ホンダはEICMA 2025にて、同社初となる量産型フルサイズ電動モーターサイクル「WN7(ダブルエヌセブン)」を世界初公開した。本モデルは、都市型ライダー向けに開発されたネイキッドタイプのEVで、最高出力50kW・最大トルク100Nmを発揮する液冷モーター、9.3kWhの高電圧バッテリーパック、そして優れた操作性と多彩なライディングモードを組み合わせた新時代のパーソナルモビリティである。

“Be the Wind”――ホンダのEVバイク開発コンセプト
WN7は、従来の内燃機関バイクとは一線を画す電動ならではの滑らかさと静粛性を活かし、“風になる”感覚をライダーに提供することを目指して開発された。プロジェクトリーダーの田中正継氏は「ホンダの内燃機関モデルで培った知見をすべて投入し、EVらしい滑らかさと楽しさ、そして信頼性を両立した」とコメントしている。
ハイパワー×ロングレンジ――スペックで魅せるEV性能
モーターは最高出力50kW(連続出力18kW)、最大トルク100Nmを発揮。A1ライセンス対応の11kW仕様も用意され、幅広いライダー層に対応。0-100km/h加速はわずか4.6秒と、CB500ホーネットを凌駕する俊足を誇る。航続距離は最大140km(WMTCモード)で、クイックチャージにも対応。CCS2規格により20%から80%までわずか30分で充電可能(89km相当)。家庭用AC230Vでは2.4〜5.5時間でフル充電が可能。
駆動はベルトドライブで、静粛性とスムーズな動力伝達を実現。ヘリカルギアの採用により、加減速時のショックや騒音も最小限に抑えられている。
EV設計を活かした革新的シャシー構造
車体構造にはメインパイプを持たない“フレームレス”設計を採用。9.3kWhのリチウムイオンバッテリーユニットをストレスメンバーとして利用し、軽量化とマスの集中化を同時に実現している。前後サスペンションはSHOWA製で、フロントには43mm倒立フォーク、リアにはアルミ製片持ちスイングアーム「Pro-Arm」+モノショックを装備。
ホイールベースは1480mm、シート高800mm、車重は217.5kg。前後タイヤは17インチ(フロント120/70、リア150/60)で、市街地走行からツイストロードまでバランスの良い操作性を確保している。
豊富な電子制御と多彩なモード選択
ライディングモードは、STANDARD/SPORT/RAIN/ECONの4種類を搭載。加えて、減速時の回生レベル(0~3段階)も任意で設定可能。さらにHSTC(トルクコントロール)、コーナリングABS、セレクタブル・スピードリミットアシスト(SSLA)、前後進ウォーキングスピードモードなど、EVならではのアシスト機能も充実。
回生レベルの変更は左スイッチボックスで操作し、表示はTFTメーターに反映される。高速走行時には低回生でリラックス走行、ワインディングでは高回生でよりスポーティな挙動が可能。
新デザイン言語“Precision of Intrinsic Design”採用
デザイン面では、これまでのホンダバイクの延長線にありながらも、EVらしい“無駄のない精緻さ”を追求。燃料タンクに相当する部分のボリュームを削ぎ、低く絞られたシルエットを構築。横方向のデザインラインとセミオパークなシュラウド、そして新たなホンダロゴのフォントが電動モデルとしての新時代を象徴している。
フロントはDRL内蔵のデュアルプロジェクターヘッドライト、リアはフルLED。ウインカーは自動キャンセル機能付きで、急制動時にはESS(エマージェンシーストップシグナル)として点滅し、後続車に警告する。
スマート機能も抜かりなし
メーターには視認性の高い5インチTFTカラー液晶を採用。Honda RoadSyncアプリを介して、スマートフォンとの接続、ナビ、通話、音楽再生、さらにはEV専用情報(残航続距離、平均電力消費量、充電状況など)を表示可能。USB-Cポートも装備され、スマートキーによる起動も標準装備。
カラーバリエーションは3色展開
マットパールモリオンブラック
パールディープマッドグレー
グラファイトブラック
アクセサリーラインアップ
リアシートバッグ
AC230V モード2充電ケーブル
6kVA モード3急速充電ケーブル(Gun to Gunタイプ)
【主要諸元(抜粋/18kWモデル)】
モーター出力:最高出力50.0kW、連続出力18kW
最大トルク:100Nm
航続距離:140km(WMTCモード)
最高速度:129km/h
バッテリー:9.3kWhリチウムイオン/公称電圧349.44V
充電:家庭用AC230V(2.4〜5.5時間)、CCS2急速充電(30分で20→80%)
車体サイズ:全長2,156mm × 全幅826mm × 全高1,085mm
ホイールベース:1,480mm
シート高:800mm
車重:217.5kg
サスペンション:SHOWA製43mm倒立フロントフォーク/Pro-Armモノショック
ブレーキ:フロント296mmダブルディスク+リア256mmシングルディスク(IMU連動コーナリングABS)
タイヤサイズ:前120/70R17、後150/60R17
電子装備:HSTC、減速回生レベル調整、SSLA、スマートキー、5インチTFT+RoadSync、USB-C
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近はまた乾式クラッチのDucatiに乗りたいと思っています。