ハンガリーでのミシュラングランプリを経て、FIM MotoGP世界選手権は次なる舞台であるカタルニアへと移る。2025年9月5日から7日まで、バルセロナに位置するカタルニア・サーキットが、技術的挑戦とスペクタクルを兼ね備えたモンスターエナジー・カタルニアGPを開催する。
このカタルニアへの帰還は晩夏の時期に設定されており、非常に高い気温と路面温度が予想される。これは、グリップが限られておりリアタイヤのスピンが発生しやすいことで知られるこのサーキットにとって、さらなる難易度をもたらすことになる。

テクニカルで極めて要求の高いサーキット
1991年に開設されたカタルニア・サーキットは、MotoGPカレンダーの中でも最も総合力が問われるコースとして知られている。全長4.627kmのレイアウトは、長いストレート、高速コーナー、タイトな低速コーナーをバランス良く組み合わせており、バンクを含む起伏ある構造となっている。12メートルの広さを持つ路面は多くのオーバーテイクポイントを生み出す一方で、極めて滑らかな舗装面が大きな制約となる。
2018年に再舗装が行われたにもかかわらず、グリップレベルは依然として低く、加速時にはリアタイヤのスピンが顕著に発生する。こうした状況ではタイヤ表面温度が急激に上昇し、グリップはさらに低下、摩耗も加速する。この悪循環を断ち切るには、マシンセットアップと電子制御の綿密な調整が不可欠であり、レースディスタンス全体を通じてタイヤ性能を維持することが求められる。
カタルニアに向けたミシュランのタイヤアロケーション
2025年のカタルニアGPに向けて、ミシュランはこのサーキット特有の要求に適したアロケーションを定義している
- フロント:3種類の対称構造スリックタイヤ
- ソフト:2024年型と同一
- ミディアム:2024年型と同一
- ハード:新型の強化構造を採用。オーストリアおよびハンガリーで既に使用実績があり、ブレーキング時のサポート性と安定性が向上している。グリップ性能はミディアム相当を維持。
- リア:2種類の非対称構造スリックタイヤ(右肩部強化)
- ソフトおよびミディアム:2024年と同じ仕様を継続使用。性能が既に証明されている。
- ウェットコンディション時の対応
- ミシュラン・パワー・レイン(ソフトおよびミディアム):いずれも非対称構造で右側がより硬い設定
ミシュラン・モータースポーツ部門責任者 ピエロ・タラマッソ
「カタルニアGPは、常に特別な挑戦を伴います。このサーキットは、高速ストレートから低速および高速コーナー、標高差、バンクまで、非常に多彩で完成度の高いレイアウトを備えています。しかし、このコースの最も特徴的な部分は“グリップの低さ”です。リアタイヤがスピンしすぎると、タイヤ表面温度が上がり、さらにグリップが落ちて摩耗が加速します。これがこのレースを非常に難解にしている要因です。」
「2024年には、我々のタイヤが完璧に機能し、チーム側も適切なセッティングを見つけ出しました。今年は9月に開催されるため、5月開催時と比べてより高温のコンディションが予想され、さらに1つの管理要素が加わることになります。これは、グリップレベルが高かったバラトンパークとは全く対照的です。したがって、チームはマシンセットアップ、電子制御、パワーマネジメントに多くの時間を費やす必要があります。」
「2025年仕様の新型ハードフロントタイヤは、こうした厳しい条件により適した構造を持っており、ライダーが自らの力を存分に発揮できると確信しています。とはいえ、グリップ管理とホイールスピンへの対応は週末を通して決定的な要素となるでしょう。」
MotoE:サステナビリティとショーの融合
カタルニアGPでは、FIM MotoE世界選手権の第5ラウンドも同時開催され、今季のレース9および10が実施される。
予選は例年通り金曜日に行われ、レースは9月6日(土)に2レース連続開催となる。
ミシュランは、Ducati製電動マシンすべてに以下の環境配慮型タイヤを供給:
- リアタイヤ:再生・再利用素材を58%含有
- フロントタイヤ:同56%含有
さらに、「Race to Vision」仕様のデザインがタイヤに施されており、このグラフィックは数周の走行で徐々に消えていく。これにより、競技の迫力を視覚的に高める演出効果も狙っている。
技術と興奮が交錯する週末へ
2025年のモンスターエナジー・カタルニアGPは、テクニカル面でも観客向けのエンターテインメントとしても、挑戦と見応えに満ちた週末となるだろう。低グリップの路面、晩夏の高温、そしてマシンセットアップへの高度な要求が、ライダーとチームの総合力を問う。
ミシュランは、こうした過酷な条件に対応するための専用アロケーションと、長年にわたる知見をもとに、最高峰の競技レベルに耐えうるソリューションを提供。さらに、MotoGPのスピードと興奮に加え、サステナブルな技術革新を体現するMotoEの存在により、バルセロナ戦は年間で最も期待されるレースのひとつとして注目を集めている。