
ホンダ・モーター・ヨーロッパは11月2日、2027年モデルの「CBR1000RR-R Fireblade」を発表した。今回はスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)で戦うHRCチームの要求を先に固め、それを満たしたうえで市販車の開発に入るという、これまでとは逆の手順で開発された。フレームやスイングアーム、空力パッケージを一新し、装備重量は2024年モデルから1.3kg軽い199kgとなっている。
レース車両のベースを前提に開発
1992年に登場したFireblade(ファイアーブレード)は、2020年モデルでRC213V-SやMotoGPマシンRC213Vの技術を取り入れたCBR1000RR-Rへと生まれ変わった。2022年モデルでは30周年に合わせた細部の改良、2024年モデルではエンジンとミッションの改良や2モーター式スロットル・バイ・ワイヤの採用が行われている。
2027年モデルでは、ホンダの開発陣がHRCのWorldSBKチームと協力し、まずレース車両として必要な条件を明確にした。そのうえで市販モデルの開発を始めている。開発コンセプトは「Race DNA x Total Control」。コーナーの進入、旋回中の速度、立ち上がりの加速を高めることと、車両全体の軽量化が主な目標とされた。上位モデルとしてCBR1000RR-R Fireblade SPとCBR1000RR-R Fireblade HRC WEも用意される。
新設計のフレームとスイングアーム
アルミ製ダイヤモンドフレームは、ホンダの薄肉重力鋳造(GDC)製法で作られ、肉厚は最小2mm。剛性バランスを見直し、横剛性は従来比で20%下げられた。リアショックの下側の取り付け位置はフレームからエンジン後部へ移されている。
ホイールベースは1,455mm。キャスター角とトレールは24.0度/101mm(従来は24.1度/101.9mm)となった。前後の重量配分は53.3%/46.7%(従来は52.8%/47.2%)で、フロント寄りになっている。クランク軸の位置は5.2mm高い432.5mm、シート高は831.5mmから843mmに上がった。
アルミ製スイングアームも新設計で、長さは620.6mm。横剛性を12%下げつつねじり剛性は保ち、200gの軽量化を果たした。ドライブチェーンは525サイズから520サイズに変わり、さらに270g軽くなっている。
ショーワ製サスペンションとニッシン製キャリパー
フロントはショーワ製の43mm径BPF(ビッグ・ピストン・フォーク)倒立フォークで、トップとボトムのブリッジも新しくなった。プリロード、伸び側と圧側の減衰力をすべて調整でき、フォーク長はわずかに伸ばされてサーキットでの車体姿勢の調整幅が広がっている。リアはフル調整式のショーワ製BFRC-Liteショックを採用する。
フロントブレーキはニッシン製のラジアルマウント4ピストンキャリパーで、スーパーストッククラスのレースで受ける高い負荷を想定して開発された。ディスクは軽量化された330mm×4.5mm。コーナリングABSはSTANDARD、TRACK、RACEの3モードで、RACEモードではリアのABSとコーナリングABSの機能が解除される。
ボッシュ製の6軸IMUが車体の姿勢を検出し、電子制御を管理する。3段階で調整できるホンダ電子制御ステアリングダンパー(HESD)もIMUと車輪速センサーの情報で作動する。アルミホイールは新しい7本スポークの中空デザインで、フロントで190g、リアで590g軽くなった。タイヤサイズは前120/70ZR17、後200/55ZR17で変わらない。
ウイングレットを使わない新しい空力パッケージ
カウルはHRCと共同で全面的に作り直された。従来モデルのフロントウイングレットを廃止しながら、同じ水準のダウンフォースを得ている。空気抵抗を減らしつつ、高速走行時の防風性能も高めた。カウル中央部の重なった形状や、アンダーカウルのサイドポッドには、MotoGPでの開発で得た知見が生かされている。開発ではCFD解析、クレイモデル、実走テストを繰り返した。
LEDヘッドライトはデイタイムランニングライト付きで、レース用に一体で取り外せる構造になっている。テールライトも小型軽量の新しいものになった。燃料タンクは容量16.6Lのチタン製で、塗装技術の進歩により従来の樹脂カバーを廃止して軽量化している。
メーターは5インチのフルカラーTFTで、左手側の4方向スイッチで操作する。暖機中は回転上限が8,000rpmに抑えられ、水温が上がると14,500rpm以上まで回せるようになる。スマートキー、急ブレーキ時にウインカーを点滅させるエマージェンシーストップシグナル(ESS)も標準装備する。
