
ホンダ・モーター・ヨーロッパは11月2日、2027年モデルの「CRF1150L Africa Twin Adventure Sports」と、新たに加わる最上位モデル「CRF1150L Africa Twin Adventure Sports Honda SENSING RIDE」を発表した。エンジンは1,131ccに拡大され、最高出力は87.5kW、最大トルクは119Nmに向上。車体やスタイリングも一新された。Honda SENSING RIDEは前後のレーダーを使ったライダー支援機能を備え、DCT仕様のみの設定となる。
登場から10年で最大規模の改良
現行のAfrica Twin(アフリカツイン)は、2016年モデルのCRF1000Lとして登場した。2018年モデルではスロットル・バイ・ワイヤの採用とAdventure Sportsの追加、2020年モデルでは1,084ccへの排気量拡大とショーワ製電子制御サスペンション(EERA)の設定、2024年モデルではトルクの向上やDCTの改良が行われてきた。ホンダによると、再登場以来の欧州での販売台数は12万台を超え、欧州の1,000cc以上のアドベンチャー市場で2番目に売れているモデルだという。
10年目となる2027年モデルでは、Africa Twin本体の大幅な改良に加え、オフロード寄りの新バリエーション「Enduro Sports」もラインアップに加わる。今回発表されたAdventure Sportsは、長距離のツーリング性能と快適性を重視したモデルで、開発コンセプトは「Limitless Freedom」。
1,131ccに拡大し最高出力は16.5%向上
並列2気筒エンジンはボアを2mm広げて94.0mmとし、ストローク81.5mmはそのままに排気量を1,131ccとした。最高出力は75kW(7,500rpm)から87.5kW(7,500rpm)へ16.5%、最大トルクは112Nm(5,500rpm)から119Nm(5,750rpm)へ向上している。圧縮比は10.5から12.1に上がった。最高速度は従来と変わらないが、1速から5速での加速が力強くなり、ギア比の見直しで高速巡航時の回転数は下がっている。
吸気系はダクトからエアボックス、吸気ポートまでの経路を作り直し、スロットルボディ径を46mmから52mmに拡大した。エアフィルターの点検もしやすくなっている。CRF450R譲りのSOHCユニカム方式の動弁系は継続しつつ、カムタイミングとバルブリフト、バルブスプリングを変更。吸気バルブ径は36.5mmから37.5mmに広げられた。ピストン、コンロッド、クランクシャフトも新しくなっている。
270度位相クランクによる不等間隔爆発は従来どおりで、Africa Twinらしい鼓動感とトラクションの特性は受け継がれている。MT仕様は出力の向上に合わせてクラッチが新しくなり、ギア比も見直された。エキゾーストは触媒より上流のエキパイ形状を変えている。
ライディングモードは6種類に
ライディングモードは、従来のTOUR、URBAN、GRAVEL、OFFROADの4種類から、SPORT、TOURING、URBAN、RAIN、OFFROAD、OFFROAD+の6種類に変わった。OFFROAD+は難しい路面向けに新たに設けられたモードで、すべてのモードで設定を個別に調整できるようになっている。スロットルの反応は新たにDynamicとComfortの2種類から選べる。トラクションコントロールにあたるHSTCは7段階で、オフロードでのリアの滑らせ具合をより細かく選べるよう調整された。ウイリーコントロールも備える。
DCTはOFFROAD系モードを強化
6速MTのほか、6速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)も選べる。ホンダによると、2025年に欧州で販売されたCRF1100L Africa Twinの49%、Adventure Sportsでは68%がDCT仕様だった。2027年モデルのDCTは出力の向上に合わせて変速のタイミングを見直したほか、OFFROADモードでは変速時のクラッチの滑りを減らし、OFFROAD+モードでは変速パターンを選べるようにした。坂道の傾きに応じて変速パターンを変える機能もある。
シート下サブタンクで低重心化
車体は、パリ・ダカールラリーで1986年から1989年まで4連覇したNXR750にならい、シート下に燃料のサブタンクを設けた。バッテリー、ECU、給油口、エアボックスの配置も見直し、重心を下げている。燃料タンク容量は24.2Lで、MT仕様のWMTC燃費5.1L/100km(19.6km/L)から計算した航続距離は約480kmとなる。
スチール製セミダブルクレードルフレームは0.8kg、アルミ製スイングアームは0.6kg軽くなり、合計で1.4kgの軽量化となった。ホイールベース1,575mm、キャスター角27.5度、トレール106mmは従来と同じ。装備重量はMT仕様が245kg、DCT仕様が255kg、Honda SENSING RIDEが256kg。
ショーワEERAが標準装備に、スカイフック制御を追加
ショーワ製の電子制御サスペンション「EERA」は、これまでのオプション設定から標準装備になった。新たにHonda Skyhook Controlを組み込み、車体の上下動とピッチングに合わせて減衰力を1000分の1秒ごとに調整する。コーナリング中は制御を控えめにし、自然なハンドリングを保つようにしている。
フロントフォークは45mm径から49mm径の倒立フォークに変わった。ホイールトラベルは前210mm、後200mm。プリロードは1人乗り、1人乗り+荷物、2人乗り、2人乗り+荷物の設定に加えて24段階で手動調整もできる。新設の「Minimum」設定を選ぶとシート高が5mm下がり、エンジンを切っても設定が保たれる。
