャラルは、今季限りでチーム運営から退き、来季からはコンサルタントとして若手育成に携わる予定だ。

Tech3のチーム名は今後も維持され、KTMのマシンを使い続けるほか、フランス・ボルム=レ=ミモザの拠点も変更されない。

カタルーニャGPで正式発表

この発表はカタルーニャGPの金曜日に行われた特別記者会見で発表された。F1のハースチーム創設者として知られるシュタイナーは、ラリーエンジニアとしてのキャリアを出発点に、ジャガー・レーシングやレッドブル・レーシングなど、40年にわたりモータースポーツ界で豊富な経験を積んできた。

コールマンも世界選手権レベルの経験を10年以上持ち、ツーリングカーでの活動や自身のスポーツマネジメント会社の設立など、多岐にわたるキャリアを築いている。

グンター・シュタイナー

「これは素晴らしい機会です。Tech3は多大なポテンシャルと輝かしい実績を持つ素晴らしいチームです。エルベのチームとMotoGPへの貢献は計り知れず、その基盤の上に我々が引き継いでいけることを誇りに思います。MotoGPのパドックに加わることに非常に興奮しており、チームとこのスポーツの可能性を最大限に引き出し、新たなファン層にもリーチしていきたいと考えています。」

リチャード・コールマン

「MotoGPのパドックにすでに存在する卓越した才能と専門性に敬意を持ってこのプロジェクトに取り組みますが、同時に強い野心も持っています。我々は参加するためでなく、あらゆるレベルで本気で戦うために来ました。この素晴らしいスポーツへの情熱を持って、より多くのファンとつながり、MotoGPの魅力を発信していきたいです。」

Tech3の歴史とポンシャラルの言葉

1990年に創設されたTech3は、2000年に250ccクラスのタイトルを獲得後、2001年にMotoGPクラスに参戦。以来38回の表彰台、2度の優勝を記録している。

エルベ・ポンシャラル

「ひとつの時代の終わりであり、同時に新たな時代の始まりでもあります。Tech3を設立してからの長い年月の中で、我々は多くの勝利や表彰台を経験し、素晴らしい人々と仕事をしてきました。グンターからの申し出を受けた時、これは変化のタイミングとして完璧な瞬間だと感じました。グンターはしっかりとしたビジョンと情熱、そしてTech3の創設時からの“ロックンロールスピリット”を理解した上でチームを導いてくれると信じています。Tech3はこれからも良い手に託されることになります。」

スポーツフランチャイズ化への布石

シュタイナーは2年以上にわたりMotoGPへの参入機会を探っていた。Tech3の持つレーシングチームとしての実績を土台にしつつ、よりスポーツフランチャイズ的な存在へと進化させることが狙いだ。買収資金はIKON Capitalが主導する投資家グループにより提供される。

カルロス・エスペレータ(チーフ・スポーティング・オフィサー)

「グンターをMotoGPに迎えることができて嬉しく思います。我々はスポーツとして成長を続けており、それがさらに加速する段階にあります。Tech3の歴史は語るまでもなく、エルベの貢献も偉大です。彼は来年からコンサルタントとしてチームに関わり続けますが、これまでの功績に心から感謝し、新たに加わるグンターとリチャードを歓迎します。今後の共同作業にとても期待しています。」