最高出力は維持し中速域を強化
エンジンはセミカムギアトレーンを採用した1,000cc直列4気筒DOHC。最高出力160kW(14,000rpm)、最大トルク114Nm(10,500rpm)は従来どおりで、今回は中速域の力強さ、扱いやすさ、エンジン単体の軽量化に重点が置かれた。
ボア×ストロークは81mm×48.5mmのまま。ピストン冠面と燃焼室を機械加工で精度よく仕上げ、圧縮比は13.6から13.8に上がった。カムタイミングの変更、調整幅を広げた新しいカムスプロケット、バルブスプリングを含む動弁系の強化も行われている。
軽量化では、クランクケースを軽くしたほか、シリンダーヘッドカバー、右クランクケースカバー、クラッチカバー、オイルパンをアルミからマグネシウムに変更した。35本のボルトをスチールからアルミにして215g軽くしている。
ホンダの量産二輪車で初めて、2段階の可変エアファンネルを採用した。11,750rpm以下では長い状態にして中速域のトルクを高め、それより上では短い状態に切り替えて高回転域の出力を保つ。2モーター式のスロットル・バイ・ワイヤは、1番と2番、3番と4番の気筒を別々のモーターで動かす仕組みを継続し、加速とエンジンブレーキの両方を細かく制御する。
メインシャフトとカウンターシャフトの間隔は3mm広い68mmとなり、レースに合わせてギア比を選べる幅が広がった。1速は5%高く(ロング)なっている。マフラーは引き続きチタン製のアクラポビッチを標準装備する。なお、ギア比やバルブタイミングの変更は公道走行では認められておらず、車両の保証にも影響するとしている。
電子制御
ライディングモードはRACE、ROAD、RAINの3種類。出力(5段階)、エンジンブレーキ(3段階)、ウイリーコントロール(3段階+オフ)、トラクションコントロールにあたるホンダセレクタブルトルクコントロール(HSTC、9段階)をそれぞれ調整できる。いずれも2027年モデルのエンジン特性と車体に合わせて設定を見直した。レーススタート用のスタートモードは6,000、7,000、8,000、9,000rpmの4段階から回転数の上限を選べる。
カラーとアクセサリー
車体色はパールディープマッドグレーの1色。純正アクセサリーとして、スモークスクリーン、タンクパッド、ホイールストライプ、フレームガード、スプロケットプロテクター、シートカウル、クイックシフターをまとめた「スポーツパック」が用意される。クイックシフターはオプション扱いとなっている。
主な諸元(欧州仕様・暫定値)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| エンジン | 水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ |
| 排気量 | 1,000cc |
| ボア×ストローク | 81×48.5mm |
| 圧縮比 | 13.8 |
| 最高出力 | 160kW/14,000rpm |
| 最大トルク | 114Nm/10,500rpm |
| 最高速度 | 299km/h |
| 燃料タンク容量 | 16.6L |
| 燃費(WMTC) | 6.7L/100km |
| CO2排出量(WMTC) | 155g/km |
| 変速機 | 6速 |
| 全長×全幅×全高 | 2,105×735×1,150mm |
| ホイールベース | 1,455mm |
| シート高 | 843mm |
| 最低地上高 | 130mm |
| キャスター角/トレール | 24.0度/101mm |
| 装備重量 | 199kg |
| サスペンション(前) | ショーワ製43mm BPF倒立フォーク(フル調整式) |
| サスペンション(後) | ショーワ製BFRC-Lite(フル調整式) |
| ブレーキ(前) | 330mmダブルディスク、ニッシン製ラジアルマウント4ピストン |
| ブレーキ(後) | 220mmディスク、ブレンボ製2ピストン |
| タイヤ(前/後) | 120/70ZR17/200/55ZR17 |
| 標準装着タイヤ | ブリヂストン BATTLAX RACING STREET RS12/ミシュラン POWER GP2 |
| メーター | 5インチTFT |
諸元はすべて暫定値で、予告なく変更される場合がある。
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近DucatiモンスターS4Rに乗り換えました。