ドゥカティが開発を続けるMotoEマシン「V21L」は、2025年シーズンに向けてさらなる進化を遂げた。軽量化、シャシー構造の見直し、電子制御のアップデートなど多岐にわたる改良が施され、MotoEカテゴリーの記録を塗り替える準備が整っている。
2023年よりFIM MotoE世界選手権の公式プロトタイプとして登場したV21Lは、内燃機関に代わる技術を追求するための実験的プロジェクトだ。ドゥカティはこの取り組みを通じて、将来的にバッテリー技術が十分に進化した際に、自社の哲学に沿った電動ロードバイクを市場投入できるよう、技術的遺産の蓄積に注力してきた。
現在、V21Lはその第3世代となり、さらなる開発フェーズに突入している。FIMおよびドルナとの合意に基づき、18台のレース車両と5台の予備車(計23台)を供給するにとどまらず、パワートレイン、電子制御、シャシーの全領域にわたるアップデートが継続的に進められている。
2025年仕様の改良点は、今季から新たにMotoEのテストライダーを務めるフランコ・バッタイーニによってサーキットでのテストを通じて確認された。ライディングフィールや各種パフォーマンスにおいて明確な進化が確認されており、実戦投入が期待されている。
新型V21Lの初テストは4月11日に実施予定で、2025年MotoE世界選手権の開幕戦は5月10日ル・マン(フランスGP)で行われる予定だ。

■ 高密度バッテリーにより8.2kgの軽量化を実現
V21Lの新型バッテリーパックには、従来の4.2Ahから5Ahに進化した高エネルギー密度セルが採用された。これにより、セル数は1152個から960個へと192個削減されながらも、出力と航続距離は変わらず維持されている。このバッテリーパックは、車体中央のフレームラインに沿った特殊な形状で設計されており、ドゥカティ・コルセの技術陣は6セルに1セルを等間隔で削除することで、重量配分を崩さずに合計8.2kgの軽量化を実現。シミュレーションでは、これによりサーキットに応じて0.3〜0.4秒のラップタイム短縮が見込まれている。
■ 電子制御の進化:ターンごとのトラクションコントロール調整が可能に
電子制御面では、トラクションコントロールがコーナーごとに調整可能となった。各チームの技術者は、異なる3種類のマッピングを事前に設定でき、ライダーがセクションごとに切り替えることが可能となる。これにより、トラック特性に合わせた緻密なトラクション制御が可能になる。
■ シャシー調整と安定性の向上
車体ジオメトリーも改良された。異なるステアリングブッシングの採用により、ホイールベースは4mm延長されたが、キャスター角とトレールは維持されており、ブレーキング時の安定性が向上。また、スイングアームピンの高さが可変となり、スプロケット交換によるチェーンテンションの影響を最小化できるほか、ライダーの好みやコース特性に合わせた調整も可能となった。
■ オランダラウンドから新型リアリム採用でさらに軽量化
第2戦オランダ(アッセン)からは、フォールスダンパーのない新設計のリアホイールが投入され、これにより600gのさらなる軽量化が実現。とりわけバネ下重量の削減は、ハンドリングと俊敏性の向上に直結し、レース中の操作性に大きな影響を与える。
■ 総重量は216.2kgに減少
これらのアップデートを通じて、V21Lの総重量は従来の225kgから216.2kgへと約9kgの削減。電動プロトタイプとしての完成度を、さらに高める結果となった。


開幕前テスト
2025年MotoE世界選手権の開幕前テストは以下の通り
- 4月11〜13日:バルセロナ
- 5月8日:ル・マン(第1戦前日)
2025年 MotoE™ 世界選手権 全7ラウンド・14レース日程
今季は全7ラウンド・計14レースが開催予定で、さらなる激戦が予想される
フランスGP(ル・マン)
開催地:ル・マン・ブガッティ・サーキット
日程:5月9日(金)〜10日(土)
オランダGP(アッセン)
開催地:TTサーキット・アッセン
日程:6月27日(金)〜28日(土)
オーストリアGP(シュピールベルク)
開催地:レッドブル・リンク
日程:8月15日(金)〜16日(土)
ハンガリーGP(バラトン)
開催地:バラトン・パーク・サーキット
日程:8月22日(金)〜23日(土)
カタルーニャGP(バルセロナ)
開催地:カタルーニャ・サーキット
日程:9月5日(金)〜6日(土)
サンマリノGP(ミサノ)
開催地:ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ
日程:9月12日(金)〜13日(土)
ポルトガルGP(ポルティマオ)
開催地:アルガルヴェ国際サーキット(ポルティマオ)
日程:11月7日(金)〜8日(土)