ブレーキはラジアルマウント4ピストンキャリパーと310mmのウェーブディスクの組み合わせ。前後の制動力配分を電子制御する「E-Combined ABS」を採用し、OFFROADとOFFROAD+では前後連動が解除される。坂道での停車時にブレーキ圧を保持して後退を防ぐ「ビークルホールドコントロール(VHC)」も備える。ホイールは前19インチ、後18インチのチューブレス対応スポークホイールで、標準装着タイヤはブリヂストン BATTLAX ADVENTURE A41またはミシュラン ANAKEE ROAD。
電動スクリーンと7インチタッチスクリーン
デザインは前寄りの重心を強調し、リアまわりをすっきりさせた。デュアルLEDヘッドライトはコーナリングライトとデイタイムランニングライトを内蔵し、テールライトも新しくなった。スクリーンは電動調整式で、130mmの範囲で高さを変えられる。ウインドディフレクターも標準装備する。
ハンドルは幅が10mm狭く、10mm高く前寄りになり、ステップは20mm内側、10mm後ろに移った。シートはウレタンの厚みと形状を見直し、シート高は従来より5mm低い830mm/850mmの2段階となっている。
メーターは5.7インチの車両情報ディスプレイと7インチのフルカラーTFTタッチスクリーンの組み合わせで、起動時間は約70%短い5秒になった。オフロード専用の表示とコンパス機能も備える。Apple CarPlayとAndroid Autoはワイヤレス接続に対応した。燃料タンクカバーにはスマートフォンが入るロック付きの小物入れがあり、USB-Cソケットを備える。スマートキーはイグニッション、ハンドルロック、給油口に対応し、クルーズコントロール、グリップヒーター、ナックルガード、アルミ製リアキャリアも標準装備となる。
Honda SENSING RIDEの機能
Honda SENSING RIDEは前後のレーダーで周囲の車両を監視し、走行を支援する。DCT仕様のAdventure Sportsのみに設定される。主な機能は以下のとおり。
- アダプティブクルーズコントロール(ACC):設定した速度と前の車両との車間を保つ
- ストップ&ゴー:ACCと連動し、渋滞での発進と停止に対応
- グループライドアシスト:複数台で走るときの車間を調整
- ディスタンスアシスト:自分でスロットルを操作しているときも適切な車間の維持を支援
- エマージェンシーブレーキアシスト:前の車両との衝突の恐れがあるとブレーキを補助
- 前方衝突警告:衝突の恐れがあるとメーターに警告を表示
- ブレーキパルス:前方衝突警告と連動してライダーに注意を促す
- ブラインドスポットインフォメーション:死角に車両が入るとミラーのLEDで知らせる
- リアディスタンスインフォメーション:後ろから近づく車両をメーターで知らせる
- 後方衝突警告:追突の恐れがあるとウインカーを高速点滅させて後続車に知らせる
このほか、Honda SENSING RIDEのみアクティブスピードリミッターも備える。
カラーとアクセサリー
車体色はいずれのモデルも新色の2色。
- パールグレアホワイト(トリコロール)
- マットバリスティックブラックメタリック
純正アクセサリーは、グリップヒーター付きシートやフォグランプなどの「コンフォートパック」、エンジンガードやラリーステップなどの「ラリーパック」、パニアケースやトップボックスを組み合わせた「トラベルパック」「アーバンパック」が用意される。
主な諸元(欧州仕様・暫定値)
| 項目 | MT | DCT | Honda SENSING RIDE |
|---|---|---|---|
| エンジン | 水冷並列2気筒ユニカム4バルブ | 同左 | 同左 |
| 排気量 | 1,131cc | 同左 | 同左 |
| ボア×ストローク | 94.0×81.5mm | 同左 | 同左 |
| 圧縮比 | 12.1 | 同左 | 同左 |
| 最高出力 | 87.5kW/7,500rpm | 同左 | 同左 |
| 最大トルク | 119Nm/5,750rpm | 同左 | 同左 |
| 最高速度 | 199km/h | 同左 | 同左 |
| 変速機 | 6速MT | 6速DCT | 6速DCT |
| 燃料タンク容量 | 24.2L | 同左 | 同左 |
| 燃費(WMTC) | 5.1L/100km | 5.4L/100km | 5.4L/100km |
| CO2排出量(WMTC) | 119g/km | 125g/km | 125g/km |
| 全長×全幅×全高 | 2,310×960×1,460/1,590mm | 同左 | 同左 |
| ホイールベース | 1,575mm | 同左 | 同左 |
| シート高 | 830/850mm | 同左 | 同左 |
| 最低地上高 | 220mm | 同左 | 同左 |
| キャスター角/トレール | 27.5度/106mm | 同左 | 同左 |
| 装備重量 | 245kg | 255kg | 256kg |
| サスペンション | ショーワEERA(前49mm倒立フォーク、後プロリンク) | 同左 | 同左 |
| ブレーキ(前) | 310mmダブルディスク、ニッシン製ラジアルマウント4ピストン | 同左 | 同左 |
| ブレーキ(後) | 256mmディスク、ニッシン製1ピストン | 同左 | 同左 |
| タイヤ(前/後) | 110/80R19/150/70R18 | 同左 | 同左 |
| メーター | 7インチTFTタッチスクリーン+5.7インチ | 同左 | 同左 |
| ACCなどのレーダー支援機能 | なし | なし | あり |
諸元はすべて暫定値で、予告なく変更される場合がある。
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近DucatiモンスターS4Rに乗り換えました。